老人ホームを中心に訪問診療をしています。10施設以上訪問しているので、それぞれのホームのいいところ悪いところがだんだん見えてきます。良し悪しというのは一般的な話の場合と、入居者さんと施設の相性の場合があります。例えば、寝たきりに近いお年寄りの場合、看護や介護の体制が充実している方がいいし、元気で活動的な場合は買い物などにでかけたり室内でお酒を嗜んだりできる自由度の高い方がいいと思われます。したがって、同じ高齢者でもその時々で適した施設が異なってくると考えられます。
また、老人ホームを決めるのはお年寄り本人である場合より、家族が決める場合の方が多いような気がします。すると、お年寄りが住み慣れた町をはなれて子供の住むところの近くや子供の職場の近くなどが候補となります。また、施設は良かったけど毎月の支払いが高すぎて断念するという場合や、評判のいい施設は常に満室で空いていないという場合もあります。とにかくいろんな事情で入居先が決まってきます。
事情はともあれ、90歳位になって住処を引っ越すのはとても大変です。体力的な問題よりも精神的なものが大きいのです。介護してくれる人がガラッと変わり、食事やデイサービスなどの内容もかわり、お風呂の設備も変わる。ものがどこにいったかわからない、誰に何を頼んだらいいかわからない、お風呂やトイレの勝手が違うと転んだりするリスクになる、などなど。そして、施設を移ったお年寄りが1ヶ月もしないうちに亡くなったなんて話をよく聞きます。高齢者の転居は十分下調べをして慎重にしていただきたいものです。

