むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 上流から治療

    上流とは金持ちのことではありません。人の体には小さい反応が次第に大きくなっていくカスケード(滝)と呼ばれる仕組みがります。例えば、怪我をした際に血管にごく少量の組織の物質が混入すると、それが次々と連鎖反応を起こして1000倍以上もの大きな反応となって止血します。このような止血の反応が行きすぎると、血栓が過剰となり、脳梗塞を起こしたりします。そこで、脳梗塞を予防するには血栓形成を抑制する薬を使います。いわゆる血液サラサラの薬です。しかし、血栓形成を抑制するといっても、カスケードの上流を抑えるものもあれば下流を抑えるものもあります。最近は上流を抑える薬の方が安全で使いやすいと言われており、私もそう思います。

    頭痛なども同じではないかと思います。ストレスやひどい肩こりがあると頭痛が起こります。頭痛薬(鎮痛剤)を使えばとりあえずの頭痛は良くなりますが、根本が治っていないので、また頭痛が起こります。一方、上流にあるストレスや肩こりを治療する方法もあります。こういった治療をすると、鎮痛剤を使うことそのものが減っていきます。その方が副作用を考えると理想ではないかと思います

    不安障害も同じです。不安でドキドキしたり緊張したり、日常生活に差し支える場合、安定剤を使えばとりあえず落ち着きます。劇的に効くので、だんだん手放せなくなってきます。一方、安定剤を使わず、不安そのものを抑える治療法があります。そうすると、抗不安薬の使用がぐっと減ります。これも、上流治療の方が下流治療より優れている実例だと思います。

    下江津湖に沈む夕日