むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 出るものは止めないのが原則

    5月もいよいよ終わりを迎えますが、天気予報ではまた冷え込むとのこと。今年は寒い日が長く続いており、風邪の患者さんが毎日大勢来院されます。次から次へと風邪の症状ばかり——熱が出た、喉が痛い、咳が止まらない……同じ訴えが続きます。

    私自身なら、ビタミンCを摂って早めに休めば自然と良くなるのではと思ってしまいますが、皆さん風邪にとても神経質です。コロナであっても普通の風邪であっても、初期対応はさほど変わらないケースがほとんどです。ただ、2週間経っても改善しない場合には、やはり何かしら検査をして、必要な薬を使ったほうがよいかもしれません。

    咳についても誤解されがちです。咳は痰を体外に出すための重要な防御反応であり、単純に止めればいいというものではありません。喘息のように気道の過敏性が原因で咳が続く場合は、咳を止める治療を考えますが、痰が絡んでいる場合には、しっかり咳をして痰を排出しないと、肺の奥にたまって肺炎の原因になることがあります。

    学校や職場などで周囲に気を遣って咳を我慢している方も多く見受けられますが、「出るものを止めるのはよくない」という基本が忘れられている気がします。

    この「出るものを止めない」という考え方は、下痢にも当てはまります。傷んだ食べ物を食べたり、胃腸炎のウイルスに感染したときに下痢が起こるのは、体が異物を排出しようとする自然な反応です。無理に止痢薬で止めてしまうのは、理にかなっていません。とはいえ、下痢が1週間以上続き、脱水傾向や体力の消耗が著しい場合には、体力回復のために止痢薬を使うこともあります。状況に応じた対応が大切です。

    下痢について書いていて思い出しましたが、最近「大腸がんの半分近くは腸内細菌が作る物質が原因かもしれない」という報告を目にしました。記事を詳しく読んだわけではありませんが、以前から「便秘によって老廃物が腸に長く滞留することで、がんのリスクが高まる」と言われてきました。これを防ぐには、繊維質の多い野菜を摂り、便秘をしないようにすることが勧められてきました。その経験則に、科学的な裏付けが加わってきたのだろうと感じます。

    最近は「腸活」という言葉も流行っており、納豆、ヨーグルト、ヤクルトなどの発酵食品を積極的に摂って腸内環境を整えようとする動きが広がっています。これらは悪いものではありませんが、やりすぎには注意が必要です。

    「SIBO(小腸内細菌異常増殖症)」といって、食事のたびにお腹が張って苦しくなる状態があり、発酵食品の摂りすぎが原因になることもあります。そうした場合には、むしろ発酵食品を控えることで調子が良くなることもあります。

    「過ぎたるは及ばざるが如し」。体の自然な反応を理解し、必要なときにだけ手を加える。そのバランスを大切にしていきたいものです。