むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 着陸するか飛び続けるか

    心療内科を訪れる患者さんには「もう仕事に行けません、つらいです」という人がたくさんいます。おそらくこれまで精神科の病院では、それではしばらく休みましょうか、診断書を書いてあげます。と言って「2−3ヶ月の静養を要す」と診断書を書き、勤務にドクターストップをかけていました。もちろん、その一枚の紙切れでホッとする人がいます。助かりました、もうこれ以上どうしても無理なんです、という感じです。むしろこういう人たちはあまり多くを語らず、背中にそういう言葉が見られます。

    一方、あれこれ言いながらもなんとか会社には行けている人もいます。パワハラでもいじめでもない、なんとなくこの会社は自分に合わない、みたいな場合です。こういう場合、うかつに診断書で静養させるのは良くないような気がします。社会との接点を持ち続けないと、その先ずっと適応できないで引きこもったり転職を繰り返したりするのではないかと思うのです。

    そう考えると、私たちの人生は飛行機や鳥に似ていると感じます。もう飛べない、という時は、当然着陸して羽を休めないと行けません。しかし、なんとか飛んでいるのに飛ぶのが嫌だからということで強制的に飛ぶのをやめさせると、地上に降りた鳥や飛行機が再度離陸するには飛び続けた時の何倍ものエネルギーを必要とします。そう考えると、「ゆっくり休んでね。仕事もしばらく行かないでいいよ」という言葉は必ずしも優しいとは限らないと思うのです。親心と同じです。