むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • あれから7年

    東北の大震災からもうすぐ7年です。時が経つのは本当に早いものです。とは言え、東北の復興は道半ばであり、熊本も同じです。遅々として何も進んでいないように見えますが、実は確実に進んでいます。ブルーシートはほとんどなくなり、あたりは解体も終わって更地や空き地が目立ちます。そして、そのようなところに新しい家が建ったり、区画整理をし直して分譲されたりしています。確かに時は進んでいます。

    春のこの時期になると、東北の震災のことや熊本地震のことを思い出さずにはいられません。それは誰にでも起こることです。しかし、それを思い出して、不安が増したり、気分が落ち込むようなら困ったことです。精神科の領域では、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼びます。このPTSDをどう治すか、難しい問題です。ネットで調べると、カウンセリングや催眠療法と書いてありますが、私にはそのようなテクニックはありません。一つアドバイスをするなら、地震で失ったもの、できなくなったことなどマイナスのことを数えないことです。そのかわり、思いがけず手に入れたこと、できるようになったことなどプラスについて考えましょう。引っ越したこと、家をリフォームしたこと、仕事を変わったことなど震災後いろいろあるでしょうが、見方を変えればこれらはすべてプラスのことです。

    また、私の場合、PTSDには安定剤や漢方薬を使います。漢方では、PTSDに神田橋処方という特殊な処方があります。鹿児島の有名な神田橋先生が考え出した処方です。なぜこの処方がPTSDに効くのかの説明がないのですが、経験的に非常に有効とされています。私も、それを参考に時々この処方を使います。

  • 血糖は工夫次第

    糖尿病でこれまでずっと治療してきたのにへモグロビンA1cが10以上あり、いっこうに下がらないということで、自分の血糖はどうやっても下がらないと思っておられた患者さんがいます。食事もキノコ鍋のようなローカロリーに徹していたそうですが、どうしても血糖コントロールがうまく行かなかったそうです。このような場合、まず自分の膵臓からインスリンが分泌されているかを測定しないといけません。インスリンが出ていなければ、インスリンを出させるような薬を選ぶか、インスリンの注射をするかです。一方、インスリンが出ていれば、体がそのインスリンをうまく利用できていないということになるので、そういうインスリン抵抗性を改善する薬を用います。最近は新しい薬が色々と出てきて治療の幅が広がりました。そして、インスリン注射になる前に色々な内服薬によるコントロールが可能な時代になりました。

    結局、この患者さんも血液中のインスリン濃度を測って、理論的に治療戦略を考えたところ、うまく血糖は下がってきました。これまで下がらないと思っていたのに、ちゃんと下がるのです。最近は理論で考え、そのまま実行できるだけの薬が増えたことが福音となっています。すべては新薬のおかげです。

    更に最近は、研究の成果で驚くべき事実がわかっています。血糖を下げれば心血管イベント(心筋梗塞などによる死亡など)を下げることができるというのは間違いで、「どの薬剤で血糖を下げたか」によって患者さんの予後が異なるということです。これからは、単にヘモグロビンA1cがいつくかということだけでなく、どの薬をどのように使って血糖を下げたか(A1cがコントロールされたか)のほうが重要となる時代なのです。

    江津湖畔で夕日に輝くコケの斜面

  • 内服で眼圧が下がった

    動悸の治療をしていた患者さんがいます。毎日のように脈が速くなってドキドキするというものです。精神的な原因なら漢方もいいかなと思ったのですが、まずは心臓の薬で治療してみようと思いました。メインテートという心臓の治療薬で動悸を抑える治療をしていたら、思った通り動悸の起こる回数は減ってきて、次第に落ち着いてきました。下手に漢方でいくより、心臓の薬は確実にきいてくれるので、本当に使いやすいです。一方、たまたまこの患者さんは、眼圧が高くて眼科に通院中でした。眼圧は漢方で下げることもできるので、漢方をためしてみませんか?とお話したのですが、もうすぐ眼科受診の予定なので、もうしばらくは様子を見ると言われていました。

    そして、しばらくして眼科受診の結果、おどろくことに眼圧は見事に下がっていました。そのことを聞いたこちらもびっくりです。こんど漢方で下げようと思っていたのに心臓の薬で劇的に改善したのです。よく考えたら、それはありえます。メインテートと同じβブロッカーが点眼になったものを緑内障では治療に使うのです。ですから、同じ系統の薬を内服してもらった結果、運良く眼圧が正常化してくれた訳です。

    逆に、眼圧を上げてしまう薬剤もたくさんあります。多すぎて大変です。眼圧が高い人には使えないのです。別の目的で内服してもらっても、副作用で眼圧が上がってしまってはいけませんので、注意が必要です。私達内科医は、この使いたい薬で眼圧が上がるから使えないというジレンマを一日に何度も経験します。逆に、内科治療を目的に使った薬で眼圧が下がって喜ばれるなんて、予想しなかっただけに衝撃でした。

  • 足がつるのはマグネシウム不足

    足がつったら痛くて大変です。夜にちょっと蹴伸びをしたりすると突然激痛が走ってつりますね。マラソンでもつりますが、何もなくてもつることがあります。漢方薬で芍薬甘草湯というのがあります。ツムラやクラシエの68番です。最近は足のつりには68番と広く知られており、皆さん病院に薬を指名で来院されます。当院でも処方しますが、芍薬甘草湯は副作用が多いため、たまに使うのはいいのですが、慢性的に連日使うのは危険です。私は、そのような処方を希望されてこられた場合、お断りしています。痛みにきいても、副作用が起こっては仕方ありません。

    足が慢性的につる患者さんにどうするかといえば、私は十全大補湯を処方します。長期に使っても副作用が少なく、しかも確実に改善します。芍薬甘草湯が対症療法(標治)であるのに対し、十全大補湯は根本治療(本治)です。と、ここまでは少し前にも似た内容のブログを書いていますので、覚えている方もいらっしゃると思います。

    ちょうど2日前ですが、私は運転中にアクセル、ブレーキを踏む足が釣ってしまいました。運転はできたのですが、こんなの危ないです。そこで私がとった行動は?漢方を飲む、ではありませんでした。そのまま車で近くの薬局にいき、サプリコーナーでDHCのカルシウム・マグネシウム(https://www.dhc.co.jp/goods/goodsdetail.jsp?gCode=32322)を買いました。1ヶ月分で380円です。飲んでみたら劇的に改善しました。足がつるときは、ちょっとした足の動きでまたつりそうなのがわかりますが、のんだあとから全くつる気配はなくなりました。実は、足がつるのはマグネシウム不足であろうと言われているのです。マグネシウムサプリがこれほど効くのなら、漢方はいりません。安くて安全です。足がつって困ると言う場合、ぜひお試しください。

  • 訪問看護いよいよ始動

    日曜日は汗ばむ陽気でしたね。外に出て散歩したりスポーツしたりするのにいい季節です。布団を干したり掃除をしたりするのも良い週末だったと思います。私は、残念ながらクリニックのワックスがけで業者が入ったので、ずっと院内で待機していました。一日缶詰だったので、しないといけないけどずっと後回しにしていたことを一気に片付けました。まずは、経理の仕事です。領収書の整理をして帳簿をつけて、という事務作業。毎月これだけはきっちりしないといけません。次に、近々頼まれている講演で使う漢方の講義用スライドづくり。1時間話すので、60枚のスライドを作りました。

    それから、いつもうつ患者さんにうつ状態の度合いを問診して点数化するのですが、その点数を計算するのが今まで電卓を使って面倒だったので、表計算ソフトで一発でできるようにプログラミングしました。プログラミングとはいえ、以前はエクセルのマクロを自分で作り込んでいたので、それに比べれば大したことはありません。IF条件でスコア化して合計するだけです。エクセルでなく、アップルのナンバーズという表計算ソフトを使ったので、要領がよくわからなかったのですが、勘でやっているうちにうまく条件を式にすることができました。

    医師会からは、開業してから1年経ったので感想を機関紙に寄稿してほしいと依頼されており、ずっとほったらかしにしていたのが、明日までに送ってほしいと催促されたので、慌てて書きました。その中にも書いたのですが、当院は先月みなし訪問看護の事業所申請を済ませ、今週からいよいよサービス提供を開始します。最初は近隣の患者さん1名から始めますが、システムを確立し、きちんとした体制づくりができたら徐々に拡大していきたいと思います。それが時代のニーズでもあり、我々診療所の役割だと思っているからです。

    下江津湖