むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • オーソライズド・ジェネリック(AG)

    ご存知とは思いますが、ジェネリックというのは特許の切れた医薬品を他のメーカーが安く作っているものです。国も財政難の折、ジェネリックを使うよう推奨しています。健康保険組合等からは、時々「あなたの使っている〇〇という薬品はジェネリックに変えると毎月いくらお得になります」という案内が送ってきます。

    国は私たち処方する側にも、ジェネリックを使うように誘導してきます。私たちが院外処方箋を発行すると、処方箋代がいくらと国が決めた額があります。そこで、ジェネリック医薬品を処方すると処方箋代が何十円か高くなるように仕組まれています。処方箋が何十円か高くても、医薬品がジェネリックになるとトータルで数千円安くなるので、患者さん負担も国の財政も特をするという計算です。

    しかし、いいことばかりではありません。ジェネリック医薬品の原材料(有効成分)は中国やインドでコピー製品が生産され、日本のメーカーがそれを輸入して錠剤にしたりカプセルに詰めたりして製品化します。ジェネリックは国の審査も甘いため、その品質にはばらつきが大きく、1錠あたりの成分の含有量がバラバラだったり、錠剤にする際の添加物が悪くて胃で溶けにくかったりします。品質は誰にもチェックできません。効いても効かなくても、決まった量が入った薬であるという意味で先発と同等の扱いになります。こわいですね。唯一安心なのは、オーソライズド・ジェネリック(AG)という品質のものです。先発メーカーが自前の子会社で作っているジェネリックです。いわば、先発とまったく同じ品質が担保されたものです。当院むかいにある薬局では、血圧の薬など大切なものはこういうAG品質のものを選ぶようにしていますので、安心してジェネリックをお使いいただけると思います。

     

  • 夏には夏の漢方

    温かいを通り越して暑いくらいの毎日です。桜は週末一気に散ってしまいましたが、今年は雨がふらずにずっと花見を楽しめました。桜が満開の時期に雨がふらなかったのは珍しいことです。そして、桜が終わったと思ったら、一気にハナミズキが咲いたり、ツツジが咲いたりしてきました。例年に増して季節がどんどん進みます。このまま一気に夏まで行ってしまいそうです。しかし、自然というのはそう単純ではありません。きっともうすぐ寒の戻りなどもあり、咲いている花たちをびっくりさせることでしょう。私達の体も急に暑くなってきて適応に苦労していることと思います。

    風邪では、冬の風邪には葛根湯や麻黄湯を使います。体をあたためて寒気をとる漢方です。しかし、今週くらいからは、葛根湯や麻黄湯を使うような冬風邪の患者さんが急にいなくなりました。すでに夏風邪の症状が出ています。このような場合、中国では天津感冒片とか銀翹解毒片を使うのですが、日本では漢方専門薬局のようなところにしかおいてありません。私達が通常処方する保険適応の処方には夏風邪専用の処方はあまりありません。

    そこで、私が使うのは小柴胡湯とか小柴胡湯加桔梗石膏という処方です。炎症をとったり、喉の痛みをとってくれます。これらはまあまあ夏風邪にも使える処方です。いっぽう、寒の戻りが来たり、エアコンを入れて寝たら風邪引いた、という場合は寒の邪に侵されていますから麻黄湯や葛根湯の出番が来るかもしれません。このように、漢方では寒熱虚実と季節の移り変わりなどを的確に治療に反映させます。

  • 自宅にも血圧計を

    血圧計を持っていますか?家庭で測る血圧と病院で測る血圧には結構差が出ます。多くの人は家庭ではそんなに高くないのに病院ではなぜか高くなるといいます。これを白衣高血圧と言います。大事なのは家庭での日頃の血圧ですから、病院での数値より家庭の血圧を重視します。以前は水銀柱の血圧計で聴診器がないと測れませんでした。これにはうまく測るための練習も必要で、家庭で気軽に測る事はできませんでした。今はスイッチを押すだけで測れる自動血圧計が簡単に入手され、家庭用でもかなり精度が良く、信頼できます。

    家庭に血圧計がないので、スポーツジムや温泉施設においてあるものを使って時々測るという方もいます。これには一つポイントがあります。運動や入浴の前に測ることです。運動や入浴の結果、末梢の血管が拡張して血管抵抗が下がりますから血圧は必然的に下がります。その数字だけを信じていては正しい評価ができません。

    もう一つ家庭で測るポイントが、朝の薬を飲む前に測るということです。病院で測る時は朝の薬を飲んで数時間たっており、いちばん薬の効果が出ているタイミングです。このタイミングでいい血圧でも、朝の薬を飲む前には薬の効果が切れて高くなっていることがしばしば見られます。血圧の薬を飲んでいる方やそろそろ飲む必要がありそうなら血圧計をご家庭に常備されることをおすすめします。その際には医療用メーカーのテルモやオムロンの上腕で測るタイプをおすすめします。

    ホスピタルメントにて芝桜

  • お知らせ:新年度から若干体制が変わります

    新年度が始まりました。この4月に診療報酬改定がありましたので、医療行為(診察料など)および薬剤料(薬局での支払い)の計算が変わります。実際には下がったところ、上がったところがあり、トータルでどうなるかは始まってみないとわかりません。先月までと同じ診察内容で同じ薬をもらったとしても、支払いが少し変わると思いますが、ご了承下さい。ただ、クリニックの場合それほど大きな変化はないと思っています。

    当院では昼休み時間に訪問診療をしています。私は午前の診療が終わり次第3分ほどで弁当を食べたらすぐに往診へ出かけています。最近は訪問診療の人数も増えてきて、昼休みは2時半までとっているのですが、午後の診療に間に合うように返ってくるのが厳しくなってきています。そこで、この4月から午前の外来の受付を原則として12時までとします。診療時間は従来通り12時半までですので、かわりはありません。やむを得ない事情がある場合は受付にてご相談下さい。

    もう一つ、4月からシステムが変わるのが、金曜午後の真紀先生の精神科専門外来です。真紀先生外来はこれまで月に2回でしたが、事情により今月より月1回(原則として第3金曜の午後)になります。そのため混雑が予想されますので、予約制とします。ご協力のほどよろしくおねがいします。

    城南の火の国マルシェのすぐ横です。見渡す限り菜の花畑で感動しました

  • 糖尿病と筋力低下(サルコペニア)

    土曜日の夕方、糖尿病の勉強会に参加しました。テーマは、筋力低下です。糖尿病がある場合、ない人に比べて筋力低下(サルコペニア)が増加するそうです。理由は色々考えられます。一つはインスリン感受性の低下。糖尿病の人の多くはインスリンが出ているのに、体の反応が悪くなります。その結果、血液中のブドウ糖が組織に取り込まれずに余ってしまい、高血糖になります。つまりインスリン感受性が低下することで糖の利用が効率的にできないため筋肉もエネルギー不足になってしまいます。

    また、糖尿病ではカロリー摂取を制限するため、栄養不足になっています。栄養とカロリーは違います。炭水化物はカロリーですが、栄養ではありません。肉、魚、野菜などは栄養です。タンパク質、ミネラル、ビタミンをたくさん含みます。したがって、糖尿病の人は炭水化物を制限し、おかずはきちんと食べるべきなのですが、ご飯もおかずも制限してこじんまりした食事にしてしまうので体が痩せてしまいます。糖尿病の人の栄養不足を解消するには、体重1キロあたり1-1.2gのタンパク質、ビタミンA, B, C, D, Eをまんべんなく十分量とる必要があると言うお話でした。従来の栄養指導が完全に旧石器時代の遺物になったくらい重大なパラダイムシフトです。私が思うに、これだけのビタミンを食事制限しながらとるのは難しいので、やはりサプリをうまく利用すべきではないでしょうか。

    ローカロリーで栄養のあるものといえば、豆腐、チーズ、卵、赤身の肉、チキンなどです。こういったタンパク質と野菜をしっかり食べることが大切だと思います。また、糖尿病の人はこれまでヘモグロビンA1cをできるだけ低く設定して頑張っていましたが、65歳以上の患者さんの場合、7を切らないように(7から8の間で)コントロールするべきだと言うお話でした。大変勉強になりました。

    往診先のホスピタルメントにて