梅雨らしく雨が続いています。案外涼しくて、毎年梅雨の頃ってこんなに快適だったかな?と思ったりします。蒸し暑い日がまだあまりありません。クリニック内は除湿も兼ねてエアコンを強めに付けているので、少し肌寒いです。来院される患者さんも長袖の人が結構いるので、涼しく感じるのは私だけではないようです。そのせいか、風邪の人が相当います。検査すると大半がコロナ陽性です。ご注意ください。
曜日によりますが私の後ろで勉強している先生がいることがあります。これは漢方専門医を取るために必要な研修を行っているのです。気になる方がいたらすいません。ちゃんとしたキャリアの先生たちなので、ご心配なく。その先生たちに最近私が繰り返し説明することがあります。それは、夏風邪は冬の風邪と同じ処方ではいけないということです。冬には葛根湯や麻黄湯をよく使いますが、これらの風邪に使う漢方は体を温めて発汗を促します。寒気がして、鳥肌が立っているところに麻黄湯などを飲むことで毛穴が緩み、汗がにじみ出て来て熱が下がりスーと体調が良くなってきます。ところが夏の風邪は違います。最初から暑いのでジメッと汗をかいています。鳥肌をたてて悪寒がすると言っている人はまずいません。そんな夏風邪患者さんに麻黄湯や葛根湯を使うとさらに体が熱くなり、汗もダラダラと出て体力を失います。したがって、よほど寒気の強い例を除けば、夏風邪に葛根湯や麻黄湯はあまり使いません。
でも、私の診察で葛根湯をもらったよ、という人が結構いると思います。実は上に書いたのは単独で処方するときの話です。麻黄湯や葛根湯は石膏を含む他の処方と合わさると温める働きが弱まり、逆に清熱的に働きます。小柴胡湯加桔梗石膏、麻杏甘石湯、越婢加朮湯などが石膏を含む製剤です。これらと合わせることで葛根湯を夏風邪にも使えるようにアレンジしています。このように、私たち漢方専門医は同じ風邪でも季節により処方を変えているのですが、素人が薬局に並んでいる漢方を適当に買うと、そういった理屈がわからず失敗するかもしれません。薬局にも漢方に詳しい薬剤師さんがいるかも知れませんので、心配なら、自己判断でなく専門家に尋ねて下さい。