昨日、近所の中華屋さんに行ったら、貸し切りになっていました。近くの会社の人たちの送別会か何かをやっていたのかもしれません。年度末ですから、異動が決まって引っ越しの準備をしたり、受験が終わって県外に進学するなど、この時期は何かと慌ただしいものです。
ところで、この時期になると、「なんとなく体調がすぐれない」「ふらつく」「めまいがする」という患者さんが増えます。特に最近は、昼夜の寒暖差が大きく、気圧の変動も激しいため、自律神経が乱れやすい時期です。
自律神経は、体のバランスを保つ司令塔のようなもので、交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)の切り替えをスムーズに行う役割があります。しかし、春は気温や気圧の変化が激しいため、この切り替えがうまくいかず、自律神経が乱れやすくなります。その結果、めまいや立ちくらみ、動悸、倦怠感、不眠などの症状が現れやすくなるのです。
春に体調不良が起こりやすい理由
1. 寒暖差による血流の変動
朝晩は冷え込むのに昼間は暑い、といった寒暖差があると、血管の収縮と拡張が頻繁に起こり、血流が不安定になります。特に低血圧傾向の人は、血流が安定しないことで脳への血流が一時的に不足し、めまいや立ちくらみを引き起こしやすくなります。
2. 気圧の変化による影響
春は低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わります。気圧が低下すると、内耳のリンパ液のバランスが乱れやすくなり、三半規管や前庭の働きが不安定になります。その結果、耳の奥で平衡感覚をコントロールしている部分が影響を受け、めまいが起こりやすくなります。
3. 新年度のストレスや環境変化
進学や就職、異動など、春は環境が大きく変わる時期です。「新しい環境に適応しなければ」というプレッシャーが、自律神経に影響を与えることがあります。特にストレスがかかると交感神経が優位になり続け、血流が悪くなったり、筋肉が緊張したりして、めまいや頭痛を引き起こしやすくなります。
4. 花粉症による影響
花粉症の症状がひどい人は、鼻づまりやくしゃみによって酸素がうまく取り込めず、脳への酸素供給が不足しやすくなります。また、抗ヒスタミン薬を服用すると、副作用で眠気やふらつきが出ることもあり、「春になるとボーッとする」「頭が重い」と感じる方が増えます。
自律神経を整えるためにできること
自律神経の乱れに対しては、根本的な治療薬があまりありません。そのため、日々の生活習慣を整えることが最も大切です。
- 規則正しい生活を送る(定刻に寝る、十分な睡眠をとる)
- 1日3食をしっかり摂る(食事を抜かない)
- 栄養を意識する(ビタミンB群を含む豚肉・卵・納豆、鉄分を含むレバー・ほうれん草・あさりなどを意識的に摂る)
また、めまいがあると真っすぐ歩いているつもりでも壁や柱にぶつかることがあるため、運動は注意が必要です。十分安全を確保して行いましょう。筋トレやストレッチなどの軽い運動も効果的です。
漢方によるアプローチ
私のクリニックでは、漢方を用いて自律神経を整え、めまいやふらつきの治療を行います。特に、以下の漢方薬が有効な場合があります。
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苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
→ 体内の水分バランスを調整し、めまいや動悸を改善する効果があります。 -
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
→ 胃腸の働きを整えながら、めまいやふらつきを和らげる漢方です。