むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 認知症と向き合う

    認知症は、物忘れの病気という風にとらえられることが多いですが、実際にはそれだけではありません。家の鍵をどこに置いたかを思い出せないとか、そういったのは単なる物忘れであり、誰にでもあります。認知症の場合、鍵があってもドアが開けられない、鍵の使い方がわからない、といった忘れ方をします。物事の手順を思い出せなくて、得意だった料理が作れなくなったり、散歩に出たら、帰宅する道がわからなくなってしまったりします。新しい出来事はすぐ忘れて、朝ごはんを食べたことも思い出さず、ご飯はまだか、ということになります。ものが見つからないのを盗られたと思い込んで、人のせいにする物盗られ妄想もよくみられます。一方、古いことはよく覚えていて、幼少期の体験を鮮明に話してくれたりします。このような物忘れに関する症状を、中核症状と言います。

    それに対して、認知症の周辺症状というものがあります。急に怒りっぽくなって、性格が変わってしまった、徘徊したり介護に抵抗する、大声を出したり便をトイレ以外でしてしまうなど、いろんな迷惑行為が出てきます。このように、介護してくれる家族に迷惑をかけるようになると、たんに物忘れがひどいでは済まされない状況になってきます。

    最近は、認知症に有効な薬が新しく出てきています。昔なら仕方ないとあきらめていたような状況でも、治療により症状が落ち着き、平穏な生活ができるようになる場合があります。怒りっぽくなったりして手がつけられないような場合も、いろいろな向精神薬をうまく使うことで落ち着きを取り戻せます。ただ、認知症の薬を決められた通りに画一的に投与していってもうまくは治せません。患者さん毎にキメ細やかに量を調整する必要があります。大抵は過剰投与となり、副作用が出てしまいます。実際にはかなり少量で良いことが多いのですが、増やしたほうがもっと効くという思い込みがいけないのだと思います。

    今日も家族に連れられて来院された高齢女性がおられました。本人も物忘れの自覚があるといいます。認知症の場合、自分が物忘れをしているという自覚は乏しいことが多いので、今日の患者さんはアルツハイマーではなさそうだと思い、漢方薬で経過をみることにしました。

    私は、1年くらい前からコウノメソッドという認知症の治療法を参考にして治療するようになり、治療成績が結構改善したと思います。認知症の高齢者は家族で抱え込まず、まずは専門家にご相談ください。

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