むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 大雨とコレステロールと

    熊本は100ミリの大雨でした。ちょうど昼過ぎ往診に出かける際にはバケツをひっくり返したような大雨でした。至る所で側溝の水が溢れ冠水しています。それでも今日はクリニック近くの訪問だったため、渋滞にはまったりせず昼休みに滞りなく訪問診療をすることができました。ランニング用ウインドブレーカーを雨合羽代わりにきたのですが、帰ってきたらずぶ濡れでした。

    数年前までは新築を設計する際に50ミリまでの大雨には耐える設計ですとか、自信満々に言っていました。それがこのわずか数年で常識を超える事態となりました。ちょっと降れば50ミリ、70ミリは当たり前、100ミリも想定内という感じです。当クリニックは大きな屋根が印象的なデザインですが、その大屋根の雨を処理する排水には巨大なパイプを入れてあります。もちろん今日の100ミリの雨もどうってことありませんでした。ニュースでも50年に一度の大雨とかいう表現がしょっちゅう聞かれるので、これまでの50年とこれから先の日々は同じと考えてはいけません。

    このことを考えていると頭に浮かぶのは女性のコレステロール値です。50歳くらいまではほとんどの人は低いのですが、更年期を境にコレステロールはどんどん上がり始めます。最初の50年とその先は別の人生のようです。同じものを食べて同じだけ運動してもコレステロールは上がってしまうので、どうしようもありません。昨日NNTの話を書きましたが、女性の高コレステロール血症を男と同じ基準で治療すべきかは議論のあるところです。

  • 薬のNNT

    NNTという言葉がありますが、専門用語なのでちょっと難しいかもしれません。NNTとはNumber Needed to Treatの略です。これは、ひとりの命を救うのに何人に処方(治療)しないといけないかという治療確率を表した数値です。例えば、私が大学院時代に研究した学位論文のテーマがプロテインCという抗凝固物質の抗炎症作用だったのですが、敗血症性ショックに投与すると死亡率を低下させるという結果でした。のちにアメリカでリリーという製薬会社が遺伝子組み換え技術を使ってプロテインCを大量生産することに成功し、救急現場で大々的に使えるようになりました。その時、20人の敗血症性ショックに投与すると1人の命が助かる(NNT=20)という成果でした。

    例えば、コレステロールの薬。健康診断で一定の数値を超えていたら治療を始めましょうということになるわけです。そのコレステロール治療薬のNNTは死亡に関しては100以上です。ということは、せっせとコレステロールの薬を処方して飲んでもらっているのですが、私の患者さんでコレステロールを100人治療して1人は飲んでいたおかげで死なずに済んだということになるわけです。ということは、残りの99人は飲んでも飲まなくても結局一緒な訳です。ただ、飲んでいたおかげで死なずに済んだのが自分のことかもしれない(確率1%)というふうに理解しないといけません。我々は、そういう治療効果を意識して本当に治療に値するかどうかは真剣に悩まないといけないと思います。このNNTのデータを客観的に見て私が思うには90歳以上ではコレステロールの治療は意味がありませんが、世の中の多くの現場ではなかなかそうもいかないのが現実です。みんな科学的でなく感情的だからです。

    一方、若年性高コレステロール血症の場合は家族性の可能性が高く、遺伝的に異常がある可能性が高いため、非常に心疾患を合併しやすくなっています。この場合は治療のメリットは大きいため、ためらわずに若いうちから薬を飲んでコントロールすべきだと思います。

  • 高齢者の役割

    敬老の日でした。日本の高齢化はどんどん進み、敬老といっても、大半の人がそれに該当するような時代もすぐそこです。歳を取っても、健康でイキイキと楽しい生活ができるような高齢社会であってほしいと思います。

    人間の欲求には段階があり、生理的欲求(食べ物、排泄、睡眠など)、安全欲求(雨風をしのげる快適な住居、交通事故や転倒事故などのない環境)そして、社会的欲求(なにがしかのグループに参加して社会の一員として参加、貢献できること)といった、低次欲求から、承認欲求(さすがですねと、皆に認められる)、自己実現欲求(目標達成)という高次欲求があります。老人になった場合、老人ホームやデイサービスなどで一番下の生理的欲求と安全欲求だけはなんとか満たされるよう皆努力しています。しかし、その上の社会的欲求、や承認欲求というのはなかなか現実難しいところがあります。Facebookは同級生などの輪が広がっており、部屋に居ながらにして社会参加ができるという意味では社会的欲求を満たしてくれるツールです。寝たきりでも参加可能です。これからは高齢者ほどFacebookの時代だと思います。

    ほかにも、歌がうまいならカラオケサークル、将棋がうまいなら将棋サークル、体が丈夫なら街の中で自転車などの整理(アルバイト)など社会に参加する方法はいろいろあります。そうすることで、社会的欲求と承認欲求は満たされます。それができない場合工夫が必要です。例えば、男性のお年寄りの場合、デイサービスでビーチバレーなんてやってられないと思う人もいると思いますが、そういう人にはバレーの審判を頼むとか、トーナメント表を作ってもらうとか、なんらかの得意なことを生かした役割を担ってもらうことです。こういう工夫は全く介護保険の点数(施設としての報酬)につながりませんが、入居者さんの幸せを第一にいろいろ工夫してもらいたいなと思います。

  • いろんな病気、いろんな治療

    当院は漢方や心療内科もやっていることからよその病院にかかったけど治らなかったというような難治症例がたくさん来院されます。訴えも、だるいとか朝起きられない、みたいな漠然としたものから、頭痛、吐き気といったかなり具体的な不調を訴えて来られる場合もあります。訴えが具体的だからといって治療が簡単かというと、そうでもありません。例えば、頭痛。痛みがズキンズキンか、ガンガンか、締め付けるような痛さかで種類が異なります。また、週何回くらいの頭痛かとか、どんな時にひどくなるかという情報も治療方針を立てるのに大切です。頭のCTの情報はほとんど関係ありません。ほとんどの場合何も問題ないと言われるか、年齢相当の虚血性の変化を指摘される程度です。何もなかったという安心材料だけで、治療法にはなんら影響しません。

    一方、倦怠感のような漠然とした訴えも、詳しく診察すれば治療が難しいとは限りません。浮腫があれば心不全や甲状腺機能低下を疑うし、皮膚の色が黄色っぽい場合肝炎を、白っぽい場合は貧血を疑います。仕事にからんでの症状ならストレスから来た症状かもしれないし、不眠なら疲れが取れないのはそのせいだろうと想像されます。大体の検討をつければ、いくつかの検査で診断は確定するし、治療法はおのずと決まってきます。

    先日ポッドキャストで整体治療院の話を聞いていたところ、疲労倦怠感を専門とする整体師さんがいるそうです。今私が書いたように疲労倦怠の原因は様々ですから、原因によって治療方法は異なると思うのですが、整体で肩などをマッサージしたり骨盤矯正することで治せる手技を持っているのはすごいことだと思います。

  • Amazon Kindle Unlimited

    AmazonのKindle(キンドル)という電子書籍をご存知ですか。私は、紙媒体と電子媒体があれば、必ず電子媒体(Kindle)を買います。電子ブックなら置く場所に困らないからです。Kindleのペーパーホワイトという電子ペーパー端末は文庫本くらいのサイズですが1000冊以上がダウンロードできます。また、Amazonのすごいところは、一度購入した本はなんどでも別の端末からでも(1冊分の値段で)ダウンロードできる点です。私は、職場と家庭でiPadを3つ使っています。このそれぞれにKindleを入れているのですが、例えば職場で読みかけた電子ブックは、家に帰って別の端末(iPad)で開いても、読みかけていたページが表示されます。つまり読書状況はクラウド上で管理されているということです。

    紙の本は地震で本棚が倒れたりしたことからほとんどブックオフに売ってしまいました。手元にあるのはもっぱら電子ブックです。これだと、読み終わっても捨てることはありませんし、同じ本を2回買ってしまうことがありません。Amazonが購入履歴を覚えていてくれるから、また同じ本を買おうとしても知らせてくれるのです。

    ところで、このKindleですが、アンリミテッドという定額読み放題サービスがあります。たしか980円くらいだと思いますが、相当量の本や雑誌が読み放題です。雑誌なら3ー4冊ほど読めば元を取ります。私は暇な時はずっと本を読んでいるので、このサービスを開始してからは驚くべき読書量です。雑誌も暇つぶしに1日3冊ほど読みます。ただ、これには大画面のiPadProがベストです。まちがってもiPhoneなどの小さい画面では本を読むのは辛いです。