土曜日は非常に悩ましい症例が多く、頭を抱えながら治療法を考える一日でした。漢方を専門にしていると、さまざまな難問が降りかかってきます。いろいろな病院に通っても治らなかった、診断がつかなかったという方々が、最後の望みをかけていらっしゃいますので、こちらも何とかしてあげたいという気持ちで必死に治療法を探ります。コロナ後遺症にしろ、学生さんの不登校にしろ、決まった治療法が確立したわけではない場合は、自分なりの病態の把握から治療仮説まで時間をかけて考え、処方してみます。
その結果、治療が成功したかどうかをフィードバックとして受け取り、私のアプローチが間違っていなかったかを検証し、次の治療に生かします。したがって、似たような訴えの患者さんが多いほど、私の経験値は上がり、治療成績も良くなるだろうと予想されます。しかし、中にはどう考えていいのかわからない場合や、前医と同じ仮説で処方をしても、患者さんがその処方は効かなかったと言うときは、八方塞がりになります。
西洋医学では、エビデンスに基づいた標準治療がガイドラインで示されているので、悩まずにガイドライン通りで良いような気がしますが、漢方は個別対応です。まさにオーダーメイドです。実際、西洋医学でも、ガイドラインに従って何も考えずに対応するのは、AIや初心者の仕事に近いものです。ベテランの医師ほど、患者さん一人一人の生き方や考え方、家族の状況などを総合的に考えて治療方針を決めます。それがオーダーメイドの医療ですが、標準治療ばかりが重視される現状には、いつも疑問を感じています。

