むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 後頭神経痛という頭痛の話

    このところ天気が不安定で、晴れたかと思えば雨が降ります。ついこの間まで激しい雷雨でしたが、雷が鳴らないだけまだマシかもしれません。それでも、患者さんに話を聞くと、天気が悪いと頭痛やめまいがひどくなると訴える方が大勢います。

    今日診察した頭痛の患者さんは、耳鼻科で検査して「異常なし」、脳神経内科でMRIを撮っても「異常なし」。仕方なく市販の頭痛薬を毎日服用してしのいでいる、というお話でした。私が頭痛の患者さんを見るときは、まず丁寧に問診を行います。一次性頭痛(偏頭痛や緊張型頭痛など)では、画像検査で明確な異常が見つかることはほとんどありません。脳出血のような頭痛は通常、突然で激烈な痛みを伴い明らかに区別できますし、脳梗塞や脳腫瘍であれば頭痛以外の神経症状が出ることが多いです。

    MRIで副鼻腔炎が見つかることはありますが、慢性副鼻腔炎(蓄膿)は無症状の方にもよく見られ、それが本当に頭痛の原因なのかは別問題です。検査で見つかればまず治療する、という流れになることもありますが、必ずしも検査所見=症状の原因とは限りません。

    話はそれますが、胃カメラをしても無症状の人に慢性胃炎や逆流性食道炎の所見が見つかることがあり、所見自体は正しいとしても、その所見と患者さんの自覚症状に明確な関連がないことが多々あります。検査で何か見つかると、とりあえずプロトンポンプ阻害剤(PPI)などの胃薬が処方されることが一般的です。皆保険制度のおかげで高度な検査を受けやすい反面、不要な検査や薬が増え、国の医療費が膨らむ原因になっていると思います。

    冒頭の頭痛の患者さんに戻ります。検査が異常を示さず、市販薬を毎日使っていると聞くと、まず念頭に浮かぶのは薬物乱用頭痛です。鎮痛薬の過剰使用が逆に頭痛を悪化させることがあります。とはいえ、決めつけずに詳しく問診を続けると、天候との関連はなさそう、痛みはズキズキに近い、肩こりがある、痛みは左後頭部で右は痛くない、ブラッシングで痛むのでそっと整える、といった情報が集まりました。

    これらの所見を総合すると、後頭神経痛(後頭神経に由来する神経痛)と判断できました。こうした神経痛は一般的な頭痛薬で全く効かないわけではありませんが、後頭神経痛に有効な薬を用いる方が効果的なことが多いです。今回はその方向で薬を処方し、経過を見ていただくことにしました。

    結論として、短い診察時間の中でも要領よく話を聞けば、多くの場合で診断に近づけます。検査は大事ですが、問診で得られる情報こそが診断の鍵となることを、改めて感じた一例でした。

    ロードスター乗りの聖地と言われている某所