むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 原因と結果について考える

    とりあえず検査しましょう、というのは病院でよく言われる言葉です。病態がよくわからないときには、採血やレントゲン、心電図など一通りの検査をして、異常を探すのは内科医の常套手段です。しかし、検査データに異常が見つかった時、それが患者さんを苦しめている原因とはかぎりません。その検査結果の解釈には内科医の長年の経験を通した勘や勉強を積んだ知識などいろいろなものの総合的な判断となります。最近はGoogleも相当賢くなっていて、自分の症状を検索するといろいろな可能性のある疾患が上がってきます。最近の研究によると、医療をよく知らない素人がGoogleを使って検索した結果は結構いい線いっているという話です。しかし、例えば「食欲がない」と検索して、「胃がんの疑い」とかがネットで上がってくると、心配でたまらなくなることでしょう。

    「だるい」ということで病院受診し、とりあえず検査となったとします。採血の結果、肝機能とコレステロールと血糖が少しずつ高かった場合、どうでしょう。だるいのは肝機能のせいかもしれないし、糖尿病のせいかもしれない。また、それらと全然関係ない睡眠不足が原因かもしれません。しかし、内科医はそれぞれ専門があり、糖尿の専門家は糖尿病に注目するし、消化器の先生は胃腸や肝疾患に目が行きます。そして、その異常をとりあえず治してみるのですが、それで症状が解決するかどうかはまた別の話です。めまいの患者さんが眼科に行くことがあります。通常めまいは耳鼻科が専門なのですが、眼科に行ってとりあえず検査をして、白内障が見つかり手術になったりすることは日常茶飯です。

    私が思うに、「だるい」一つとっても、いつから、どういうときに、どうして、とできるだけ周辺の情報を集めることで原因が絞られてきます。よくよく聞いたら夫の浮気が見つかってから、眠れなくなり体調が悪い、ということもよくあります。しかし、内科の問診票にそういった家庭内のトラブルを詳しくかいてくれる人は少ないので、原因がわからず診断に遠回りしてしまうのです。

    往診中私の車の横に戦車が! 第2空港線を4ー5台の戦車が爆走していました。

  • リモート授業は不登校の生徒に福音

    朝起きができないという学生さんの相談が時々あります。起きられないため、朝1限目には間に合わないし、親はなんとか起こそうと朝からガミガミ怒鳴ったりしますが、起きられない。ひどい場合は昼過ぎまで寝て、昼ごはんを食べて午後の授業だけちょっと受けて帰る、みたいな生徒さんもいます。ひとくくりに不登校というレッテルを貼るのではなく、原因別に対応策も変わってきます。このような朝とにかく起きられない場合、起立性調節障害のことが多いと思います。朝の血圧も低く、テンションが上がらない。午後から夜にかけては割と元気で、夜遅くまでスマホで時間を潰したりゲームで夜ふかしします。朝起きられないはずです。

    私は、このような中高生の専門ではないので、症状がひどい場合は思春期外来を専門とする病院に紹介していますが、当院では漢方で体質改善をしたりする場合があります。夜ふかし体質は漢方ではフクロウ型と分類され、苓桂朮甘湯が基本処方です。しっかり飲んでもらうと、だんだん良くなるのですが、味が苦手だとか、いろんな理由で漢方が飲めない学生さんもいます。今日も、せっかく処方した漢方が飲めずに1ヶ月無駄に過ごした方がいました。ラッキーなことに、苓桂朮甘湯の錠剤が薬局にはありましたので、今度こそ飲んでもらえたら、来月は調子良くなっているかもしれません。

    それにしても、2学期は始まりましたが、登校日は週の数回であとはリモート授業というところがほとんどです。今日の不登校の学生さんにも言いましたが、時代は彼らを応援してくれています。学校に行かなくても授業をリモートで受けられるのですからこんなラッキーなことはありません。ギリギリまで起きられなくても、とにかくリモート授業でしっかり勉強すること。不登校の生徒さんたちがが普通に学校行事に参加できるなんて夢のようではありませんか。

  • そろそろ鍋の季節

    だいぶ涼しくなりました。だんだん鍋などが美味しい季節となります。私は一人鍋をよくしますが、最近一番多いのはチゲ鍋、キムチ鍋といった定番の韓国料理です。辛いのが大好きです。その他、韓国料理屋さんではテンジャンチゲというのがありますが、これはテンジャン味噌を使った韓国風味噌汁です。唐辛子は入りますがスープの色は味噌です。そして最近私がハマっているのがプデチゲです。プデとは韓国語で部隊と書くそうで、昔アメリカ軍の食材としてSPAMやソーセージを入れたチゲです。特徴は、鍋にインスタントラーメンの麺をバキっと割って入れて煮込むのです。韓国のインスタント麺は煮込み専用があり、伸びにくいようにできているそうです。YouTubeで作り方を見て作ってみたら、かなりいけました。ジャンクフードっぽいですが美味しいですよ。麺を入れずにしめに雑炊にするのもいいです。とき卵なんか入れると最高です。

    日本の鍋のダシといえば、昆布やカツオでしょう。韓国のチゲのだしは昆布と煮干しです。食材にアサリや牡蠣など海鮮類が入るので、それからも美味しい出汁が出ます。KALDIに行くと、韓国食材のコーナーにダシダという調味料が売ってあります。ビーフだし、いりこだし、しじみだしなどの種類があり、その日の食材に合わせただしを使うと美味しくできます。味の素のカツオ風味などと似たようなものですが、抜群に美味しいので、使い慣れるといろんな料理が簡単に上手に作れます。

    鍋がいいのは野菜と肉をたっぷり食べられることです。ヘルシーです。たいていの食材を入れられるので、冷蔵庫の整理になります。そういえば、先日YouTubeでみたのですが、韓国の辛ラーメンを作る際に肉やニラなどを炒めてから入れるのは当然ですが、納豆を入れると抜群に美味しいと言っていたので試してみたところ、なかなかの美味でした。お試しあれ。

  • コロナ後遺症の患者さんが増えてきました

    当院にコロナ感染疑いの人は来ません。検査ができないからです。風邪症状でコロナを疑う場合、発熱専門外来に行くことになります。そこでPCRなどの検査を受けるのは、今や常識となっています。最近、学校や職場で簡易キットを用いた抗原検査が推奨されていますが、抗原検査は感度の問題があるので、怪しいときはPCRのできる施設を受診することを勧めます。感度というのは陽性患者を陽性と判定できる確率です。例えば、おなじみインフルエンザの検査では、感度は70−80%くらいです。なぜ陽性なのに陽性と判定できない人が3割近くいるのかと言うと、検査するタイミングの問題と検査の綿棒をどのくらい鼻にグイグイと押し込むかと言った技術的な問題があるからです。そこで、素人が簡易キットで検査して陰性だったからと言って絶対陰性とは限りません。そういった検査キットの特徴を理解した上で行動しないと、かえって感染を蔓延させることになります。

    さて、そういうわけで当院でコロナを疑う患者さんはまずいないのですが、コロナにかかり入院(あるいは自宅隔離)していたけどやっと開放されて来ました、という患者さんが最近増えてきました。結構身近に増えてきた印象です。このような患者さんが、まだ本調子でない、体調が悪い、きつい、咳が出る、などの症状を訴えられます。このような症状はコロナワクチンの副作用でも見られるので、病態としては同じと考えています。

    おそらくこういうコロナ感染及びワクチンの後遺症は通常の西洋医学ではお手上げだと思います。治療法がさっぱり思いつきません。しかし、漢方的に考えると、高熱による消耗、虚労が背景にあり、気道は粘液分泌が減って痰がからみやすくなり咳が出ると考えます。漢方的には肺陰虚・肺気虚です。そこで、このような患者さんには人参養栄湯と滋陰降火湯を処方します。漢方のすごいところは治療経験がなくても寒熱虚実の病態把握が的確なら治療方針が立つということです。

  • 初心忘るべからず

    今週は当院の開院5周年ということもあり、患者さんや取引先からいろいろなお祝いを頂き、ありがとうございました。創立記念日というのは会社にとっての誕生日です。「初心忘るべからず」という言葉があります。会社を起こすにあたっては、社長(創立者)の事業に対する思い入れというものがあります。なんとなく流れで会社を作る、なんてことは不可能です。こんな会社にしたいというずっと先の目標を持ち、その目標を実現させるために必要なことを現実に落とし込みます。そして事業計画を作り、銀行でお金を借りたり、一緒に働いてくれる人を募ったりします。

    そのあかつきにやっと会社が設立されます。すると、家族、親兄弟、友人、その他大勢の人たちから応援のメッセージが来ます。その時の喜び、やるぞ、という気持ちが初心です。それは、単に会社を起こして大儲けしようというようなものではなく、大勢の人に見守られ、応援してもらって開業にこぎつけたからには、みんなの期待を裏切らないように頑張って働き、社会に貢献しよう、と思うわけです。

    そんなわけで、会社の創立記念日というのは、単なる会社の誕生日ではありません。社長は初心を忘れず創業時の思いを共有し、会社の存在意義、目標、価値観などを社員みんなで共有する大切な日なのです。同じことは、会社だけでなく、どこにでもあります。高校や大学に合格した時、一生懸命勉強してさらに上を目指そうと思うでしょう。その初心を3年間持ち続けた人と、すぐ忘れた人では将来は大きく違ってくると思います。人生はそんなものです。「初心忘るべからず」という格言は守らないと損するとても大切な言葉です。

    先日写真を撮ったときは緑色のピーマンでしたが、今日は赤唐辛子みたいになっていました