コロナ感染から回復しても、倦怠感が長引く患者さんが少なくありません。この「コロナ後遺症」の症状に対して、私のクリニックでは朝鮮人参を含む漢方薬を用いて治療を行うことが多いです。朝鮮人参は身体を補う力があり、使用しているうちに徐々に元気を取り戻される方が多い印象です。しかし、一筋縄ではいかないのが「慢性疲労症候群(CFS)」です。これは長期間にわたり倦怠感が続く疾患で、検査をしても原因がはっきりせず、明確な治療法もないため、治療が難しい場合が多いです。そのため、漢方を頼りにご来院される方もいらっしゃいますが、改善には時間を要します。
漢方医学では、「倦怠感」と一口に言っても、症状や原因が多様であると考えています。すべての倦怠感に同じ処方が効くわけではありません。漢方では「気・血・水」という概念で体のバランスを捉えますが、コロナ後遺症の倦怠感は主に「気虚」と呼ばれる、エネルギー不足の状態であることが多く、こうした場合には朝鮮人参を含む漢方がよく効きます。しかし、近年は単なるエネルギー不足ではなく、他の要因が関与しているケースが増えているように感じます。
私自身の体験を通しても、気づいたことがあります。仕事で疲れて「今日はきつかったな」と感じることがありますが、振り返ると一日座ってPC作業をしていただけで、体力的にはあまり負担がかかっていないことがあります。このようなとき、朝鮮人参で多少の体力は回復しますが、根本的な解決には至らないことも多いです。そんな時、私は夜にchocoZAPで軽くランニングをします。走る前は「疲れたな」と感じていても、15分程度走ると体が軽くなり、疲労感がすっきりと消えるのです。これはつまり、エネルギーを「補う」だけでなく、「巡らせる」ことで改善する倦怠感もあるということです。
当院に通う患者さんの中には「体がきつく疲れている」と訴える方がいますが、よくお話を聞くと、仕事もこなしており、夕方にはランニングまでしているという方がいます。どうしてこういうことがあるのか、不思議に思っていましたが、私自身の体験から納得がいくようになりました。こうした患者さんには、エネルギーを補う漢方ではなく、「気の巡りを良くする」漢方を処方したところ、倦怠感が軽減し、日常生活がずいぶんと楽になったとおっしゃっています。
コロナ後遺症や慢性疲労症候群などの治療では、ただ体を「補う」だけでなく、症状に応じて「巡らせる」アプローチも効果的であると実感しています。今後も一人ひとりの患者さんの倦怠感の原因に合わせた治療を心がけていきたいと思います。