本日は漢方の講演でした。テーマは「漢方による『気』の治療」です。 当院には心療内科的なお悩みを抱えた方も多く来院されるため、気分の不調は決して珍しいものではありません。「抗不安薬や抗うつ薬に頼らず、漢方で治療したい」というご希望も多く、漢方が活躍する場面は多岐にわたります。また、西洋薬を最小限に抑え、漢方を併用することで症状を安定させるケースも増えています。
本日は、臨床現場でよく用いられる4つの代表的な処方について解説しました。
1. 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
当院で使用頻度が非常に高い処方です。職場や子育てのストレス、月経前症候群(PMS)など、イライラや気分の落ち込みが強い際に用います。心が穏やかに整い、睡眠の質の改善も期待できます。
2. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
「体がだるい」「食欲がない」といった、エネルギー不足の状態に用います。過労による疲労蓄積や、うつ状態で気力が湧かないとき、また大病後の体力回復にも適しています。昨年は新型コロナ後遺症による強い倦怠感を訴える方にも、この処方が大きな力を発揮しました。
3. 加味帰脾湯(かみきひとう)
漠然とした不安が強く、不眠に悩む方に適した処方です。当院開設当初は熊本地震の直後で、余震の恐怖で眠れないという患者さんに非常に有効でした。また、今の時期ですと「子どもの受験が心配で眠れない」とか、「子どもが進学や就職で家からでていき、さみしくなった」という親御さんの不安感の緩和にも効果が期待できます。
4. 加味逍遙散(かみしょうようさん)
更年期障害の代表格ですが、実際には幅広い年代の方に用いられます。気分の浮き沈みが激しく、顔や頭に熱がこもって汗をかく(ホットフラッシュ)一方で、足は冷えるという「上熱下寒(じょうねつげかん)」の状態に最適です。循環器疾患を抱える女性患者さんで、この処方によって血圧が安定した症例も経験しています。
本日はこれらの処方を通し、漢方がどのように「気の巡り」を整え、心身を癒していくのかを解説させていただきました。日々の診療においても、これらの漢方の力を活かして、希望に沿った治療を提案していけたらと考えています。

