むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 薬が手に入らない世の中

    いよいよ10月に入ります。暑かった夏もやっと涼しくなり、秋らしさが少しずつ感じられるようになってきました。クリニックでは10月からインフルエンザワクチンの接種が始まります。数年前はワクチンが品薄で、希望する皆さんに行き渡らないこともありましたが、今年はそうした情報はなく、順調に製造が進んでいるようです。ただ、数年前のように、製薬会社が突然「製造過程で不具合が見つかった」として出荷を止め、医療現場が混乱することも少なくありません。

    実際、今はポリフル(過敏性腸症候群による下痢に使う薬)、ガナトン(胃の動きを助ける薬)などが入手困難で、代替もなく対応に苦慮しています。さらに昨日聞いた情報では、循環器の薬であるミケランが製造中止になるとのことでした。これは動悸を抑える作用があり、人前で緊張する方にも処方していた薬です。多くの患者さんにとって大切な薬だっただけに、今後の代替治療に不安を感じています。

    こうした薬不足の背景には、高齢化による医療費の増加があります。厚労省はそれを抑えるため薬価を限界まで引き下げており、製薬メーカーも次々と製造中止を発表しています。それが医薬品不足に拍車をかけているのです。さらに、薬の原料となる薬品原末の多くを中国に依存していることも供給不安定の要因です。ものづくりで世界をリードしてきた日本で、ここまで製造業が衰退しているのは残念でなりません。

    最近は何でもかんでも「コスパ」優先です。企業は一時的には利益を得られるかもしれませんが、長期的には衰退を招く危険があります。医療も産業も、目先の効率だけでなく未来を見据えた取り組み(研究開発への投資)が求められているのだと感じます。

  • ドクターショッピングは医療費の無駄使い

    昨夜は寝ているときにかなり雨が降ったような気がします。「あれ、降っているのかな」と思ったことだけは覚えています。朝、新聞を取りに玄関先に出ると、やはり雨の痕跡があり、少し涼しく感じました。

    このところ、コンスタントに発熱患者さんは来院されますが、インフルエンザはほとんどいません。コロナも以前に比べると減った印象があります。2週間ほど前は胃腸炎が立て続けに見られましたが、大流行とまではいかずに収まってきました。その代わりといっては何ですが、インフルエンザでもコロナでもない風邪が増えています。

    風邪症状があれば診断はつきやすいのですが、発熱以外に何も症状がない患者さんも数名来院されました。念のため採血をしてみても、多少の炎症反応がある以外には特に異常所見はありません。このような原因不明の発熱では、胆嚢炎や総胆管結石、腎盂炎、前立腺炎などが鑑別に挙がります。ただし、これらはよく聞けば腰の痛みなど何らかの症状を伴うことが多く、まったくの無症状は少ないと思います。高齢者では痛みに気づきにくいこともあるかもしれませんが、それでも完全に症状がないというケースは稀です。

    とはいえ、こうした原因不明の発熱患者さんをどう扱うかはとても悩ましい問題です。混雑している外来ではゆっくり検討したり精密検査を進めたりする時間はなく、長くとも5分程度で結論を出して方針を立てなければなりません。

    こういう発熱患者さんも、一日待てば下痢が出たり咳が出たりと、診断の手がかりになる症状が現れることがあります。そうした場合を見越して「胃腸炎の初期かもしれないので、この薬を出しておきます」といった先回り処方をすることもあります。しかし本来であれば、時間をおいて再診いただきたいところです。ところが最近の患者さんはとても移り気で、少しでも治らなければ翌日には別の病院を受診されることが少なくありません。その結果、同じような検査を一から受けることになり、医療費の無駄遣いにつながることも多いのです。

    「医療費はちゃんと払っているから問題ない」と思われるかもしれませんが、自己負担は3割で、残りの7割は社会全体の保険料でまかなわれています。つまり、誰かが汗水流して働いて収めた社会保険料を使わせてもらっているのです。ドクターショッピングは医療経済上の無駄だけでなく、薬を複数の医療機関から処方されることで副作用のリスクが増し、どれを飲めばよいのか分からなくなったり、責任の所在が不明確になったりする危険もあります。

    そういうわけで、一度かかったら一定期間はあちこち受診せず、同じ医師に経過を見てもらうのが安心にもつながり、医療全体にとっても望ましいと思います。

    益城の「四季の味 やまもとや」今回の天丼にはワカサギの天ぷらが沢山乗っていました。他には、大きなエビ、穴子、カボチャ、ピーマンなど。美味しかった!

  • 医療業界は物価上昇についていけない

    先週末は息子夫婦が帰省してきたりして慌ただしかったですが、今週末は特に用事もなく、のんびり過ごせました。こういう息抜きの時間は本当に貴重です。シルバーウィークの祝日が2週にわたったため、変則的に忙しい日が続きましたが、今週はやっと通常通りのペースに戻りそうです。

    もうすぐ、私が主催する「東方医学研修会」という漢方の勉強会があります。私自身も演者の先生の前座として30分ほど講演する予定なので、大急ぎでスライドを作っているところです。今回は、ChatGPTの力を借りて、いかに時短でスライドを作れるか実験的にやってみようと思っています。といっても凝ったイラストを作るわけではなく、アウトラインを作る段階を手伝ってもらい、一気に仕上げるつもりです。ブレインストーミング(ブレスト)と言って、みんなでアイデアを出し合う会議がありますが、今ではAIの力を借りて「ひとりブレスト」ができる時代になりました。

    話は変わりますが、漢方は西洋医学的な病名よりも「証(しょう)」を重視します。証とは、表裏・寒熱・虚実といった軸で病態を表すもので、もう一つの重要な視点が「気・血・水(き・けつ・すい)」です。私は日々の診療の中でこの「証」を見立てて漢方薬を処方しています。

    先日、家のゴンが咳をしていたので麦門冬湯を飲ませたところ、咳が止まりました。ところがしばらくして再び咳が出るようになったため、犬にも人と同じように「証」が重要なのかを確かめたくなり、今度は風邪の咳に使う「参蘇飲」を試してみました。しかし、結果はまったく効果なし。やはり最初の見立て通り、ゴンの咳には麦門冬湯が合っていたようです。

    ところで、医療費や調剤薬局での支払額は、国が定めた「保険点数」によって全国一律に決まっており、自由に値上げや割引をすることはできません。国は医療費の高騰を理由に、診療報酬の改定のたびに物価上昇を無視して医療費抑制に力を入れています。その影響で、多くの医療機関が赤字に陥っており、「医療崩壊が目前」とまで言われるようになりました。物価が上がれば給料も上がらないと生活が苦しくなりますが、医療・介護業界では収入が上がらない仕組みのままで、人手不足に拍車がかかっています。せめて一般企業並みの給料を払いたくても、それが難しい状況です。

    今後も高齢化が進み、医療や介護のニーズが減ることはありません。ちょうど今、首相選が行われています。私たちに直接選ぶ権利はありませんが、誰もが老後を安心して過ごせる社会をつくってほしいと強く願います。

    トルティーヤが揚げてあるタコスなんて初めてでした Piggy’s BBQ

  • 後頭神経痛という頭痛の話

    このところ天気が不安定で、晴れたかと思えば雨が降ります。ついこの間まで激しい雷雨でしたが、雷が鳴らないだけまだマシかもしれません。それでも、患者さんに話を聞くと、天気が悪いと頭痛やめまいがひどくなると訴える方が大勢います。

    今日診察した頭痛の患者さんは、耳鼻科で検査して「異常なし」、脳神経内科でMRIを撮っても「異常なし」。仕方なく市販の頭痛薬を毎日服用してしのいでいる、というお話でした。私が頭痛の患者さんを見るときは、まず丁寧に問診を行います。一次性頭痛(偏頭痛や緊張型頭痛など)では、画像検査で明確な異常が見つかることはほとんどありません。脳出血のような頭痛は通常、突然で激烈な痛みを伴い明らかに区別できますし、脳梗塞や脳腫瘍であれば頭痛以外の神経症状が出ることが多いです。

    MRIで副鼻腔炎が見つかることはありますが、慢性副鼻腔炎(蓄膿)は無症状の方にもよく見られ、それが本当に頭痛の原因なのかは別問題です。検査で見つかればまず治療する、という流れになることもありますが、必ずしも検査所見=症状の原因とは限りません。

    話はそれますが、胃カメラをしても無症状の人に慢性胃炎や逆流性食道炎の所見が見つかることがあり、所見自体は正しいとしても、その所見と患者さんの自覚症状に明確な関連がないことが多々あります。検査で何か見つかると、とりあえずプロトンポンプ阻害剤(PPI)などの胃薬が処方されることが一般的です。皆保険制度のおかげで高度な検査を受けやすい反面、不要な検査や薬が増え、国の医療費が膨らむ原因になっていると思います。

    冒頭の頭痛の患者さんに戻ります。検査が異常を示さず、市販薬を毎日使っていると聞くと、まず念頭に浮かぶのは薬物乱用頭痛です。鎮痛薬の過剰使用が逆に頭痛を悪化させることがあります。とはいえ、決めつけずに詳しく問診を続けると、天候との関連はなさそう、痛みはズキズキに近い、肩こりがある、痛みは左後頭部で右は痛くない、ブラッシングで痛むのでそっと整える、といった情報が集まりました。

    これらの所見を総合すると、後頭神経痛(後頭神経に由来する神経痛)と判断できました。こうした神経痛は一般的な頭痛薬で全く効かないわけではありませんが、後頭神経痛に有効な薬を用いる方が効果的なことが多いです。今回はその方向で薬を処方し、経過を見ていただくことにしました。

    結論として、短い診察時間の中でも要領よく話を聞けば、多くの場合で診断に近づけます。検査は大事ですが、問診で得られる情報こそが診断の鍵となることを、改めて感じた一例でした。

    ロードスター乗りの聖地と言われている某所

  • 肺吸虫の患者さん

    当院には外国人の患者さんも多く見られます。以外にも、中国や台湾の方は少なく、英語の先生(アメリカやイギリス、南アフリカなど)が多く、つぎにベトナムやミャンマー等東南アジアのからの来日患者さんです。数ヶ月前に発熱と胸痛で来院されたミャンマー人の患者さんは、レントゲンを取ったら片肺が真っ白でした。真っ白というのは肺炎ではなく、肺の外に水が溜まった状態です。胸膜炎で水が溜まって痛む例はよく見ますが、片肺全体に水が溜まった状態というのは珍しく、痛みも強かったので日赤に紹介しました。今日その経過報告の手紙が届きました。

    日赤では胸腔穿刺(針を刺して水を抜く)をしたところ、溜まっていたのは水ではなく膿でした。その中からインフルエンザ桿菌が検出されたとのことで、細菌性胸膜炎だったわけです。ちなみにインフルエンザ桿菌はウイルスのインフルエンザとは関係ありません。日赤の先生は更に、検査を進め、膿胸を起こした基礎疾患を探り当て、肺吸虫という寄生虫が関与していることを見つけました。これがすべての原因だったわけです。日本人で肺吸虫になる例は殆ど見たことありませんが、東南アジアからの来日患者さんではこういう例もあるということです。日赤の先生が診断に至ったきっかけは、患者さんが生のサワガニをたべる習慣があるという話を聞き出したことからだそうです。やはり、幅広い内科の知識と問診力は正確な診断と治療に必須だとつくづく感心したところでした。皆さん、サワガニ(淡水のカニ)を生で食べることはないと思いますが、気をつけましょう。また、最近はジビエも食される事があると思いますが、しっかり加熱したものを食べるようにしましょう。