むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 「検査で異常なし」は「病気ではない」と言っていいのか?

    まず、お盆休みのお知らせです。

    当院は、8月11日(火・祝)の「山の日」を除き、8月13日(木)・14日(金)・15日(土)が休診となります。

    ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

    今週はお盆休みもあるため、駆け込みで大勢の患者さんが来院されました。朝からぶっ通しで、最終的には110人ほどの来院となりました。これほどの人数になると、お一人お一人にゆっくり時間をかけて診察することは、なかなか難しくなります。

    それでも、新患のご相談もあります。

    中には、「これまでいくつもの病院にかかったけれど、なかなか治らなかった」という、複雑な症状を抱えて来院される方もおられます。そういった場合には、できるだけ丁寧にこれまでの病歴を伺い、検査結果なども確認しながら、その方にとってより良い治療法を提案するよう努めています。

    また、「心配なので検査をしてほしい」というご希望の方もおられます。患者さんによって、求めているものはそれぞれ違います。症状を治してほしい方、病気がないか調べてほしい方、薬を調整してほしい方、あるいはこれまでの診断についてもう一度考えてほしい方。できる限り、それぞれのニーズに応えられるよう心がけています。

    「異常なし」と言われたけれど……

    いくつもの病院を受診して、「検査では異常ありません」と言われたものの、症状が続いているため納得できず、もう一度診てもらいたいという患者さんはよくおられます。

    ここで私が不思議に思うのは、

    「検査をして異常がなかったから、何もない」と言い切ってしまってよいのだろうか、ということです。例えば、「足がしびれて痛い」という患者さんがいたとします。症状から坐骨神経痛が疑われる場合でも、レントゲンを撮って骨に異常がなかったから、「坐骨神経痛ではありません」と説明されてしまうことがあります。もちろん、脊椎の変形や椎間板の問題など、画像検査で原因が見つかることもあります。しかし、神経症状の原因が必ずしもレントゲンに写るとは限りません。筋肉や腱などの軟部組織の問題や、神経そのものの障害など、単純なレントゲン検査では評価できないものもあります。実際、筋肉の緊張や周囲の軟部組織の問題が症状に関係している場合には、整体や鍼治療などで筋肉の緊張が改善することで、しびれや痛みが軽くなることもあります。

    つまり、「レントゲンで異常がなかった」ことと、「症状の原因が存在しない」ことは同じではありません。検査には、それぞれ得意なことと、分からないことがあります。

    同じことは、採血検査にも言えます。

    採血で異常値が出なかったからといって、必ずしも問題がないとは限りません。

    例えばコレステロールの場合、高ければ動脈硬化などとの関連から注意されることが多い一方で、「低い」ということについては、それほど問題にされないことがあります。

    しかし、総コレステロールやLDLコレステロールが著しく低い場合には、甲状腺機能亢進症、肝疾患、低栄養など、背景に別の問題が隠れている可能性があります。また、ASTやALTなどの肝酵素についても、「高い」場合には肝障害などを疑いますが、低値だけを見て病気があると判断することはできません。一方で、極端に低い値が続いている場合には、栄養状態や筋肉量など、他の情報と合わせて考える必要があることもあります。つまり、検査値は「正常だから大丈夫」「異常だから病気」という単純なものではありません。患者さんの症状や身体所見、既往歴、生活背景などと検査データを合わせて、全体として評価することが大切です。

    データだけではなく「人」を診る

    最近の医療では、臓器別あるいはデータ重視の傾向が強くなっています。一方で、検査機器や専門性が高度になるほど、「この臓器には異常がない」「この検査値は正常」というように、部分的な評価に偏ってしまうこともあります。

    その一方で、「どこに問題があるのか、よく分からない」という患者さんを最初に診て、全身を総合的に評価する役割も重要です。最近では「総合診療科」という、臓器を限定せずに患者さんを全体として診る専門領域も広がってきました。私は、これからのプライマリ・ケアにおいては、このように患者さんを一つの臓器や一つの検査値だけで判断せず、全身をトータルに診ることのできる医師が、ますます重要になってくるのではないかと思っています。

    「検査で異常なし」と言われても、症状がある。そんなときには、「異常がない」と「何も問題がない」は同じではないということを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。検査結果だけを見るのではなく、その人の症状と体全体を見ながら考えていく。それが、私が日々の診療で大切にしていることの一つです。

    チャットGPTでイラスト作成。短時間でデータを把握し、鑑別診断、治療方針、具体的な処方の組み立てなどを考えていると、ゆっくり患者さんの顔を見てお話する暇がない現実(反省を込めて)

  • 通販マウスウォッシュ

    いよいよ来週はお盆休みの週になります。

    当院は、8月11日(火・祝)の「山の日」の他、8月13日(木)・14日(金)・15日(土)が休診となります。

    薬が切れそうな方は、休診期間にかからないよう、どうぞお早めに受診されるようお願いします。

    私はというと、この日曜日は地域医療センターの当番で、救急外来の勤務をする予定です。

    なぜか私は、地域医療センターの当番がしょっちゅう回ってくるような気がします。医療センターの方からも、頻繁に私に声をかけて来られるような気がしますが、大事な仕事でもありますので、頼まれたら基本的に断らず、全部お引き受けしています。

    最近は、コロナやインフルエンザの患者さんはほとんど見かけなくなりました。一方で、熱中症やいわゆる夏風邪で熱が出たり、何となく体調が悪いという方はよく来られます。また、先日の地震の後から、不安が強くなったり、眠れなくなったりして体調を崩している方も増えてきました。

    そのため、明日の救急外来も、熱中症や夏風邪だけでなく、地震後の不安や不眠などをきっかけに体調を崩された方が、意外と多く来院されるのではないかと思っています。

    他の病院で働くと大変なこと

    自分のクリニックではなく、他の病院で仕事をするというのは、思っている以上に大変です。

    まず、スタッフの名前もよく分かりません。

    電子カルテの使い勝手も、普段使っているものとは違います。診療そのものはいつもと同じようにできますが、カルテを入力したり、検査をオーダーしたり、薬を処方したりといった「診療以外の部分」に、いちいち時間がかかってしまいます。

    昔は紙カルテでしたから、診察して、必要なことを書いて、薬を出して……という具合に、かなり手早く仕事ができました。ところが今は、何をするにも電子カルテに入力しなければなりません。さらに困るのが、薬の問題です。普段、自分のクリニックで使っている薬なら、どの薬をよく使うのか、どんな薬が採用されているのか、ある程度頭に入っています。ところが他の病院では、どんな薬が採用されているのか、在庫はあるのかまでは分かりません。

    とりあえず電子カルテに入力して処方してみるのですが、しばらくすると薬局から、

    「この薬は在庫がありません」

    などと電話がかかってくることがあります。

    そうなると、また別の薬に変更したり、確認したりしなければなりません。

    こうして考えてみると、何と言っても、自分のクリニックで仕事をすることほど働きやすいことはありません。他の病院で働いてみると、普段は気にも留めていなかったことが、実は仕事をスムーズに進めるために大きな役割を果たしていることに気づきます。

    通販のマウスウォッシュ

    さて、話は変わります。

    先日、通販会社からある商品を購入したところ、今日その商品が届きました。商品を取り出してみると、箱の中には商品とは別に、大量の通販カタログやチラシ、サンプルなどが入っています。せっかくなので、一つ一つ眺めていました。その中に、歯周病予防のマウスウォッシュの広告がありました。どうやら生薬エキスなどを配合した商品らしく、1回分のサンプルが入っています。

    広告には、「歯磨きでは取れない大量の汚れが取れてびっくりするので、最初は一人でいるときに使ってみてください」といった、かなり大げさなことまで書いてあります。

    「そんな……」と思いながらも、せっかくサンプルがあるので試してみることにしました。口に含んで、20秒ほどクチュクチュ。そして、白いお皿にペッと吐き出してみました。すると……。

    なんと、広告の写真とそっくりな、大量の茶色っぽいカスが出てきました。

    「これはすごい!」思わずそう思ってしまいました。

    ただ、ここで疑問が出てきます。

    これは歯垢なのでしょうか?それとも、口の中に残っていた食べかすなどが集まったものなのでしょうか?正体はよく分かりません。ただ、一つだけ確かなことがあります。使用した後は、確かに口の中がすっきりして、きれいになったような感じがします。

    「これは面白いな」と思いました。

    ところが、商品を調べてみると、どうやら1か月分を毎月購入する定期購入のシステムが基本のようです。

    1回分のサンプルを試して「これは面白い!」と思ったところまではよかったのですが、毎月購入するとなると、ちょっと考えてしまいます。いい商品ですが、購入するかどうか、まだ決めかねています。

    それにしても、私の口からでてきた大量の茶色いカス。いったい、あれは何だったのでしょうか。ちょっと気になるところです。

    イラストはチャットGPTで作成

  • 頻尿にはいろいろな原因がある

    私は毎朝5時に起きています。しばらくは朝5時頃にはすでに明るかったのですが、今日は起きてみるとまだ暗く、夜のような雰囲気でした。台風の接近で空が曇っていた影響もあるのかもしれませんが、季節が少しずつ変わってきたことを実感します。

    朝、外へ出ると、この数日の厳しい暑さは少し和らぎ、涼しい風が吹いていました。ちょうど暦の上では立秋。秋の気配を感じる朝でした。

    ところが、昼の訪問診療では一転してかなりの蒸し暑さでした。昨日以上に湿度が高く、体にこたえる暑さだったように思います。

    少し前までは最低気温が30℃近く、日中は40℃近い異常な暑さが続いていました。これからは朝夕が少しずつ涼しくなり、一日の寒暖差が大きくなってくるのでしょう。まだまだ暑い日は続きますが、朝夕に少しでも涼しい時間帯があると、ほっとする気持ちになります。

    一方で、寒暖差が大きくなると風邪をひく方も増えてきます。熱中症だけでなく、季節の変わり目の体調管理にも気を付けたいですね。

    さて、昨日のブログでは「過活動膀胱」について書きました。

    過活動膀胱とは、「急にトイレに行きたくなり、我慢するのが難しい」という尿意切迫感を主な症状とする病気です。これに頻尿や夜間頻尿を伴い、さらに尿漏れ(切迫性尿失禁)を伴うこともあります。

    尿漏れは、急に強い尿意を感じ、トイレへ向かう途中で間に合わず漏れてしまう状態です。女性に多くみられますが、男性にも起こります。

    過活動膀胱と診断するうえで最も重要なのは、この尿意切迫感があることです。夜間頻尿だけでは過活動膀胱とは診断できず、他の病気が隠れていないかを調べる必要があります。

    泌尿器科では、「排尿日誌」をつけてもらうことがよくあります。排尿した時刻や尿量、水分摂取量などを数日間記録していただき、診断や治療方針を決める際の参考にします。

    当院は泌尿器科専門ではありませんので、すべての患者さんに排尿日誌をお願いしているわけではありません。しかし、症状によっては専門医をご紹介し、より詳しい検査をお願いすることもあります。

    それでも、男性・女性を問わず「夜中に何度もトイレに起きる」という相談は非常に多くあります。

    夜間に1回程度起きる方は決して珍しくありません。しかし、一晩に3回以上起きるようになると睡眠が十分にとれず、翌日の眠気や疲労につながることが多いため、治療を検討することが多くなります。

    夜間頻尿にはさまざまな原因があり、必ずしも過活動膀胱とは限りません。

    ① 睡眠の問題

    眠りが浅い方は、夜中に目が覚めた際に尿意を感じ、そのままトイレへ行くことがあります。この場合は膀胱ではなく睡眠の質が問題となっていることがあり、睡眠を改善することで夜間に起きる回数が減ることがあります。

    ② 足のむくみ

    昼間に長時間立ち仕事をしたり、逆に長時間座ったままでいたりすると、足に水分がたまり「むくみ」が生じます。

    夜に横になると、その水分が血液中へ戻り、腎臓で尿として排泄されるため、夜間頻尿の原因になります。

    デイサービスなどで長時間座って過ごす高齢者や、立ち仕事の多い方によくみられます。

    ③ 心不全などによるむくみ

    心不全や腎臓病などで全身にむくみがある方も、夜間頻尿になりやすくなります。また、高血圧や心不全の治療で利尿薬を服用している場合には、その影響で尿の回数が増えることがあります。

    ④ 糖尿病

    糖尿病のコントロールが悪く、血糖値が非常に高い場合には、糖と一緒に多くの水分が尿へ排泄されるため、頻尿になることがあります。

    また、最近よく使われる「SGLT2阻害薬」は、尿中へ糖を排泄する作用を利用した薬です。そのため、服用初期には尿量が増え、頻尿を自覚する方もおられます。

    このような夜間頻尿は、過活動膀胱ではなく、それぞれの原因となる病気を治療することが大切です。

    そのほか、頻尿の原因として代表的なのが膀胱炎です。

    膀胱炎では、頻尿に加えて排尿時の痛みや残尿感、尿が濁るなどの症状を伴うことが多く、検尿によって比較的容易に診断できます。

    このようなさまざまな病気を除外したうえで、過活動膀胱と診断された場合に、初めて過活動膀胱の治療薬を使用します。

    頻尿は「年齢のせい」と思われがちですが、その背景には治療できる病気が隠れていることも少なくありません。

    「夜中に何度もトイレに起きる」「急に尿意が来て困る」「尿漏れが気になる」といった症状がある方は、我慢せず一度ご相談ください。

    ChatGPTでイラスト作成

  • 過活動膀胱の勉強会に参加しました

    今日も外来と訪問診療を合わせて約120名の患者さんを診察しました。

    これほど忙しくなると、診療以外の仕事がなかなか進みません。事務作業も山積みですが、今はとにかく目の前の診療を優先しています。

    診療終了後は急いでクリニックを出て、「過活動膀胱」の勉強会に参加しました。

    過活動膀胱とは、急に尿がしたくなって我慢できない(尿意切迫感)、トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)、時には尿漏れ(切迫性尿失禁)などを起こす病気です。女性に多いイメージがありますが、男性にも決して少なくありません。当院でも頻尿の相談を受けることは多く、薬物治療を行っています。しかし、本来は泌尿器科が専門とする分野ですので、より良い診療のためにも定期的に知識をアップデートすることが大切だと考えています。

    ところが勉強会の最中、震度4程度と思われる地震が発生しました。

    「もう大きな余震は来ないだろう」と少し油断していたところだったので、突然の揺れには驚きました。

    それでも演者の先生は落ち着いたもので、一瞬講演を中断しただけで、10秒も経たないうちに「では続けます」と何事もなかったかのように講演を再開されました。その冷静な対応には感心しました。幸い大きな被害もなく、勉強会は無事終了しました。

    会場を出ると、自転車置き場の自転車がすべて倒れており、非常に強い風が吹いていました。九州南海上には強い台風が接近しているとのことです。

    現在の予報では九州への上陸はないようですが、かなり勢力の強い台風とのことで、すでにこれだけの風が吹いていることを考えると、今後数日は雨風への十分な警戒が必要だと思います。

    地震が続き、さらに台風まで接近しているという大変な状況ですが、皆さんも十分注意され、どうか怪我などされませんようお気を付けください。


    過活動膀胱は「年齢のせい」と諦めないでください

    頻尿や尿漏れは、「年齢のせいだから仕方がない」と諦めている方が少なくありません。

    しかし最近は効果の高い治療薬も増えており、適切な治療によって症状が大きく改善するケースも多くあります。お困りの方は、一人で悩まずぜひご相談ください。

    男性と女性では背景が少し異なります

    ■ 男性の場合

    男性では、加齢に伴う前立腺肥大が背景にあることが少なくありません。

    前立腺が大きくなると尿の通り道が狭くなり、膀胱に負担がかかることで過活動膀胱の症状が現れることがあります。そのため、過活動膀胱だけを治療するのではなく、前立腺肥大の有無を調べ、必要に応じてその治療も並行して行うことが重要です。

    ■ 女性の場合

    女性では、出産や加齢、閉経などに伴って骨盤底筋が弱くなったり、子宮脱や膀胱脱などの骨盤臓器脱を合併したりすることがあります。こうした変化が過活動膀胱の症状に関係している場合があります。

    もちろん、すべての女性がこのような原因というわけではありませんが、背景を考えながら治療を進めることが大切です。

    骨盤底筋トレーニングは大切な治療の一つです

    泌尿器科では、骨盤底筋体操(骨盤底筋トレーニング)の指導が行われます。

    骨盤底筋は普段あまり意識して使うことのない筋肉です。そのため、正しい方法で継続して行うことが重要になります。専門の医療機関で指導を受けたり、信頼できる動画などを参考にしたりすると、より効果的です。

    骨盤底筋トレーニングは、過活動膀胱に対する基本的な治療の一つです。ただし、症状が強い場合には、薬物療法などを組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

    最近は座るだけで治療できる機器も

    最近では、電気刺激や高密度電磁刺激を利用して骨盤底筋を刺激し、筋力の向上や症状の改善を目指す医療機器も登場しています。自分で体操を続けることが難しい方にとっては、一つの選択肢となるかもしれません。

    男性に多い「追っかけ漏れ」

    男性では、排尿後に「もう出し切った」と思った後で、下着に少量の尿が漏れてしまう「追っかけ漏れ(排尿後尿滴下)」もよく見られます。

    これは加齢などによって骨盤底筋が弱くなり、尿道内に残った尿を最後まで押し出せないことが主な原因です。

    骨盤底筋トレーニングは有効ですが、効果が現れるまでにはある程度時間がかかります。

    そこで、すぐに実践できる方法としておすすめなのが、排尿後に会陰部(肛門と陰嚢の間)を指で前方へ押し上げるように軽く圧迫する方法です。尿道内に残った尿を押し出しやすくなるため、追っかけ漏れの予防に役立ちます。

    頻尿や尿漏れは、「年齢のせい」と諦める必要はありません。

    生活習慣の見直しや骨盤底筋トレーニング、薬物療法などを組み合わせることで、多くの方で症状の改善が期待できます。

    「トイレが近くなった」「急に尿意が来て困る」「尿漏れが気になる」といった症状がありましたら、一人で悩まずお気軽にご相談ください。

    尿意切迫は過活動膀胱の症状です チャットGPTでイラスト作成

     

  • 風邪か熱中症か判断が難しい場合もある

    地震から1週間が経過し、10年前の本震のような大きな地震が来るかもしれないという警戒期間も、無事に過ぎました。

    そのためかどうかは分かりませんが、今日の外来患者さんはいつもにも増して多く、忙しい一日でした。訪問診療の患者さんを合わせると、なんと120名にも達しました。

    来院された皆さんとお話ししてみると、意外にも「調子いいです」と元気に答えてくださる方が多く、スムーズに診療を進めることができました。

    昨日までは、地震の話や大変な思いをしたという話をされる患者さんが多かったのですが、不思議と今日あたりからはそうした振り返りの話も少なく、普段通りに過ごされている方が多い印象でした。

    もちろん、住んでいる地域によっては甚大な被害を受けている方もいますし、ご家族や親戚が宇城や八代方面に住んでいる方もたくさんおられます。お話を聞くとお気の毒な状況もありますが、それでも皆さん前向きに前進しておられる姿が印象的でした。

    一日一日を希望を持って過ごしていけば、なんとかなるものです。悲観せず、「なんとかなる」と思いながら、その日を過ごしていきたいものです。

    また、自分の力だけではどうにもならないこともあると思います。そういう時は、役所など行政の力を借りたり、ご近所の皆さんと力を合わせたりしながら、解決策を探すしかありません。一人だけで思い悩まないようにしてください。

    今日の診療でもう一つ印象的だったのは、38℃を超えるような高熱の患者さんが少し増えてきたことです。

    しかも、風邪なのか熱中症なのか、診察だけでは判断が難しい例が少なくありません。そこで採血を行い、炎症反応や白血球の動きなどを確認しながら、どういった病態なのかを考える必要があります。

    インフルエンザや新型コロナの患者さんはほとんどいません。小児科ではRSウイルスやヒトメタニューモウイルスなどの感染症が出ていると聞きますが、大人ではそこまで詳しいウイルス検査をすることは通常ありません。

    そのため、「夏風邪でしょう」とか「扁桃腺が腫れているので、そこから熱が出ているのでしょう」といった、やや漠然とした診断になりがちです。

    ただ、採血のデータまで揃えば、ある程度は治療方針を立てることができます。熱中症なのか感染症なのか判断が難しい場合には、今後は積極的に採血で確認するようにしようかと思っています。

    さて、「風邪には葛根湯」とよく言われます。

    しかし、漢方では風邪の症状や時期によって処方を使い分けます。

    葛根湯は、体を温めて発汗させることで風邪を治していく処方です。そのため、寒気があって汗が出ていないような、冬場の風邪にはよく使います。

    一方、夏の風邪では、すでに体が熱を持っていることが多く、葛根湯のように体を温める処方が必ずしも適しているとは限りません。

    漢方では、こうした場合には「清熱」といって、体の余分な熱を冷ます方向の処方を使うことがあります。

    例えば「銀翹散(ぎんぎょうさん)」などがその代表ですが、日本では医療用漢方として保険診療で使える処方が限られているため、一般の医療機関ではあまり馴染みがないかもしれません。銀翹散は現在、一般用医薬品としても販売されています。

    私が夏の発熱や喉の炎症などでよく使う処方の一つに、「小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)」があります。

    また、症状や体質によっては葛根湯を組み合わせることもあり、これに近い考え方の処方として「柴葛解肌湯(さいかつげきとう)」があります。

    つまり、「夏風邪には葛根湯は絶対に使わない」ということではありません。漢方は症状や体質を見ながら、処方を使い分けることが大切です。

    ただ、漢方の理論にあまり詳しくない方は、「夏の暑い時に、熱があるからといって、とりあえず葛根湯を飲めばよいわけではない」と覚えておいていただくとよいでしょう。

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