むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 深部静脈血栓について

    深部静脈血栓症という疾患があります。熊本地震の際にも血栓症のリスクが高まるということで、ポータブルエコーの機械を持って避難所巡りをしたチームがありました。深部静脈血栓症は足を動かさずに長時間じっとしていることで血栓ができる病気です。国際線の飛行機の座席に長時間座っていることでも見られることから、以前はエコノミークラス症候群として知られていました。しかし、じっと座って足を動かさないことがリスクになるので、たとえビジネスクラスでも同じことです。地震の際には車中泊をした人も多かったと思いますが、狭い車の中で夜を明かすとかなりの確率で深部静脈血栓症となります。

    一方、そのような狭い座席の問題ではなく、もっと身近に深部静脈血栓症を起こすことがあります。それは、寝たきり状態です。何らかの理由で寝たきりになると足を動かしませんから、足の静脈に血栓ができてしまいます。最悪の場合、リハビリの最中にその血栓が飛んで心臓から肺に詰まってしまい、急激に酸素化が悪くなってショック死してしまうことがあります。肺塞栓症と言います。

    このような状況にならないようにするには、寝たきりでも車中泊でも、足の運動をすることです。大きく動かさなくても結構。足先を上下に動かしたり回したりするだけでも血行が良くなり血栓を予防します。もし血栓ができてしまったら、抗凝固剤で新たな血栓の形成を抑制し、できた血栓が溶けるのを待つ必要があります。

    上江津湖

  • 空腹時血糖と随時血糖

    朝ごはんを食べずに来院してもらい、血糖を測るのを空腹時血糖、食事と採血のタイミングをランダムに測るのを随時血糖と言います。もちろん空腹時血糖の方が低い値になることが予想されます。昔は朝ごはんを食べずに来てもらい採血するのが当たり前でした。しかし、最近は随時血糖もだいぶ重視されるようになって来ました。随時血糖を測ると、空腹時ではわからない高血糖が見つかることがあり、隠れた糖尿病を診断することができるのです。

    糖尿病を治療中の場合、ヘモグロビンA1cという検査をよく耳にすると思います。7以下を目標に治療します。一方、ヘモグロビンA1cばかり見て治療していると、思わぬ低血糖を来すことがあります。血糖降下剤が効きすぎて血糖が下がると、気分不良となり、吐き気や冷や汗が出たり、ひどくなると意識が遠くなります。非常に危険なので、低血糖にはならないように注意が必要です。そこで、食後の血糖は下げ、空腹時血糖は低血糖にならない程度に維持するのが糖尿病治療の腕の見せ所なのです。

    さらに、血糖がやや高いところで安定しているのと高かったり低かったりの変動が大きい場合を比べると、少し高くても変動が少ない方がいいとされています。そういう最新の知見に基づいて治療しないと、単にヘモグロビンA1cをがむしゃらに下げればいいという時代ではなくなっています。また最近は、治療薬も新しくどんどん出てきており、以前に比べると治療がとてもしやすくなっています。

  • ASTR(アスター)という筋膜リリース法

    最近、テレビで筋膜リリースという治療法が話題になっています。特によく目にするのが、凝った肩の筋肉と筋肉の境目をエコーで確認しながら生理食塩水を局所注射して筋膜を剥がし、隙間を作ってやることで痛みを取るといった治療法です。

    私が筋膜リリースに着目したのは10年ほど前です。ただ、これは今はやりの超音波で生理食塩水を注入する方法や筋膜リリース用のマッサージ用具を使った治療ではありません。ASTR(アスター)というトリガーポイントを使った筋膜リリース法です。これは、主に鍼灸マッサージ師さんたちが勉強する施術法の一つです。以前教科書を買ってやり方をマスターしたのですが、なかなか実践で試したことはありませんでした。

    しかし、最近の筋膜リリースのブームを見て、ASTRを再度勉強し直しました。この施術法の優れているのは注射や超音波などを使わず、患者さんの手足の痛いところを探って、関節を曲げたり伸ばしたりしながら治療します。全く道具がいりません。その代わりちょっとしたコツがあるので、施術の訓練が必要です。私は日頃患者さんの手足を触ってツボを押したりして治療していますので、これを応用するとあまり難しくないと思っています。もうしばらく研究して、実際に外来でもやってみようと思います。患者さんにとっては、医者に痛いところを触ってもらっただけで治ったような錯覚があるかもしれませんが、ここには隠されたテクニックがあることをちょっとだけ知っていただけたらと思います。

  • 水(湿)と体調不良の関係

    ついに雨が降りました。明日からもしばらくは雨になりそうなので、カラ梅雨でなくすみそうです。本来なら今日が梅雨入りでいいような天気でした。やはり、降るべき時には降ってもらわないと、水不足が心配です。

    一方、雨になると水に関係する体調不良がいろいろ出てきます。めまい、ふらつき、吐き気、片頭痛、むくみ、喘息などです。どれも、体の中の水バランスの悪さが問題なのですが、環境の湿気に大きく左右されます。日本は島国でもあり、雨が多いので湿に関係する病態が多く見られます。漢方の本場中国の内陸では逆に乾燥に伴う病態が多く見られるそうなので、国民性も住んでいる環境により随分変わってきます。日本のように湿が多いところでは、水分を摂りすぎるとよくないと思います。漢方的に、湿の多い体質かどうかを見分ける方法に、舌診があります。舌が腫れぼったくぼってりと大きめで、舌の辺縁に歯型の食い込み(歯痕)が見られるのが湿証の特徴です。

    このような状態を見たら、胃腸の状態を整えながら余分な水分をぬいてくれる白朮、茯苓、気の巡りを良くして乾燥させる陳皮、半夏、利尿作用のある猪苓、沢瀉などの生薬を配合する処方を考えます。患者さんごとにバランスの崩れた部分が異なるので、それぞれに必要な処方はこのような生薬の使い方を一例一例考えるのです。

  • 心不全の研究会

    夕方仕事が終わってから医師会の心臓検診班会議に出席し、そのまま心不全の研究会に参加しました。通常こういった心不全の研究会といえば、循環器内科のドクターが勢ぞろいするのですが、今日の会は心臓外科の先生も参加するジョイントのミーティングでした。

    講演の内容もさることながら、国立病院勤務時代の同僚の先生たちや、済生会の先生たちとお会いして懐かしく話しをする機会を得ることができて良かったです。こういった交流がいちばん病診連携として有用です。患者さんを頼んだり頼まれたりするのに、こういう会で直接会っておくと話がスムーズです。

    心不全とは、心臓のポンプとしての機能が低下して息切れしたり手足がむくんだりする病気です。心筋梗塞のように心臓の血管が詰まる病気から始まるものや、高血圧の治療をせずにほったらかしにしておくことで心機能が低下するものなどがあります。私がアメリカのテキサスに留学していた時に、病棟回診で聞かされていた心不全の原因の一つにシャーガス病という寄生虫の感染があります。メキシコのような亜熱帯に国境を接するテキサスでは必ず心不全の鑑別診断として上がっていたのですが、日本ではほとんど話題にもなりません。

    水前寺の「ろうきん」前にて