今回の韓国旅行は滞在時間がとても短かったので、現地でできることは本当に限られていました。そういう旅を楽しむには、現地に着いてから何をするかだけではなく、移動そのものを楽しむしかありません。
県外に出ること自体が久しぶりだったのに、国際線の飛行機に乗って外国へ行く。これだけでもワクワクします。久しぶりすぎて、いろいろなことを忘れています。空港の中を移動することや、出国手続きをすること一つ一つが新鮮で、私にとってはディズニーランドのアトラクションのようなものです。
今回は「せっかく来たのだから、すべてを楽しもう」と思って出かけました。旅行をすれば、多少のトラブルは付きものです。そういうトラブルも含めて楽しむくらいでちょうどいいのではないかと思います。
今回の旅行で最初に遭遇したトラブルは、出国手続きのところでした。保安検査場では、身の回りの小物やポケットの中のものを大きなトレイに乗せてX線検査を受けます。自分自身は金属探知機のゲートを通って向こう側へ行き、検査が終わった荷物を受け取って、そのまま出国手続きをするという流れです。
私はスムーズに出国手続きを終え、「さあ、ここから先は外国だ」と思いながら、免税店の並ぶ福岡空港の出発ゲートへ向かって歩いていました。その時、ふとポケットの中に車の鍵がないことに気がつきました。
さっき保安検査場のトレイに乗せたところまでは覚えています。バッグもパスポートもしっかり受け取ったのですが、どうやらトレイの中に車の鍵だけを残してきてしまったようです。引き返そうにも、すでに出国手続きを終えているので戻ることができません。
ダメ元で出国手続きの窓口の方に聞いてみると、「一度出国したので、もう戻れません」とのこと。「忘れ物を探したいのですが」と伝えると、「インフォメーションにあるiPadから保安検査室につながりますので、そちらで探してもらってください」と教えてくれました。
インフォメーションに行ってみると、確かにiPadが置いてあります。タッチするとオンライン通話のように相手の方が画面に現れました。そこで、トレイの中に車の鍵を忘れたこと、鍵の色や形、キーホルダーの特徴などを細かく説明して探してもらいました。待つこと10分ほど。「鍵は見つかりました」との連絡があり、ほっとしました。航空会社の方が出発ゲートまで鍵を持ってきてくれるとのことで、一安心です。これで第一の難関は突破です。
旅行というのは、こういったトラブルも含めて楽しむものなのかもしれません。ハラハラドキドキすることも含めて、その時に起こったことを全部楽しむ。そう思っていると、旅の一つ一つが思い出になります。
そして、これは旅行だけの話ではないのかもしれません。
時々、がんの患者さんから、「私のがんはいつになったら治るのでしょうか「抗がん剤はあと何回しないといけないのでしょうか」といった言葉を聞くことがあります。もちろん、病気が治ることは大きな目標です。「治ったら、どんなに嬉しいだろう。どんなに幸せな日が来るだろう」そう思うのも当然だと思います。ところが、治療が終わると、今度は「いつ再発するのだろう」と、そのことばかりが気になってしまう方もいます。そうなると、治療が終わっても、なかなか心から安心して過ごすことができません。
先ほどの旅行の話に照らし合わせるなら、目的地に着いてからの楽しみだけを待つのではなく、そこへ向かう途中の出来事も楽しむということです。
病気が治ることを待つだけではなく、治療中であっても、その日の天気がよかったこと、気分よく過ごせたこと、おいしいものを食べたこと、誰かと楽しく話したことなど、一日の中には小さな楽しみや幸せがたくさんあります。そういった一つ一つを見つけて楽しむことが大切なのではないでしょうか。
「いつか病気が治ったら幸せになれる」と思っていると、その「いつか」が来るまで幸せを先送りしてしまうことがあります。病気があっても、治療中でも、その日の中にある小さな幸せを見つけていく。今回の短い韓国旅行を振り返りながら、そんなことを少し考えました。
