むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • うつ病を励ます

    最近、井原裕先生の「激励禁忌神話の終焉」という本を読んでいます。「うつ病の人をうかつに励ましてはいけない」と言われて久しく、今では素人の人たちもそのことを知っています。しかし、この本は激励禁忌(励ましてはいけない)は間違いであると説いています。これは、実際にうつを体験した人たちの証言からも正しいことだとわかります。

    通常、私たちはうつの人と話をするときには「それは辛かったですね」という傾聴に徹し、決して頑張れ、とは言いません。頑張れと言われなくてももう頑張れないレベルまで頑張っているし、もっとがんばりたくても体が動かないから、頑張れと言われるのは酷だということです。なかにはその言葉をきっかけに自殺してしまうこともあると言いますから、うかつに励ませません。

    しかし、傾聴しただけではせっかく病院に来て、長いこと待合室で順番を待ったのに、「そうですかー、きついですね」とだけ言ってもらっても何の解決にもならないと感じる人がたくさんいます。たまに、家族が「そんな悩まなくてもうつなんて時間が経てば治るんだから」とか、いろんなアドバイスをしてもらって霧が晴れることがあります。私も、この本を読んで、やっぱりうつの人のも適切な愛のこもった励ましの言葉と、治るから安心して、というメッセージをしっかり込めてお話しするべきだと思いました。

    PS:気合が足りん、怠けるな、といった体育会系の言葉はダメですよ。

    夕暮れの浮島神社にて

  • 長寿の生活習慣

    また健康番組ネタです。毎週やってますね。ご長寿の皆さんがどんな食生活をしているか、最近よく言われるのは長寿の人は肉をたくさん食べるということです。それはおそらく本当なのでしょう。しかし、勘違いしていけないのは、長寿の人が若い頃から肉ばかり食べていたわけではないということです。昔は肉も高かったでしょうし、戦争の頃は手にも入らなかったでしょう。そう言った点を無視して、肉を食べると長生きする!と短絡的に考えてはいけません。

    私が医学部の学生の頃、公衆衛生の授業で先生が言っていました。「地域別の交通事故の件数と砂糖の消費量を調べたら、密接な関連がありそうだ」という発見があったとしましょう。果たしてそれは正しいと思いますか?統計にはこんな隠された嘘がたくさんあります。それが正しいかどうかを調べるには、仮説の検証という作業が必要です。「砂糖の消費を抑えれば交通事故が減る」という仮説を立てて、なんらかの方法で砂糖消費を抑制します。例えば、熊本だけ砂糖消費税を導入するとか、ケーキ屋さんやお菓子屋さんの砂糖に規制をかける。その結果、何年か前向きに検証した結果確かに交通事故件数が減るのかどうか、そこまで調べないとデータから得られた関連性が本物かどうかは証明できないのです。

    とはいえ、健康に発酵食品がいいとい聞けば、私は食べます。味噌、納豆、ヨーグルト、キムチ今日はこの4つ全部食べました。キノコも食べたし海藻も食べた。玄米も食べたし、野菜もいろいろ食べた。どれも健康にいいと言われるのですが、全部食べた結果太ってしまっては何になるんでしょうね。

    浮島神社にて

  • 上流から治療

    上流とは金持ちのことではありません。人の体には小さい反応が次第に大きくなっていくカスケード(滝)と呼ばれる仕組みがります。例えば、怪我をした際に血管にごく少量の組織の物質が混入すると、それが次々と連鎖反応を起こして1000倍以上もの大きな反応となって止血します。このような止血の反応が行きすぎると、血栓が過剰となり、脳梗塞を起こしたりします。そこで、脳梗塞を予防するには血栓形成を抑制する薬を使います。いわゆる血液サラサラの薬です。しかし、血栓形成を抑制するといっても、カスケードの上流を抑えるものもあれば下流を抑えるものもあります。最近は上流を抑える薬の方が安全で使いやすいと言われており、私もそう思います。

    頭痛なども同じではないかと思います。ストレスやひどい肩こりがあると頭痛が起こります。頭痛薬(鎮痛剤)を使えばとりあえずの頭痛は良くなりますが、根本が治っていないので、また頭痛が起こります。一方、上流にあるストレスや肩こりを治療する方法もあります。こういった治療をすると、鎮痛剤を使うことそのものが減っていきます。その方が副作用を考えると理想ではないかと思います

    不安障害も同じです。不安でドキドキしたり緊張したり、日常生活に差し支える場合、安定剤を使えばとりあえず落ち着きます。劇的に効くので、だんだん手放せなくなってきます。一方、安定剤を使わず、不安そのものを抑える治療法があります。そうすると、抗不安薬の使用がぐっと減ります。これも、上流治療の方が下流治療より優れている実例だと思います。

    下江津湖に沈む夕日

  • 健全な心は健全な肉体に宿る

    最近、いろいろ勉強のために本を読みますが、印象的だった言葉がタイトルの通りです。うつ病をはじめとする心の問題は薬を使うと表面上落ち着いてきます。しかし、だいぶ調子いいです、と言われても、薬を減量するとまた調子悪くなることが多々あります。このような再発を防止するにはどうすべきかということを考えると、やはり薬だけに頼らず生活改善をし、健康的な体を作る必要があります。

    夜は良く寝て、朝はきちんと起きて、昼はゴロゴロせずに何か活動する。できれば散歩でもいいので外に出て太陽の光を浴びながら体力づくりをする。食事はきちんとバランス良い内容を食べる。このような基本的な生活改善なしに、薬だけで心の病を治すのは難しいと思います。

    私の治療は漢方薬を併用することが多いのですが、漢方は食欲、睡眠など全身の状態を見ながら薬を使いますので、健全な体を作って健全な精神が宿りやすい状態を作っていると思います。ただ、薬以外にも早起きする、運動をする、深酒をしないといった自分で努力する以外にない部分があります。そこは、患者さん自身で取り組んでもらわないとどうにもならないところです。

    往診中に車窓から。加勢川堤防にて

  • 腎機能改善薬

    心臓と違い、腎臓はあまり治療薬がありません。だんだん腎機能が低下してくると、その人の過去の採血データがあればこの先何ヶ月で透析導入になるかを計算することができます。これといった治療薬がないためほとんどの場合予想通りに一直線に腎機能が悪化していくからです。

    唯一、腎臓に対してアプローチできるのは血圧とコレステロール管理です。血圧、コレステロールを高いまま放置するのときちんと管理するのでは将来の腎機能が変わってきます。もちろんきちんと管理したほうがいいのです。熊本市は日本全国でも有数の透析患者さんの多い自治体だったのですが、こういった腎機能保護へのアプローチで透析患者さんが多いという汚名は返上されました。とはいえ、腎臓の治療はあまりなく、漢方相談に来られる方もいます。漢方で腎機能の改善を目的に治療するには、エキス顆粒(ツムラなどの既成の漢方薬)では太刀打ちできません。煎じ薬で頑張って作れば効果が認められていますが、煎じる手間もお金もかかります。

    そういう中、iPS細胞を使った腎臓の再生治療はもうすぐ私たちの現実世界に現れるかもしれません。今は、透析と生体腎移植(親兄弟から腎を一つ分けてもらう手術)しか道はありませんが、もうしばらくの辛抱です。なんとか今持っている腎を長持ちさせれば、iPS技術の恩恵にあずかることができる世の中はすぐそこです。