むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • ガンの相談は難しい

    漢方を専門にしていると、いろんな難しい症例が集まってきます。更年期のようなものからガンの相談までいろいろです。毎日相当難しい症例ばかりたくさん見ているので、最近ではあまり悩まずにこの患者さんにはこの処方、と素早く決める事ができるようになりました。とはいえ、がん患者さんなどではこれからあと何年いきられるかわからない不安や残った人生をどう生きるべきかという哲学的なことも含めて意見を求められます。3分診療というわけにもいきません。今日もそのような新患さんが来られたので、一生懸命アドバイスしました。

    最近の医療では、絶対良いという方針はないため、いくつかの方針を示した後にどういう方法で治療したいかよく考えて結論を出してください、と患者さんに最終決定を委ねることもあります。しかし、患者さんは素人なので、なかなか結論に達することができません。私も、新患で初めてお会いした患者さんの性格や生き方、ライフスタイルなど何も知らないで意見を求められても簡単には答えられません。医学的判断というより、人生そのものを総合的に考えて結論を出さないといけないからです。

    とはいえ、せっかく家族も交えてこれからの生き方を相談されると、短い時間ですが必死に情報を集めて私の家族だったらどうしてあげたいかという立場で何らかの結論に導きます。できれば、私から言われたから(しぶしぶ)という感じではなく、お話しているうちに納得してその方向で行きたい、と自ら決定した形に持っていきたいものです。そのほうが、結果どうあれ幸せだと思うからです。

  • 20年前アメリカの医療現場で見たものが今ここにある

    昔アメリカのTVドラマでERという番組がありました。私が医師になりたての頃はやったものです。当時はケーブルテレビで見るか、レンタルビデオで見るしかありませんでした。ERというのは救急救命室という英語の略語で、英語圏の人にとってはだいたいERで通用します。このドラマが一斉を風靡したのは、とてもリアルな描写だったからです。本当に病院の救急の現場はこの番組のとおりなのです。それまでの医療系の番組は名医が難病患者を助ける話などが多かったのですが、このERでは実際の現場のとおり、1−2割の急患は助からずに亡くなります。リアルに番組でそれを再現したところが話題でした。私はアメリカ留学中、集中治療部に所属し、救命救急を毎週まわっていました。当時私は血液凝固異常と急性呼吸不全を研究テーマにしてたため、テキサス大学病院の救急でもそのような患者さんを見てはレジデントに治療方針をレクチャーしていました。

    その懐かしいERの番組が、アマゾンプライムでただで見られるようになりました。見てみると、1995年とあります。なんと25年も前の作品です。救急の現場は25年たった今も同じです。ただ、番組の中の世界と今とでは変わったところがいくつかありました。一つはポケベル、アメリカではページャーとよんでいましたが、医師は全員持っていました。今は院内PHSになり、風景は変わりました。もう一つはレントゲンです。昔はフィルムを現像したものを見ていましたが、今ではパソコンの画面で見ます。デジタル撮影になったからです。

    私が留学していたとき(20年前)、アメリカの大学には今あるレントゲンのデジタル画像があちこちのパソコン端末で見ることができるようになっていました。それを始めてみた時は衝撃でした。また、カンファレンスでつかうスライドが現像を要するフイルムでなく液晶プロジェクターを使い始めたところでした。また、当時ダヴィンチという手術ロボットが導入されて、みんなで見学した覚えがあります。20年たった今、日本もやっとそういったテクノロジーの恩恵を普通に受けられる世の中になったんだなと実感しています。

  • 嗚呼、風邪で病院にかかる日本人

    1.17はあの阪神淡路大震災から25年でした。寒い時期だったんですね。昨日のように思い出します。そしてこの週末はセンター試験ですね。現行のセンター試験は今回が最後だそうです。例年センター試験のときには大雪が降ったりしてたいへんな季節ですが、受験生の皆さんは頑張ってください。

    風邪の患者さんが多いですが、今年はインフルエンザは非常に少なく、検査をしても陽性に出るのは毎日数名です。熱が出てもあわてて来院せず一晩くらい様子を見てから検査を受けましょう。タイミングが早すぎると正しい結果が得られません。私は滅多に風邪を引かないのでインフルエンザの検査も受けたことないです。ちょっと怪しいと感じたらビタミンCを1時間おきに1000mg飲みます。合計8~10gほど飲めばほとんど治ります。また、漢方なら板藍根(バンランコン)です。お茶のように美味しく飲めます。当院向かいの凌雲堂薬局で手に入ります。

    先日バラエティー番組で世界各国出身の人達がひな壇に座ってコメントしていました。話題は、日本に来てびっくりしたこと。アメリカ人が言っていました。「日本人は風邪で病院にかかるんですね。アメリカでは考えられません。寝てれば治るじゃないですか」それはアメリカが医療費が高いからでしょう、と言う話になっていましたが、「寝ていれば治るのにどうして病院に行くの」というのは真実だと思います。家で寝ていれば人に移すこともありません。本当はインフルエンザの検査もタミフルも高齢者や免疫の低下した持病のある患者さん(例えばがん患者)だけでいいのです。若くて元気な人は無駄な医療費を使わないようにしましょう(といいたいけど、学校や職場の人はそれを許してくれないのが日本の変な常識ですね)。

    生花です。何かわかりませんが迫力があります。新高輪プリンスホテルにて

  • メモすることの有用性

    昨日は「話し方」の本を読みましたが、今日は「やりたいことを全部やる!メモ術(臼井由妃:著)」を読みました。タイトル通り、メモすることで自由な時間を手に入れ、目標を達成し、充実した毎日を送れるというものです。私も、メモに関してはとても興味があります。以前はフランクリン・プランナー(7つの習慣)のシステム手帳なども使っていました。メモすることで人生計画を長期、中期、短期に渡って常に見渡すことで、今日しないといけない行動が自然と決まってくるという感じです。

    しかし、去年ぐらいから私のメモに対する考えが変わりました。予定を書くだけでなく、その日の出来事を振り返って書くのです。日記みたいにたくさんは書きませんが、今日はこんな事をした、それがどういう結果だったとか、いくらかかったかとか、感想を書いておくのです。予定しか書き込んでいない手帳は読み返すことはありませんが、そういう記録を書いておくと、読み返して役に立つことがたくさんあります。

    今日読んだメモ術の本では必要なことをとにかく書き出すことで、今の自分にとって大切ないこと、捨てるべきこと(時間の無駄となること)など取捨選択できるので時間管理ができて、必要なことに集中できるという趣旨でした。たしかにそのとおりです。私も忙しくてやりたいことを全部する暇はありませんから、常に取捨選択しながら生活しています。

  • 話し方は難しい

    ふらっと本屋に立ち寄ったら平積みになっている本が目に止まりました。「神トーク(星渉:ほしわたる:著)」という本です。職場などで部下を頭ごなしに叱ったりしても部下のモチベーションは下がるだけでいいことはありません。この本にはそういうときにどのように話したらいいかが書いてあります。ひとつの章をみると、「否定しない」+「気づかせる」+「答えを言わない」+「正さない」の4つを気をつけると素晴らしい効果があると書いてあります。たしかに、きっと効果的なのだろうと思います。その他にも、すぐにも役立つ話し方が書いてあったので、とても勉強になりました。

    しかし、私のところに薬の宣伝に来る製薬メーカーさんが、時々このような相手に気づかせて自発的にその薬の価値を認めさせるトークをする人がいます。おそらく社内でトークを練習してくるのだと思います。こういう患者さんがいたらどんな薬を処方しますか?その時採血データがこんなだったら(例えば腎機能が悪かったら)どうしますか?その時はどういう薬を選びますか?まるで学生時代に口頭試問を受けているみたいで不快です。おそらくメーカーの言いたいのは「このような患者さんを見たときに(たとえば腎機能が悪い糖尿病患者に)うちの薬を思い出してくれ」というのを直接言わずに、私が自発的に考えてそういう結論に至ったかのように誘導するわけです。

    「気づかせる」+「答えを言わない」といえば、例えば部下に頼んだ仕事が期限を過ぎても上がってこないとき、「何ボサボサしているんだ!」と怒らず、「いつまでにしてと頼んだっけ?」と相手に気づかせろという話ですが、言い方を間違うと逆にイヤミな上司になります。本を読んで実行するのはいいですが、よく考えて上手に話しましょうね、上司の皆さん!