気温が下がると、夜に何度もトイレに起きるという訴えをよく聞きます。夜間頻尿は一晩に3回以上となると睡眠にも悪影響を及ぼすため、治療の対象となります。夜間頻尿になる原因にはさまざまなものがあります。まず、除外しないといけないのは膀胱炎や尿路感染症です。残尿感や排尿痛などがあればその可能性が高く、検尿をすることで診断がつきます。これらの感染症でない場合、次の鑑別に移ります。
男性では、前立腺肥大が頻尿の原因としてよく見られます。前立腺の肥大によりしっかり排尿ができず、残尿が増えることで頻尿が起こります。一方、女性に多いのは過活動膀胱です。膀胱が敏感になり、尿が少しでも溜まるとトイレに行きたくなる状態です。また、高齢者では日中に下肢に溜まった水分(むくみ)が夜間に体内に戻り、尿量が増えることも一因です。心不全の場合もあるし、長時間同じ姿勢で座っているのも原因となります。
夜間尿の対策
まずは生活習慣の改善のヒントです。就寝前の数時間は水分を控える。塩分やアルコールの摂取を避ける。日中に適度な運動を行い、むくみを防ぐ。夕食後しばらく足を高くしておく。
次に薬物療法についてです。
前立腺肥大に対しては、前立腺肥大の治療薬を使うことで残尿が減り、夜間頻尿の改善が見られる場合があります。あまり即効性がないので気長に治療が必要です。過活動膀胱には、男女を問わず抗コリン薬やβ3受容体作動薬が有効です。男性に限り、夜間頻尿には、抗利尿ホルモン製剤が使用されることもあります。漢方薬も夜間頻尿に有効な場合があります。例えば、冷えが原因の場合は八味地黄丸や牛車腎気丸、過活動膀胱には清心蓮子飲などが選択肢となります。
夜間の排尿回数だけでなく、1回1回の尿量を把握することが重要です。排尿日誌をつけることで、どの時間帯に尿量が多いのか、原因を特定しやすくなります。
夜間頻尿は多くの人にとって日常的な悩みですが、適切な診断と治療により改善できる可能性があります。睡眠の質を向上させるためにも、気になるときは遠慮なくご相談ください。