最近、新聞を開くと毎日のように熊大の小川学長のお顔を目にします。小川先生は私が大学病院に勤務していた頃、熊大病院循環器内科の教授でした。小川先生は60歳を過ぎた後、医学部長や国立循環器病研究センター理事長などを歴任され、熊大学長として戻ってこられました。TSMCの熊本進出と時期が重なり、熊大の存在感がいっそう高まっているのはご存知の通りです。
ふと思い出したのは、今から15年ほど前に行われた小川教授の還暦祝いのことです。赤いちゃんちゃんこ姿の教授を見て、「あのお厳格な先生も、こんな格好をされるんだ」と、印象に残ったのを覚えています。
あれから月日は流れ、私も今年で59歳。10月には還暦を迎える年男です。 あの頃の小川教授と同じ年齢になったとは、正直なところ、にわかには信じがたい感覚があります。
家族や親戚、そして両親からも「還暦のお祝いをさせてほしい」と強く言われていますが、自分の中ではまだ「ひよっこ」のつもり。定年や病気の噂、ましてや「人生の上がり」なんて言葉を口にする同級生を見ると、「何を年寄りじみたことを!」と反論したくなるほどです。
お祝いと言われること自体、どこか気乗りせず渋っていましたが、両親の強い願いもあり、ようやく「人生の節目」として受け入れる覚悟を決めました。
ひとりで歩んできたのではない
できれば還暦に気づかず通り過ぎ、気づいたら80歳を過ぎていた……そんな風に歳を重ねたかったのが本音です。しかし、こうして節目を突きつけられてみると、見えてくるものもあります。
客観的に見れば、こうして健康に恵まれ、情熱を持って仕事ができていることは、決して当たり前のことではありません。 大学まで学ばせてくれた両親、結婚してから今日まで私を支え続けてくれた妻、そして元気に育ってくれた子どもたち。
振り返れば、私は決してひとりでここまで歩んできたのではありません。家族や周囲の皆様の支えがあったからこそ、今の私があるのだと、改めて深く実感しています。
私にとって還暦は、ゴールではなく単なる「通過点」に過ぎません。70歳、いえそれ以上現役で走り続けるために、心身を整える一区切りだと思っています。
実は小川先生の経歴を拝見しても、還暦を過ぎてからのご活躍が本当に素晴らしいのです。「人生は還暦すぎてからでも、世界へ羽ばたくことができる」ということを自ら証明された、私にとって偉大なる目標となる先輩です。

