むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 体操で外から「気」を取り込む

    毎朝6時半に家を出て歩いて通勤しています。近くの公園ではいつもラジオ体操をしている人たちを見かけます。夏はいいのですが、この時期あさの6時半は真っ暗です。照明もまばらな公園でよく体操していると感心します。ちょっと気になるのは、夜明け前に体操するのが健康にいいのかということです。というのは、中国では公園でラジオ体操はしませんが、太極拳や気功が盛んです。気功などは環境の良いところ(公園の樹の下など)ですることで外からの気を体内に取り込みます。自然界は気にあふれていますが、日中は陽の氣、夜は陰の気です。夜明け前というのはまだ陰の気の時間です。

    したがって、夜明け前にラジオ体操をすると、体には陰の気が入ってくると考えるのです。別に、陰と陽とどちらがいいとか悪いとかではありません。人によって足りない方を入れてバランスをとればいいことです。ただ、寒い冬空のもとまだ暗い時間のラジオ体操で体内に陰の気を充満させるのは、おそらく健康に良くないのではないかと想像します。江戸時代頃の日本人の時の概念は、日の出から日暮れまでの時間を何等分かすることで決めていたそうです。したがって、季節により時間の長さが違ったということです。自然に逆らわない賢いやり方だと思います。

    ところで、土曜日は診療で疲れましたが、いい天気だったので、仕事が終わってすぐそのまま俵山へいきました。萌の里の駐車場で地鶏の炭火焼きを売っていたのでそれをつまみにオールフリーを飲んで、しばし休憩しました。天気がいいので野外のベンチでも寒くはありませんでした。その足でグリンピア南阿蘇の温泉に入ったら、一週間分の疲れが飛んでいきました。

    萌の里

  • 今週は学生実習が来ています

    今週は医学部の学生さんが実習に来ています。私の診察について勉強していますが、話をしにくい時は遠慮なくいってください。特に心療内科のご相談の場合、人が多いと話をしにくいということはあるかと思いますので、その点は配慮します。医学部の3年生で座学から臨床実習への準備段階として実際の医師の働く姿を体験してもらうのが目的です。将来の無限の可能性を秘めています。しっかり体験して勉強のモチベーションにしてもらえたらと思います。

    この学生さんは医学部の東洋医学研究会という私が作った漢方の勉強サークルに所属しており、当院での漢方治療の実際を見たいというのが応募の理由でした。もちろん、そういう希望を持った学生さんには優先的に来ていただきたいと思い、即諾しました。外来診察を見学してもらってわかったのは、忙しすぎてほとんど解説する暇がないことです。パッと見てパッと処方を決める。漢方には弁証論治という理論的背景があるのですが、そのあたりを踏まえつつ経験と勘で素早く処方を決めるので、見ていてよくわからないかもしれません。

    私たちのように漢方をはじめて30年近いと、鍵職人が合鍵をパッと選んでくれるように、その人に最も適した処方を一瞬で決めます。もちろん理論もあるのですが、説明し難い感覚的なものでこの人にはこの薬が合う!と感じるので決めていきます。膨大な勉強と経験に基づいた勘ですから当てずっぽうではないのですが、学生さんに説明するのは難しいと感じます。

    味噌天神

  • 先日出演の番組がネット配信されました

    TKUの医療大百科という5分番組に出演しましたが、今日TKUのホームページを確認したら放送がネットで見られるようになっていました。お恥ずかしいですが、アップしておきます。https://www.tku.co.jp/pgm_info/kenrepo/

    一連の糖尿病に関する番組に出ている人たちはみな同業の友人たちです。みんなうまいのでびっくりしました。

    さて、今日は診療のあとで同級生のグループで忘年会でした。日赤近く国体通りにあるよしむらクリニックの院長、西日本病院副院長の山神先生、菊陽のよしもと小児科院長などなど、それぞれの分野で頑張っている面々です。挨拶代わり、みんなで示唆に富む(印象に残った、あるいは勉強になる)症例報告を発表し合いました。呼吸器の専門家は結核の話、泌尿器科の専門家は前立腺がんの話、私は漢方の話、という感じです。忘年会でワイワイ飲むのではなく、極めて学術的です。みんな、へーそんな事があるんだ、とメモしながら話を効きます。同級生には遠慮なく聞けるので、勉強になります。

    ところで、認知症の勉強をしていてはっきりしたことがあります。認知症の治療薬(アリセプトなど)がどのくらい効くかという話です。薬効を評価するデータでNNTというのがあるのですが、1例の有効用例を得るのに何人に投与しないといけないかです。アリセプトを始め認知症治療薬の大まかなNNTは10だそうです。つまり10人に使ってひとり効くという計算です。しかも、効果の平均は70点満点の認知症検査で2点上がったという程度だそうです。一方、副作用が出る確率NNH(1例の副作用が出るのに何人の処方が必要か)も10くらいだそうです。つまり10人に使うと1例は副作用が出るということです。そんな薬、皆さん飲みますか?

     

    久木野 四季の森温泉近くにて

  • 風邪と抗生剤:ガイドラインは一般論

    風邪に抗生剤を出してはいけない、というのは最近の常識です。喉が痛いとか、熱が出たとかそんな風邪症状に昔は抗生剤を使っていましたが、今や使うことは殆どありません。抗生物質は細菌にたいしてのみ効果がありますが、風邪の初期はウイルス感染だから抗生剤は効かないのです。ウイルスにはインフルエンザやヘルペスなど特殊な感染を除いて効く薬はありません。

    もはや風邪に抗生剤を処方すると馬鹿(ヤブ医者)丸出しとなって恥ずかしいので極力出さないようにしています。「自分の風邪には抗生剤が一番効くから出してくれ」といわれる場合があります。そんな場合も、上のような理由で抗生剤はいまどき使わない、と断るのですが、そんな患者さんに限って3日もすると風邪をこじらせて気管支炎になったり副鼻腔炎になったりして、結局抗生剤が必要となります。患者さんにとっては、だから最初から抗生剤がほしいと言ったのに、となります。残念ながら、完全に私の負けです。患者さんの経験のほうが正しかったみたいな結果です。

    これは、患者さんの免疫がよわくて風邪のウイルスと戦っているうちに別の細菌感染(二次感染)を起こしてしまったわけですが、おそらくこういう弱い患者さんは最初から体内に病原菌を保菌しており、弱ったときにその菌が悪さをするのだと思います。抗生剤を使えば使うだけ菌は耐性化して強くなり、体に居座ります。したがって、風邪に最初から抗生剤を出さないというのは耐性菌を作らないという意味でも大切なことです。風邪をこじらせたのは私が抗生剤を出さなかったからではなく、そういう体質なのだと言う理解が必要です。ただ、すぐこじらせて重症化するとわかっている場合、かたくなに抗生剤処方を拒否せず臨機応変に使うことが大切だと思います。これは、ガイドラインはあくまで標準治療であり、我々臨床のプロはそれをふまえた上で個々の症例にベストな治療法を考えるべきだと思います。

    綺麗な菊の鉢を見ると祖父を思い出します。玉名の祖父のうちには毎年立派な菊が咲いていました。(写真は城南の老人ホームあすなろにて)

  • おせっかいで役に立たない天気予報(渋谷の空)

    温かい一日でした。院内では半袖で過ごせます。昼に往診に出た際に長袖を着たら、あつくて車のエアコンを入れないといけないほどでした。それにしても、朝からNHKニュースなどを見ていると、天気予報がありますが、必ず東京渋谷の空模様とか、そんな話題で数分を費やします。私たちにとってはなんの役にも立たない情報です。それに加えておせっかいなのは、今日は傘を持っていけとか、コートにマフラーくらいの準備をしておけとか、洋服や持ち物にまで指図してくることです。NHKニュースを見ている人でその指図が役に立つのは人口比から考えてわずかに1割に満たないと思います。あとの9割の人にとっては、関係ない話です。

    100歩譲って、私が東京に住んでいたとしても、そういう指図は間違っています。例えば最高気温15度を暑いと感じるか寒いと感じるかは個人の問題です。北海道から来た人は温かいと感じるし、沖縄から来たら寒いと言うでしょう。また、太ったアメリカ人なら一年中半袖Tシャツでいい人もいます。国際化の時代に自分の価値観でコートを着ろとかマフラーをしろとか、傘を持っていけというのはテレビが万人に向けて言う言葉ではありません。

    私が患者さんにいろんな指導をする際は個人個人で違うことを言います。例えば、血圧が高い人に全員減塩しろとは言いません。ガイドラインは万人向けなので、減塩と書いてありますが、実際には塩分感受性が高い人(食塩で血圧が上がりやすいひと)と塩分感受性が低い人(塩分をとっても血圧があまり上がらないひと)がいます。それぞれに必要な食事指導をすべきです。ガイドラインはあくまで万人向けの一般論であり各論ではありません。その辺をわかっていないと、テレビで言っていたからとか、ガイドラインに書いてあるからといって、金科玉条のように信じるのは間違いなのです。