むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • ドグマチール

    ドグマチール(スルピリド)という薬があります。とても古い薬で、精神科領域や消化器領域などで広く使われています。不思議な薬で、少し使うと胃薬として作用し、食欲が出てきて元気になります。気分が沈んでいて食欲がないという時は驚くほどよく効きます。また、たくさん使うとうつ病や統合失調症に対して効果を発揮します。私も色々な状況で処方します。ただ、気をつけているのは、一日2錠以上は使わないこと、何ヶ月もダラダラと使わないことです。心療内科ではたくさん(3錠以上)使うとうつ病にも効果が期待できますが、今はもっと選択性が高い抗うつ剤がいろいろありますから、私はあえてこういう薬を大量に使うことはありません。

    良く効くのにちょっとしか使わないのには理由があります。副作用です。女性が長期に使うと乳汁分泌(母乳が出る)、生理不順などが起こってきます。男性でも女性化乳房(胸が大きくなる)、乳頭が痛い、などが見られます。また、使用量が多いとそわそわしたり手足が震えたりします。いずれも薬をやめると元に戻ります。また、眠気が来ることもありますが、うつで眠れない人にとっては心地よい眠さと言われることがあります。

    そんな感じでいいところ、悪いところいろいろあるのですが、古い薬で長年の使用経験が蓄積されていますから、逆に安全性も確認されています。副作用に関するデータも揃っており、未知の副作用を心配することはないと思われます。こういう古くて効果的な薬を適切な量でうまく使いこなすのが大事なことと思います。

    熊本高校の校舎前で

  • 鍼で膝の治療

    先日、膝の痛みで来院された患者さんの話です。階段で転んで両膝を強打し、それ以来膝の痛みが4年ほど続いている。整形外科や整骨院に行ったが、治らないので諦めてる。という話。漢方と鍼はまだ試していないということだったので、治療してみることにしました。漢方は、いくつか候補があるのですが、その一つを処方し、膝の鍼治療も行いました。膝の鍼治療は膝の痛いところだけでなく、大腿(太もも)のツボから足背のツボまで広く配穴します。

    その結果、とても調子良くなったと、足取りも軽く再来されました。今回は、膝でなくて坐骨神経痛(お尻からふくらはぎ方向へ痺れる)の治療もしてほしいとのこと。坐骨神経痛の場合、臀部の筋肉の隙間を鉛筆ほどもある太さの坐骨神経が出てくるので、そのどこかで神経が圧迫されるものと思います。この神経のもっとおおもとを辿ると、腰椎から出ているので、私の場合はこの腰椎から臀部にかけても念入りにツボ刺激をします。不思議なことに、手にも腰痛を治すポイントがあるので、腰とは離れていますが、手のツボも使うことがあります。

    このように、いろいろ工夫して頭の中で患者さんの気の流れのおかしくなったところを想像しながら治療することで、元気に笑顔で歩いて帰られると「よかったな」と治療家としての醍醐味を感じます。

  • 鎮痛剤は体を冷やす

    頭痛や腰痛、生理痛などに鎮痛剤を使うことがあると思います。これら鎮痛剤を私たちは解熱・鎮痛剤と分類します。そうです。風邪などで熱が出た時に使う解熱剤と痛みがある時に使う鎮痛剤は同じものです。アスピリン、ロキソニン、ボルタレン、イブプロフェンなどのことです。解熱剤ということは、体を冷やす働きがあります。熱がない人が飲んでも体温はさほど変わるわけではありませんが、長期に使用すると、確実に体が冷えてきます。

    湿布も同じです。最近の湿布は、経皮吸収(皮膚を通して薬剤がしみてくる)タイプの鎮痛剤が多いので、冷やっとするだけでなく、患部に鎮痛剤がしみていくことで痛みをとりますが、結果、その部分は冷えてきます。炎症があれば、冷やすのは理にかなっていますが、冷やし過ぎは良くありません。例えば、生理痛などは下腹部が冷えた人が多いと思います。それなのに、鎮痛剤でさらに体を冷やすのはあまりよくありません。漢方では、芍薬甘草附子湯や当帰芍薬散加附子という処方があり、痛みをとりつつ温める働きがあります。私はできるだけそういう漢方痛み止めを処方します。

    最近私が知ったのは、うつの患者さんも温めてあげたほうがいいということです。心が沈んでいる人は温めてあげると不安が取れたり、眠れるようになったりするようです。私は漢方で温めるようにしています。逆にイライラが強い人には冷やす漢方を使います。更年期などで上半身がカッカとほてる場合もそうです。温めたり冷やしたりする漢方薬や食材で心がコントロールできるというのは面白いことですね。

    嘉島の田畑を潤す用水路。サントリーがビール工場を作るほどの名水が流れています。

     

  • 着陸するか飛び続けるか

    心療内科を訪れる患者さんには「もう仕事に行けません、つらいです」という人がたくさんいます。おそらくこれまで精神科の病院では、それではしばらく休みましょうか、診断書を書いてあげます。と言って「2−3ヶ月の静養を要す」と診断書を書き、勤務にドクターストップをかけていました。もちろん、その一枚の紙切れでホッとする人がいます。助かりました、もうこれ以上どうしても無理なんです、という感じです。むしろこういう人たちはあまり多くを語らず、背中にそういう言葉が見られます。

    一方、あれこれ言いながらもなんとか会社には行けている人もいます。パワハラでもいじめでもない、なんとなくこの会社は自分に合わない、みたいな場合です。こういう場合、うかつに診断書で静養させるのは良くないような気がします。社会との接点を持ち続けないと、その先ずっと適応できないで引きこもったり転職を繰り返したりするのではないかと思うのです。

    そう考えると、私たちの人生は飛行機や鳥に似ていると感じます。もう飛べない、という時は、当然着陸して羽を休めないと行けません。しかし、なんとか飛んでいるのに飛ぶのが嫌だからということで強制的に飛ぶのをやめさせると、地上に降りた鳥や飛行機が再度離陸するには飛び続けた時の何倍ものエネルギーを必要とします。そう考えると、「ゆっくり休んでね。仕事もしばらく行かないでいいよ」という言葉は必ずしも優しいとは限らないと思うのです。親心と同じです。

  • ストレートネック

    当院に随分前からかかっていた患者さんで、肩こり、手の痺れなどがあまりにひどく相当悩んでおられました。そのせいでうつのようになったため、うつの治療もしました。整形でも検査を受けたりリハビリしたり、電気治療をしたりしました。電気治療は若干効果があり、自宅でもできるようにと、低周波治療器を購入したりされました。しかし、神経内科に行ってMRIをとっても、特に異常はないとのコメントでした。何件もの病院を回って結局よくわからないまま数ヶ月が経ちました。

    抗うつ剤の治療で少しは調子がいいものの、なかなか以前のようなコンディションにならないため、手をこまねいていました。ある日、その患者さんが他院で撮影したMRI画像をもらってきてくれました。見てみると、なんと定規で書いたようなストレートネックです。首の骨は横から見ると通常緩やかなカーブを形成しているのですが、そのカーブがなくなっています。これが原因じゃないですか、と患者さんに言いました。何件も病院巡りして今まで誰にも指摘されなかったそうです。

    私はこれまでストレートネックの鍼治療を何人もしましたが、実はセルフ整体(自分で自分に施術する)が最も効果的だと思っています。そこで、その患者さんにもちょっとしたセルフ整体のコツを説明しました。結果・・・2週間後に来院された際にはすっかり肩こりも手の痺れも取れて、元気になったそうです。こういうのが嬉しいですね。