むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 免疫療法とステルスの話

    今日は一日中雨が降り続きました。昼に往診へ出かけたときも、しっかりとした本降りの雨でした。普段は薄手の長袖で訪問していますが、今日のような雨の日には、かつてマラソントレーニングの際に使用していた薄手で軽いランニング用のウインドブレーカーを雨合羽代わりに着て出かけます。当時は、仕事が終わってから夜の暗い道をペンライトを片手に走るのが日課でした。その際、安全のために上着は必ず白と決めていました。その白いウインドブレーカーが、今では冬の往診用の白衣代わりとなっています。

    白色は夜間でも認識されやすいので安全だと感じますが、その反対が迷彩色です。当院の近くには自衛隊があるため、迷彩服を着て通勤する職員さんをよく見かけます。特に夜道では、ギリギリまで接近しないと人影に気づきにくいことがあります。一部の方は反射材をタスキのように掛けて対策をしていますが、それがないと車に轢かれるんじゃないかと心配になります。

    迷彩色つながりですが、レーダーに映らない技術を駆使した「ステルス戦闘機」というものがあります。私はテキサスに滞在していた頃、一度ステルス戦闘機が飛んでいるのを目にしたことがあります。そのとき、異様な形の飛行機が爆音を轟かせながら空を飛ぶ姿に驚きました。

    この「ステルス」という概念は、医療や現代社会でも応用や比喩として使われています。最近ではネット通販の口コミやレビューが巧妙に操作されていることが問題視されています。企業やインフルエンサーが謝礼を受けて良い評判を意図的に作り出す例もあり、公平な評価とプロモーションを見分ける力が、現代ではますます重要になっています。

    医療の分野でも、「ステルス」という概念は特にがん治療で注目されています。がん細胞は、免疫システムから逃れる「ステルス機能」を持っていますが、これを解除するのが免疫チェックポイント阻害剤です。この薬剤により、がん細胞が免疫細胞からの攻撃を逃れられなくなり、治療効果が劇的に向上しました。2018年に本庶佑先生がこの分野の研究でノーベル賞を受賞したことは記憶に新しいですね。

    私が医学部3年生だった頃、熊本大学医学部の学祭「本九祭」でがんの免疫療法についての展示をしたことがあります。おそらく1988年頃だったと思いますが、その時点ではまだキラーT細胞ががん細胞を攻撃するという免疫療法の考え方がようやく広まり始めた頃でした。当時、学祭を担当した私たちは、免疫療法についてとてもアカデミックで面白いと思い、本九祭の展示のために当時の耳鼻科の教授だった石川哮先生に指導してもらいました。教授の先見性には、今改めて素晴らしかったなと感じます。