むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • ポリファーマシー

    いくつかの病院に通うとそれぞれから処方薬がでますから、全部合わせると結構な量になります。しかも、だれも全体をコーディネートしませんから、それを全部飲むかどうかは自己責任になります。国の政策としてはかかりつけ薬局を決めて、全体の薬を管理してもらうようにと言っていますが、それでできるのはダブって処方された胃薬をどうするかとか、飲み残して余った処方をどうするかという程度だと思います。思い切って、薬を整理するのは誰も責任を取りたくないし、それで症状が悪化する可能性もあるのでとても難しい役割です。

    しかし、多剤処方(ポリファーマシー)は現に社会問題にもなっており、患者さんも薬が増えて良くなればいいのですが、かえって別の症状が出て困っているような場合もあります。私はそういった患者さんのお役に立てるよう、当クリニックの使命として薬を減らす努力をしています。患者さんによっては10年来同じ薬を飲んできたから別に減らさなくてもいいと言われますので、そういう場合はあまり強制はしませんが、希望があれば少しでも少ない薬で体調を良くする方法を考えます。

    減薬したいという相談がある場合は、できるだけお薬手帳や検査データの控えなどを持ってきてください。

  • 上流から治療

    上流とは金持ちのことではありません。人の体には小さい反応が次第に大きくなっていくカスケード(滝)と呼ばれる仕組みがります。例えば、怪我をした際に血管にごく少量の組織の物質が混入すると、それが次々と連鎖反応を起こして1000倍以上もの大きな反応となって止血します。このような止血の反応が行きすぎると、血栓が過剰となり、脳梗塞を起こしたりします。そこで、脳梗塞を予防するには血栓形成を抑制する薬を使います。いわゆる血液サラサラの薬です。しかし、血栓形成を抑制するといっても、カスケードの上流を抑えるものもあれば下流を抑えるものもあります。最近は上流を抑える薬の方が安全で使いやすいと言われており、私もそう思います。

    頭痛なども同じではないかと思います。ストレスやひどい肩こりがあると頭痛が起こります。頭痛薬(鎮痛剤)を使えばとりあえずの頭痛は良くなりますが、根本が治っていないので、また頭痛が起こります。一方、上流にあるストレスや肩こりを治療する方法もあります。こういった治療をすると、鎮痛剤を使うことそのものが減っていきます。その方が副作用を考えると理想ではないかと思います

    不安障害も同じです。不安でドキドキしたり緊張したり、日常生活に差し支える場合、安定剤を使えばとりあえず落ち着きます。劇的に効くので、だんだん手放せなくなってきます。一方、安定剤を使わず、不安そのものを抑える治療法があります。そうすると、抗不安薬の使用がぐっと減ります。これも、上流治療の方が下流治療より優れている実例だと思います。

    下江津湖に沈む夕日

  • 健全な心は健全な肉体に宿る

    最近、いろいろ勉強のために本を読みますが、印象的だった言葉がタイトルの通りです。うつ病をはじめとする心の問題は薬を使うと表面上落ち着いてきます。しかし、だいぶ調子いいです、と言われても、薬を減量するとまた調子悪くなることが多々あります。このような再発を防止するにはどうすべきかということを考えると、やはり薬だけに頼らず生活改善をし、健康的な体を作る必要があります。

    夜は良く寝て、朝はきちんと起きて、昼はゴロゴロせずに何か活動する。できれば散歩でもいいので外に出て太陽の光を浴びながら体力づくりをする。食事はきちんとバランス良い内容を食べる。このような基本的な生活改善なしに、薬だけで心の病を治すのは難しいと思います。

    私の治療は漢方薬を併用することが多いのですが、漢方は食欲、睡眠など全身の状態を見ながら薬を使いますので、健全な体を作って健全な精神が宿りやすい状態を作っていると思います。ただ、薬以外にも早起きする、運動をする、深酒をしないといった自分で努力する以外にない部分があります。そこは、患者さん自身で取り組んでもらわないとどうにもならないところです。

    往診中に車窓から。加勢川堤防にて

  • 腎機能改善薬

    心臓と違い、腎臓はあまり治療薬がありません。だんだん腎機能が低下してくると、その人の過去の採血データがあればこの先何ヶ月で透析導入になるかを計算することができます。これといった治療薬がないためほとんどの場合予想通りに一直線に腎機能が悪化していくからです。

    唯一、腎臓に対してアプローチできるのは血圧とコレステロール管理です。血圧、コレステロールを高いまま放置するのときちんと管理するのでは将来の腎機能が変わってきます。もちろんきちんと管理したほうがいいのです。熊本市は日本全国でも有数の透析患者さんの多い自治体だったのですが、こういった腎機能保護へのアプローチで透析患者さんが多いという汚名は返上されました。とはいえ、腎臓の治療はあまりなく、漢方相談に来られる方もいます。漢方で腎機能の改善を目的に治療するには、エキス顆粒(ツムラなどの既成の漢方薬)では太刀打ちできません。煎じ薬で頑張って作れば効果が認められていますが、煎じる手間もお金もかかります。

    そういう中、iPS細胞を使った腎臓の再生治療はもうすぐ私たちの現実世界に現れるかもしれません。今は、透析と生体腎移植(親兄弟から腎を一つ分けてもらう手術)しか道はありませんが、もうしばらくの辛抱です。なんとか今持っている腎を長持ちさせれば、iPS技術の恩恵にあずかることができる世の中はすぐそこです。

  • 不整脈とアブレーション

    動悸がする時、不整脈なのか、ただドキドキするだけなのかは大きなポイントです。しかし、そのどちらかをはっきり区別するのは容易ではありません。最近、当院でも立て続けに動悸で来院され、運良く心電図が取れたおかげで診断が確定した症例がありました。一つは10年以上前から時々動悸発作に襲われ、ただしゃがみこむしかなかったという方。更年期でしょうか、と来院されたものの、運よく動悸発作時に取れた心電図から発作性上室性頻拍(PSVT)と診断されました。すぐに日赤を紹介し、カテーテルアブレーションという治療で根治できました。これで、10年来悩んでいた動悸発作とはさよならです。

    もう一例は、繰り返し動悸発作が起こり、何度心電図をとっても不整脈が捕まらず、24時間心電図(ホルター心電図)でも異常ありませんでした。そのため、心因性かもしれないと思って抗不安薬などを使って経過を見ていたところ、ついに動悸の原因が発作性心房細動だとわかった例がありました。こちらも、日赤でアブレーションしてもらって、今は不整脈は出なくなっています。

    このように、動悸発作は発作性心房細動をはじめとする心臓に由来する不整脈である場合とストレスなどが原因の心因性のものがあるのです。発作時間が短いと、来院しているうちに不整脈は治りますから、まずは自分で脈を見て脈が速いか遅いか、飛んだりしないか、リズムは一定かバラバラか、といった点に気をつけて情報をとっていただきたいと思います。それがわかれば、証拠は取れていなくともかなりのところまで診断は絞られます。そして、不整脈と診断がついた場合、以前は薬でコントロールするしかなかったのですが、最近は症例によってはアブレーションという方法で根治できるかもしれません。