この週末は熊本で日本中医薬学会という学会が開催されたので、出席しています。この学会は、日本における中医学の研究と実践を推進する重要な場です。幸い土曜日の診療があまり遅くならなかったので、終わり次第パレアに駆けつけました。最初のセッションは聞き逃しましたが、2番目からあとは全部聞くことができました。
中医というのは中国医学のことで、中国では漢方医のことを中医、西洋医のことを西医といいます。中国ではそのいいとこ取りをしようという風潮があり、「中西医結合」(中医学と西洋医学の融合)という言葉があります。わたしは自分の診療スタイルも漢方と西洋医学のハイブリッドと呼んでいますが、同じ考え方です。
約30年前の1990年代初頭、北京まで漢方や中西医結合の視察に行ったことがあります。まだ、車より自転車のほうが多かった時代です。どでかい大学病院の廊下から右が西洋医学、左が中医学みたいな感じでやってました。中国では町医者は中医も多いけど、西洋医学のほうが信用されていて、大金(賄賂)を払ってCT検査の順番待ちの予約をとったりしていたのを覚えています。最近は西洋医学の限界と、中医学の可能性が見直されてきています。
実は、日本の漢方は江戸時代に鎖国しているうちに中医学とはかけ離れた独自の進化を遂げて、いわゆる「ガラパゴス化」しています。例えば、日本独自の診断法である腹診(お腹を触って診断する方法)が発展しました。私が来月主催する日本東洋医学会などはその日本独自の漢方です。しかし、私は最初から中医に詳しい師匠に弟子入したので、私の診療スタイルは、日本漢方と中医のハイブリッドです。昔の日本は流派が違うとかなり排他的でお互い相容れないところがありましたが、最近は日本東洋医学会でも中医学の発表を見かけるようになりました。
専門的な話になりますが、中医学と日本漢方は同じ漢字で表現しているのに違う意味を持っていることがあります。例えば、「陰虚」という言葉は、中医学では陰分(水分)の不足を意味しますが、日本漢方では陰証で虚証(よわよわしい)を指します。同じ言葉で言っている意味が違うと、誤解が大きくなってしまいます。
私たちの日常でもそんなことはないでしょうか?職場で言った言わない、とか言ったのにちゃんと理解してもらえなかったとか、コミュニケーションのちょっとした食い違いが誤解を生み、仕事のミスにつながったり信頼を失うことになったりします。例えば、医療現場では、医師の指示を看護師が誤解してしまい、投薬ミスにつながるケースがあります。最近はそういった誤解や早合点を防ぐため、わかっているようなこともプリンターで指示簿を印刷して確認するようにしています。結局、わかったようなつもりにならず、相手の言おうとしていることを親身に聞く姿勢が大事だと思います。
三年坂にあるキンパとチゲの専門店からテイクアウトしてみました