むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • ドアノブ現象

    私が子どもの頃、テレビで『日曜洋画劇場』という外国映画を放映する番組がありました。その中で今でも強く印象に残っているのが、名作ミステリー『刑事コロンボ』シリーズです。(この番組をリアルタイムで覚えておられる方は、私と同世代、結構なお年かもしれません笑)。

    コロンボ刑事といえば、よれよれのコートを着て、真犯人を油断させる天才です。 尋問を終えて「それでは失礼します」と一度玄関を出ていき、犯人がホッと胸をなでおろした瞬間に……ガバッと戻ってきてこう言うのです。

    「すいません、大事なことを聞き忘れていました。あと一つだけ……」

    この油断した瞬間に放たれる核心を突いた質問こそが、事件解決の決定打となるのがお約束でした。

    研修医時代に教わった「コロンボ・テクニック」

    実は、この「一旦終わったと見せかけて、おまけのように軽く核心を聞き出す方法」は、内科の問診でも使われることがあります。

    私が研修医だった頃、先輩の医師から「刑事コロンボみたいなテクニックで、患者さんの本音や大事なヒントを聞き出すんだよ」と教わったことがあります。なかなか診断の決め手が見つからないとき、「そういえば、ところで……」とあえて雑談のように最後に切り出すと、患者さんがポロッと重要な手がかりを話してくださることが実際にあります。

    診察室で起きた「逆コロンボ」の衝撃

    ところが先日、診察室でこれとは真逆のパターンを経験しました。

    一通りの診察と問診が終わり、「それではお薬を出しておきますね、お大事に」と診察を締めくくった直後のことです。患者様がこう切り出されました。

    「あのー、ところで先生……」

    そこから語られたのは、それまでの会話には全く出てこなかった、非常に重要で重たい症状でした。「なぜそれを最初に……!」と心の中で叫びつつ、それまで組み立てていた診断や処方箋をすべて白紙に戻し、最初から詳しく話を聞き直し、検査の計画まで一から組み立て直すことになりました。

    「最後に言う」のは、患者さんにとっても不利になる?

    実は、診察の最後に重要な症状を切り出すのは、患者さん側にとっても大きな不利益になってしまう場合があります。

    私たち医師は、限られた3分や5分という時間配分の中で、「どのように話を聞き、どこで体を触り、どう検査や説明を組み立てるか」をプロとして頭の中で瞬時に計算しています。

    クロージング(締めくくり)まで進んだ段階で、その方に予定していた診察時間はほぼ終了しています。そこから振り出しに戻るような大きな症状が出てくると、十分な時間をかけた丁寧な診察や、本来必要だった検査の段取りが難しくなってしまうのです。

    診察室を最大限に活用するために

    せっかくの診察時間を最大限に有効に使い、的確な治療を行うためにも、「今、自分が一番困っていること」「一番気になっている症状」は、ぜひ診察室の椅子に座った最初の瞬間に教えていただけますと幸いです。診察が終わり、患者さんがドアのノブに手をかけた瞬間に最も重要な主訴を切り出すことを「ドアノブ現象(Door-knob phenomenon)」と呼ぶそうです(Geminiが教えてくれました)。

    小峯の洋食「Arot of kitchen]のポークカツ