むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 尿を使ったコロナの新しい検査法

    昨日、講演会で講演をしたと書きましたが、私の他にもうひとり熊大から演者の先生がいました。腎臓内科の永芳友先生です。なんと、コロナ(COVID-19)患者の尿からコロナ特異物質を検出することに成功したとのことです。尿は感染性が低く、安全なサンプルです。それを検査の機械にかけると全自動で15分ほどで結果が出るそうです。PCRよりすごく早い。そして感度や特異度はほとんどPCRと同等。さらに優れているのは、陰性か陽性かだけではなく、定量できるため病勢が判定できるそうです。入院中にその数値がだんだん上がれば重症化するし、下がれば退院できるという指標になるそうです。こんな素晴らしい検査が熊大から発見されたのはすごい。昨日の発表では特許申請まで終わったので発表することができた、とのことで、研究が臨床につながるだけでなく、その後のビジネス展開まで考えて行動しているところが素晴らしい!がんばれ、永芳先生!

    今日は祝日で、漢方寺子屋というWEBセミナーに参加予定でしたが、ちょうどその時間に訪問診療が入っていたので参加できませんでした。残念。訪問診療は祝日に関係なく定期的に老人ホームなどを巡回するので、今日も普通通りの仕事です。それから、訪問診療している間にトイプードルのゴンをトリミングに出したのですが、たぬきのようにまるまる太っているとおもったら、キツネのように痩せて帰ってきました。なんだ、肥満犬と思ったら違ってた。

    仕事の後は、息抜きにベトナム料理Pho(フォー;ベトナム風ラーメン)専門店に行きましたが、あまりお腹がたまらなかったので、その足でマックの月見バーガーを食べました。月見は大好き。定番メニューにしてほしい。その後、スポーツジムで食べたカロリーを燃やして、併設の温泉で汗を流し、充実した休日となりました。

  • 頻尿あれこれ

    頻尿の訴えは結構多く、老若男女問いません。原因もいろいろです。とりあえず検尿して膀胱炎でないかを確かめます。膀胱炎だと、尿中に血液が混じったり、炎症細胞が入ったりします。顕微鏡で見ると、膀胱の上皮細胞が剥がれて出ているのが見えたり、よく見ると細菌が混じっているのがわかります。この場合、抗生剤で治療します。膀胱炎も、繰り返していると抗生剤を何度も飲むことになりますが、膀胱中の細菌はだんだん抗生剤に耐性を獲得し、効かなくなります。特に耐性になりやすいのは、クラビットなどのニューキノロンと呼ばれる抗生剤です。私は極力使わないようにしています。

    通常、膀胱炎は熱は出ませんが、細菌(炎症)が腎臓まで上がってくると腎盂炎といい、高熱が出ます。高齢者の風邪症状を伴わない高熱の場合、尿路感染(腎盂炎)と胆道系感染(胆石胆嚢炎、総胆管結石など)が隠れていることが多いため、見逃さないように注意します。尿路感染でなくて頻尿の場合、過活動膀胱を疑います。過活動膀胱は、早め早めに排尿することで膀胱に十分量の尿が貯まる前に尿意を催すようになったものです。典型的なものでは尿意切迫と言い、突然尿が漏れそうなくらい尿意が切迫します。

    高齢男性の夜間頻尿は前立腺肥大が原因のことが多いので、まずは前立腺肥大のチェックを行い、必要な治療を受ける必要があります。前立腺肥大などの原因がない夜間頻尿に、デスモプレシンという抗利尿作用(尿の量を減らす作用)のある新薬が出たのですが、最近使ってみて印象的だったのは、高校生で模試などの際にどうしてもトイレが我慢できないのが困るという症例で、デスモプレシンを処方したところ、試験の最中トイレにいきたくなるのはおさまったとのことで、大変喜ばれました。

  • 漢方にできること、できないこと

    漢方内科を標榜していると、いろんな患者さんが来られます。他でもいくつかの病院で見てもらったけど治らなかったという難しい症例がおおいので、とても鍛えられます。それでも、漢方のすごいところは、たいていの訴えはなんとかなるところです。しかし、そうは言ってもなかなか治せない場合もあります。

    難しい訴えその1:耳鳴り。これは耳鼻科では歳のせいだから諦めるように、と言われます。漢方では、高齢者の耳鳴りと、若い世代のストレスから来る耳鳴りを分けて考えます。確かに高齢者の耳鳴りは治りにくいと思います。セミの鳴くようなとか、エアコンの室外機やエンジンのような音と言われることが多いです。八味地黄丸が基本処方です。一方、若い世代のストレス性の耳鳴りはキーンという高い音です。加味逍遥散や抑肝散を使います。こちらは治ることがあるので諦めずに治療することを勧めます。

    難しい訴えその2:不眠。不眠に使う漢方はたくさんあるものの、西洋薬の睡眠薬にはかないません。たとえば妊婦さんで漢方で眠れるようにしてほしいと言われる。教科書的な漢方の使い方ではたいして眠れないことが多いので、いろいろ組み合わせます。いまだに試行錯誤です。

    逆に、通常の内科で難治だった症例で漢方なら案外簡単に治るもの。喉のつかえ;半夏厚朴湯や柴朴湯を使います。慢性腎臓病(eGFRの低下):防已黄耆湯が著効します。足の筋肉のつり;芍薬甘草湯。有名ですね。フラッシュバック(過去の嫌な思い出がよみがえってくる):四物湯+桂枝加芍薬湯。神田橋処方と言いますが、すごく効きます。目の周りのぴくつき:抑肝散がよい。ホットフラッシュ(更年期で熱くなったり汗が出たり)には加味逍遥散や女神散。これらは漢方で治すのは難しくありませんが、西洋薬だとあまり適切な治療法がなくて困ってしまうものばかりです。

  • たこつぼ心筋症

    たこつぼ心筋症という病気があります。変な名前ですが、国際的にもこのままTAKOTSUBOで通用します。ただ、外国人にわかりにくいので英語名でカテコラミン心筋症という別名もあります。非常に心筋梗塞と紛らわしく、鑑別診断に上がるのですが、最終的には心臓カテーテル検査ではっきりすることもしばしばです。症状は心筋梗塞とにていて、胸が苦しい、しめつけられる、呼吸困難感などです。心電図を取ると心筋梗塞とほとんど見分けが付きません。心筋梗塞は冠動脈という心臓を取り巻く血管が詰まってしまう病気です。糖尿病や高コレステロール血症が原因となることが多いです。一方、たこつぼの原因はストレスです。身内がなくなったり、何かとても強いストレスにさらされたときに急に心不全のような胸部症状が出るのですが、心筋が麻痺したように動きが低下します。昔「心臓麻痺」と言っていたものの中にタコツボが含まれていたと思われます。

    先日、このタコツボの患者さんを経験しました。私は、心電図などから心筋梗塞を強く疑い、救急病院に紹介し、行った先でカテーテル検査をした結果タコツボと確定診断されました。さいわい心筋梗塞ではなかったので、数日で退院されると思います。このような症例は当院の外来で年に一人くらい経験します。

    漢方を専門にしていると、病名をつけるのも難しいような難解な症例によく出くわします。便宜上、自律神経とか、身体表現性障害とか疼痛性障害とか言いますが、なにか重大な疾患を見逃していないかといつもヒヤヒヤします。先日は胸水の溜まった人がいて、胸膜炎と思って治療したものの全く改善しなかったので大きな病院に送ったら縦隔腫瘍(悪性リンパ腫疑い)と言われました。CTなどの検査ができないわれわれクリニックでは患者さんの診察においてひたすら感性を研ぎ澄まして嫌な予感がしないかに注意を向ける必要があると思いました。

    根子岳ビュー 月廻り温泉より

  • ワクチンの副作用は漢方で治す

    ワクチンのあとの副作用疑いでいろんな患者さんが来院されます。発熱では、なんど解熱剤を飲んでも38.5Cを下らない、きついというもの。腕が腫れて動かない、などはあまりに多くて有名なので、よほどひどい人しか来られません。動悸、不整脈がひどくなった、息苦しい、という症状は案外多く、家で経過観察をするのも怖いので、とりあえず受診されます。心電図をみるとかなり乱れたりしていますが、1週間ほどで改善する場合が多いようです。多くの患者さんは、漢方で対応しています。動悸も息苦しさも、腕が腫れたのも、熱が下がらないのも、だいたい対応できます。さいわい、当院では脳梗塞その他の血栓症、アナフィラキシーショックなどは一例も見ていません。もちろんそういう場合は漢方の適応ではありません。

    漢方の雑誌を見ていたら、漢方の大御所の先生自身が、ワクチンを打ったあとの副作用の発熱などを自分で漢方治療した話がかいてありました。やっぱり漢方家はみんな似たようなことをすると思いましたが、この先生が使った処方はインフルエンザにかかったときに使うような処方でした。先生ご自身のコメントとして、日々証が変わるのでそれに対応しないといけない、とのこと。私は、この意見にある程度賛成ですが、一部は反対です。

    ワクチン後の反応は人それぞれですが、何パタンかに別れます。漢方以外にほとんど有効な治療法はないと思うので、それぞれに一定の処方を決めておいて、漢方に詳しくなくても誰でも対応できるようマニュアル化してあげないと、全国何百万人という副作用に対応できないと思います。コロナはインフルエンザとはかなり違った病態です。そのワクチンの副作用もインフルとは異なった反応をとるので、それに対応できる処方を組み上げる必要があります。

    私案(企業秘密を大公開):ワクチン後の副作用はこう治す。<腕の腫れ>越婢加朮湯 <発熱>葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏+解熱剤 <頭痛> 葛根加朮附湯+五苓散 <関節痛・筋肉痛>麻杏薏甘湯 <動悸>炙甘草湯+柴胡加竜骨牡蛎湯 <倦怠感> 人参養栄湯 <下痢>柴苓湯 他にもありますがだいたいこんな感じです。