むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 正理湯(しょうりとう)

    正理湯(しょうりとう)という漢方処方があるのですが、あまり馴染みのある処方ではありません。日本中探しても薬局で売ってないし、ツムラなどのエキス製剤もありません。私がこの処方を教えてもらったのは、熊本の吉冨先生からなのですが、韓国でかなり頻繁に使われる処方だそうです。漢方は日本、中国だけでなく韓国でも盛んに使われています。御存知の通り韓国という国は総ストレス社会で、受験、就職に始まり一生を通してかなりのストレスがあるようです。そういう韓国の漢方医の先生が、ほとんどの患者さんに使って有効とされるのがこの正理湯なのです。

    どういった働きをするのかというと、気の巡りをよくしてうつっぽい症状を取り除いてくれます。特に消化器症状を改善します。ストレスから胃腸の調子が悪くなって、胃がもたれる、ゲップが出る、お腹が張る、食欲がない、などの症状があれば使って見る価値があります。

    先日当院に来院された患者さんで、お腹が張ってゲップが出て苦しい、これまでいろんな病院で胃腸薬をもらったけど治らない、と言って来院されました。ちょうどこの正理湯の適応かなと思って2週間分処方したところ、すっかり良くなったと言って来院されました。このように西洋薬でなかなか改善しなくても、漢方が不思議と良く効く場合もあるのです。

  • 不眠について

    不眠は一日の外来患者さんの中でもかなり多い訴えです。「最近眠れないんです」といわれたときに、単純に「では睡眠薬を出しましょう」というわけにはいきません。それは、患者さんごとに眠れなくなった原因が違うからです。

    職場のことや家庭内の問題で心配事があって眠れない人、自分や親の病気のことが気になって眠れない人、旅行などに行くと環境が変わって寝れないひと、夕食後寝てしまって、夜1時頃に目が冷めてそれから眠れない人などさまざまです。そういうなか、うつ病のような状態で眠れなくなった場合がありますから、睡眠薬で眠れるようにすれば解決、というわけにはいかないことが多々あるのです。

    また、以前は睡眠薬より安定剤のほうが軽いからいい、というふうに考えられていましたが、これは間違っていることが明らかになっています。睡眠薬は昔に比べて癖になりにくく安全なものが出てきています。それに比べて、デパスを始めとする安定剤は依存症になってやめられないし、将来的に認知症のリスクにもなります。今では睡眠目的にデパスを処方することは殆どありません。寝酒も睡眠にとってはあまりよくありません。睡眠が浅くなり、寝付いても途中で目が冷めやすいのがお酒の特徴です。依存になりやすく肝臓その他にも負担となりますから、寝るためにお酒を飲むのはおすすめできません。

    漢方薬で眠れるようにしてほしいという希望が時々あります。症状が軽い場合はそれも可能ですが、西洋薬ほどの効果はありませんから無理に漢方にこだわる必要はないと思います。まずはしっかり寝て疲れを取ることが先だと思うからです。

  • 頭痛の話

    頭痛はなかなか耐えられないものです。仕事や勉強にも差し支えます。偏頭痛では気分が悪くて吐いてしまうこともあります。時々(例えば風邪をひいたときに)出るような頭痛だと、イブのような頭痛薬でとりあえずやり過ごせばなんとかなりますが、週に何度も起こるような慢性頭痛となるとかなり厄介です。

    頭痛にはいくつかの種類があります。偏頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛などが一般的です。それ以外には脳梗塞や脳出血、くも膜下出血のような重篤な疾患に伴う頭痛もあります。また、今の季節に多いのが高血圧からくる頭痛です。頭痛があまりにひどいとCTやMRIを撮ってもらおうと思って病院を探すことが多いと思いますが、実際にMRIなどで診断がつくのは脳梗塞や脳出血、脳腫瘍といった病気で、一般的な頭痛に関しては画像で診断するというより画像で重篤な疾患がないことを確認するということになります。最終的には問診と診察で大体の診断はつきます。

    一般的な鎮痛剤でもある程度頭痛の治療はできますが、頭痛の種類によって治療方針が若干異なります。最近は偏頭痛に対してよく効く特効薬もありますが、実際には頭痛が起こってから飲む薬よりも、頭痛が起こりにくくする予防的な薬の方がいいと思います。先日当院を受診された学生さんは、頭の中で石ころが弾けるような頭痛が週に2−3日あるということで、学校に行っても早退する毎日だったそうですが、予防薬を飲み始めたら1週間後にはすでに頭痛薬を全く飲まないで済んでいるというくらい良くなった人がいます。また、鎮痛剤の使いすぎで逆に頭痛が起こってしまう薬物乱用型の頭痛というものがありますから、予防薬で鎮痛剤を断ち切ることができれば劇的に改善する場合があります。

    東京ではもうこんなに咲いている所がありました。

  • 血圧はオームの法則

    最近は朝晩の冷え込みが厳しいので、血圧が上がってしまう方も多いようです。寒いと血管が縮みますから血管抵抗が上がります。その結果、心臓からの心拍出量が一定だとすると血圧が上がるのです。中学校で習った電圧と電流に関するオームの法則(E=IR)と同じ原理です。

    では、塩分を摂りすぎると血圧が上がるのはなぜでしょう。これは、血液内の塩分濃度は一定になるように制御されているため、塩分摂取が多すぎるとそれに見合うだけの水分が体内に残ることになります。その結果、循環血液量が増加し、結果的に1回心拍出量が増えるため血管抵抗が一定だとしても血圧が上がります。

    逆に血圧を下げる方法を考えましょう。まず、塩分を制限することです。これは上に書いた血圧が上がる仕組みの反対ですから理解は簡単です。もう一つは血管抵抗を下げることです。コレステロールを管理して動脈硬化を防ぐこと、運動して血管に柔軟性を持たせること、そして痩せることです。血管は脂肪細胞に押しつぶされると抵抗が上がってしまいます、痩せる事で血管は広がりやすくなります。

    もう一つ血管の拡張・収縮を制御しているのが自律神経です。ストレスで縮み、リラックスで拡張します。また、寒いと縮み、温めると拡張します。そう考えると、高血圧は薬にばかり頼ることなく、塩分制限、ダイエット、ストレス回避、温めることなどで改善するということがわかりますね。

  • 気血水の話

    最近テレビで漢方関連の番組がいくつかあったのですが、それを見た患者さんが毎日のように来院されます。みなさん熱心にテレビを見て理解されていますので、すごく詳しくてびっくりします。

    漢方にも、日本で発達した古方という流派と、中国で発展した中医学の流派があります。またそれぞれ、どんな師匠について学んだかによって違う流派だったりします。茶道でいう表千家・裏千家のようなものです。診察の方法も、問診や脈診、舌診を重視する場合と、腹診(お腹を触って処方を決める)を重視する場合があります。流派ですからどちらが正しいというわけではありません。しかし、テレビでそういう診察風景をやっていると、それがスタンダードのような印象を受けますから、違った流派の診察を見ると違和感を覚えるかもしれません。

    ただし、流派は違っても漢方的な基本は共通しています。気血水という考え方は日本・中国で共通した理論です。体を構成する気血水という3つの要素があり、それぞれのバランスが健康を保っているのです。気が不足すると気虚といい、きつい、食欲がない、風邪をひきやすいなどの症状となります。気の量は十分あっても流れが悪くなるとのぼせ、カーと暑くなる、うつ状態、などの症状となります。例えば、倦怠感で来院した患者さんを見た時、気虚(気の不足)の場合と気滞(気の巡りが悪い)の場合とがあります。どちらの症状なのかを判断するのに脈を見たり舌を見たりするのです。決して西洋医学のように、血圧が高いから降圧剤、という感じの単純な図式にならないのが難しくもあり面白い点でもあります。