最近はあまり話題にもなりませんが9月11日はNYのテロの日でしたね。確か2001年だったと思います。私は当時テキサスにいたので、他人事ではありませんでした。研究室で朝のミーティングが終わり、みんなでコーヒーを飲んだあと、仕事を始めてまもなくの出来事でした。仕事を中断してテレビやネットに釘付けになりました。その後はアメリカでのビザの取得も厳しくなりました。通常留学生のビザは2年ものですが、私はテキサス大学の教職に採用されたため、就労ビザに切り替えて2004年までアメリカで働きました。あれから22年もたつんですね。時が経つのは本当に早いです。
当時テキサスでは羊を使った大動物実験を行っていました。私の研究テーマは急性肺障害の治療法の開発です。集中治療とか救急医学の分野です。ちょうど大学の近くにNASAがあったので、NASAのパイロットたちと一緒に実験をしたこともあります。彼らと一緒に豚や羊の体内にいろんなセンサーを手術して埋め込み、その動物をNASAに連れて帰って飛行機にのせて無重力実験をやってました。毎日が刺激的で楽しかったです。日本ではあまり研究していないと思いますが、当時私の同僚は戦争や交通外傷などで救命するときにどのような輸液(生理食塩水とか点滴の種類はいろいろあります)をどのくらいのスピードで入れるべきかを真剣に議論していました。私がスタッフを兼任していた小児熱症センターにはメキシコから火災で全身重症の熱傷患者がヘリで運ばれてきていました。私はその子達を救うために人工呼吸をどのような設定ですべきかを実験し、新しい治療法を開発していました。
羊を使っての実験が優れているのは、人とほぼ同じ大きさなので、人工呼吸器も点滴もすべて人に使う本物の集中治療機材を使い、動物実験で検証できたのです。マウスなどの実験とはリアルさが違います。アメリカ広しといえども、このような設備は全米でも数か所にしかありません。NYテロの日だったので当時の私の思い出話を書きました。