富山といえば、昔から「富山の薬売り」で有名です。薬の文化が根付いた土地でもあり、富山大学医学部には、国立大学として早い時期から漢方医学の講座が開設されました。そして現在に至るまで、富山大学は日本の漢方医学をリードするアカデミックな場所の一つです。当然、日本中から漢方を勉強したいという先生方が富山大学に集まっていますし、優秀な先生方もたくさんおられます。私たち漢方を勉強している医師にとっては、いわば憧れの場所でもあります。しかし、九州にいるとなかなか富山まで見学に行ったり、直接勉強しに行ったりするのは簡単ではありません。
私もこれまでは、富山大学の先生方が書かれた本を購入して、それを読んで勉強するというのが主な方法でした。ところが今日は、診療が終わってから富山大学の漢方診療科の先生によるウェブセミナーに参加しました。
最近では、このようなウェブ講演会を定期的に開催していただけるようになり、自宅にいながら富山大学の先生方の講演を聞いて勉強することができます。これは本当にありがたいことです。
昔だったら、遠く富山まで出向いていき、国内留学という形で先生のもとに弟子入りしなければ教えていただけなかったような漢方の知識や診療のノウハウを、今では自宅にいながらウェブで学ぶことができます。なんと便利な時代になったことでしょう。やはり、本を読んで自分で勉強するのと、実際に先生の話を直接聞いて勉強するのとでは、理解の深さがかなり違います。
先生がどこを重要だと考えているのか、実際の診療ではどう使っているのか、といったことは、本を読むだけではなかなか分かりません。そういう意味でも、このようなウェブセミナーのおかげで、私自身の漢方診療も少しずつレベルアップしてきたように感じています。このような時代になって本当に良かったと、つくづく思います。
ところで、「恩送り」という言葉をご存じでしょうか。「恩返し」という言葉は昔からよく使われます。お世話になった人に、直接その恩を返すという意味です。
しかし、現実には、誰かに受けた恩をその人に直接返すというのは、なかなか難しいものです。例えば、先ほどの富山大学の先生方からウェブセミナーで教えていただいたことについて、私はとてもありがたいと思っています。しかし、私がその先生方に直接何かをして恩返しをする機会は、そう簡単にはありません。
そこで「恩送り」という考え方があります。
自分が受けた恩を、その人に直接返すのではなく、次の人へ送っていくのです。富山大学の先生方に教えていただいたおかげで私の漢方の知識や診療技術が向上したとすれば、今度は私が熊本から漢方の講演をしたり、漢方を勉強したいという若い先生方に、自分が学んだことを伝えたりする。そうすれば、富山で受けた恩を、今度は熊本から次の世代へ送っていくことができます。
これは漢方に限った話ではないと思います。
自分が誰かから教えてもらったこと、助けてもらったこと、育ててもらったこと。それを、今度は自分が別の誰かに伝えていく。そうすることで、受けた恩が次の人へ、さらにその次の人へとつながっていきます。直接の「恩返し」ができなくても、「恩送り」なら、いつでもできます。
私も、これまで多くの先生方から漢方を教えていただきました。その恩を忘れずに、今度は自分が後輩の先生方にできるだけ伝えていく。そうやって、自分が受け取ったものを次の世代へ渡していくことが大切なのではないかと思っています。
