中秋の名月でしたね。ちょっと雲が多くて見えにくかったですが、雲の切れ目から明るく輝く満月を拝むことができました。私は満月が好きですが、今週来た患者さんで満月の日は体調が悪くなるので何日も前からカレンダーに印をつけて警戒しているという女性が二人もいました。女性はこのような自然界のゆらぎみないなものにとても敏感な人がたくさんいます。私たちは個々が勝手に生きているのではなく、地球や太陽系の一部であることが実感されます。
庭に咲く花や草木は冬には枯れて姿を消しますが、春にはまた芽が出て次の年もまた次の年も花を咲かせます。死んでしまったように見えてもまた生まれ変わり新しい姿を見せます。ペットもたいていは人より寿命が短いので生まれてすぐもらってきたペットもいずれは死んでしまいます。ただ、またどこかで新しい命となって生まれてくるように思います。人は自分の一生の長さしか経験することができないので植物やペットのように生まれて死んでを繰り返しているようには感じませんが、何十億年という地球の命からすると動植物と同じように短いスパンで生まれて死んでを繰り返しています。そしてその生命は地球の一部だと感じます。
私たち医者は必死になって病気を治療しますが、血圧や血糖を下げることで寿命を少しだけ伸ばしています。それが皆さんの幸せにつながるなら良いのですが、どうでしょう。地球にとってはそんなの誤差範囲かもしれません。わたしたちかかりつけ医というのは、血圧や血糖を治療するだけが仕事ではなく、患者さんの生活の伴走者みたいなものだと思います。24時間テレビでマラソンしているタレントさんには最初から最後まで伴走するコーチがいます。じゃあコーチが24時間走るところを番組にするかというと、主役はあくまでタレントさん(患者さんあるいはあなた本人)です。わたしたちかかりつけ医は伴走者として、心や体のサポートをしながら皆さんの完走のお手伝いをするのです。血圧が上がった下がったというのは生活の中のシンボル(記号)であって、本質はそこにはありません。だから私は患者さんの血圧や採血データをそれほど気にしません(気にしていないふりをする)。目的は数字を良くする点ではないのです。大事なのはその方が幸せな一生を送れているかということだと思います。