むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • メガビタミンは人への肥料

    植物の肥料を専門に勉強されている患者さんが、当院のロビーに置いてあった栄養(メガビタミン)の本を読んで、人も植物も栄養の理論は同じですね、と言いながら自分でいろんなビタミンを飲み始めたところ、とても体調が良くなったそうです。そこで、その会社の部下にもみなメガビタミンを勧めて、みんな体調がいいと言われていました。本当にそうですね。農作物を元気に大きく育てるには肥料をやったらはっきりと効果が出ます。肥料のやり方には科学的な根拠があり、窒素、りん、カリウムが3大栄養素となりますが、石灰その他のミネラル補給も大切です。植物も人も似たような理論です。

    その人が言われていたのですが、カルシウムのサプリを飲み始めたら肩こりがひどくなったそうです。これはとても面白い現象です。カルシウムは筋肉を収縮させるミネラルで、マグネシウムは反対に弛緩させる働きがあります。そこで、肩こりの反対にすればいいので、マグネシウムをしっかりとれば肩こりがとれるという理屈になります。理にかなっています。ただ、残念ながらマグネシウムは吸収が悪く、たくさん取ると下痢することがあります。そこで、マグネシウムオイルという製品があり、凝った筋肉やつりやすい部分に塗ってマッサージすると筋肉が和らぎます。また、エプソムソルトというマグネシウムの入浴剤があります。お風呂に入れてゆっくり浸かるとマグネシウムは皮膚から吸収されます。

    もう一つ大切なことは、ビタミンDを飲んでいる時にカルシウムを飲まないでほしいということです。ビタミンDはカルシウムの吸収を高めます。そこにカルシウムのサプリを入れると血中のカルシウムが上がりすぎます。血圧が上がったり、不整脈(動悸)が増えたり、足がつりやすくなったりします。そして最悪なのは余ったカルシウムは骨に行かずに尿中に排泄されるため、尿管結石を起こしてしまいます。したがって、ビタミンDをとっている時にカルシウムのサプリや牛乳を飲むのは危険です。マグネシウムのサプリを買いたいのに、カル・マグ(カルシウム+マグネシウム)というサプリしか見つからないかもしれませんが、外国製だとマグネシウム単体のサプリは手に入るので、仕方ない、カル・マグでもいいやと思ってはいけません!

    麦畑は穂が実って綺麗です。金峰山に沈む夕日

  • テニス肘がストレッチで治った

    「しびれは99%完治する」(幻冬舎、酒井慎太郎著)という衝撃的な本の広告を新聞で見つけてすぐに購入し、しびれをとる方法を勉強しました。なかには私がすでに患者さんに指導している内容もあったのですが、まだ知らなかったこともいろいろ書いてあり、とても勉強になりました。読み終わったらクリニックのロビーに置いておこうと思ったのですが、まだ私の座右においています。

    1ヶ月ほど前に来院された患者さんが、肘が痛くて整形外科に通ったが治らない、と相談されました。漢方を出したついでに、その本に書いてある「肘の痛み」のページを調べたら、テニス肘の治し方というところがありました。患者さんの訴えに似た内容が書いてあったので患者さんに見せたところ、整形でもテニス肘と言われた、とのことで、診断は間違いないみたいです。そこで、そのセルフストレッチ法が書いてあるページをコピーしてこの通りにやってみましょうと勧めてみました。

    そして今日、その方が来院されたのですが、開口一番「先生、あの通りにストレッチしたら肘の痛みは治りました!」とのこと。びっくりです。この本はすごいとあらためて実感しました。この患者さんの症状はストレッチで治るかも、と思ったら私の方からコピーを差し上げていますので、ぜひしっかりやってみてください。長年の悩みが解決するかもしれませんよ。

    レゴのシンデレラ城;巨大な作品です。ホスピタルメントにて

  • 痛風の治療

    最近、痛風発作の患者さんが何名か立て続けに来られました。痛風の発作は足の親指の付け根付近や足背、足首の関節などが突然炎症を起こして歩けないほどの激痛となるものです。原因は尿酸が関節に溜まってしまうことで炎症を起こすと言われています。健診などで尿酸が9を超えるようならいつ発作が起こるかわからない状態です。尿酸が上がる一番の原因はアルコールです。ビールが最も悪者でプリン体が含まれるのがいけないと言われており、プリン体ゼロのビールも売ってあります。しかし、プリン体ゼロのビールでも、もともとプリン体が含まれない焼酎やワインなどでも尿酸は上がります。痛風が怖いからハイボールにしている、というのは間違いです。節酒しましょう。

    発作時にロキソニンなどの痛み止めを使うことが多いと思いますが、これでは1週間たっても歩けないことがあります。先日来院した方は1ヶ月以上痛みが引かないと言われていました。まずは、痛みだけでなく炎症をしっかりとってやらないとなかなか治りません。当院ではロキソニンにあと3種類薬を組み合わせることでたいてい数日で歩けるレベルまで治ります。その際、尿酸治療は後回しです。慌てて尿酸を下げると、痛みが悪化すると言われています。足の痛いところをアイシング(冷や)したり湿布を貼るのもいいでしょう。また、当院では時々患部に針治療をします。非常に細い針ですが、わざと1,2滴血液を絞り出すと痛みが軽くなります。

    1週間ぐらい炎症を取り痛みが良くなったら、尿酸を下げる治療を開始します。昔は、ザイロリックとユリノームという2つの薬があったのですが、どちらも副作用の懸念がありました。今はフェブリクとユリスという新しい薬に置き換わって、副作用が非常に少なくなりました。そして、この度フェブリクのジェネリック薬が発売されることになりました。先発と同等の薬効で価格も安くなるので、患者さん負担も減ります。尿酸が高いのはお酒や美食のしすぎとは限らず、体質的なものが大きく関与しているため、治療が長期に渡ります。したがってジェネリック薬の発売は朗報です。

  • 世界高血圧デー

    5月17日は世界高血圧デーということで、診療が終わってからWEB講演会に参加しました。高血圧の話題です。ARBという種類の降圧剤が世に出たのがもう20年ぐらい前だったように記憶しています。当時は各メーカーがこぞって講演会を開いては、自分のところの薬を使ってくれと大プロモーション合戦がありました。それ以降ほとんど新しい降圧剤は出ていません。殆どの降圧剤はすでに特許が切れてジェネリック薬となり、安いのでメーカーは宣伝することもなくなりました。しかし、考えてみると、宣伝されたから使うというのはおかしな話です。いい薬はいいから使う。だめな薬はだめだから使わない。そういう筋の通った使い方をすべきです。製薬メーカーが講演会でプロモーションするときは心理作戦で洗脳してきますから、聞けばとてもいい薬のような気がして、使いたくなるように工夫されています。

    今、特許が切れたジェネリックの高血圧治療だと、処方する医師の考え方が処方を大きく左右します。特許が切れる前にたくさん使って使い慣れているというのが多いかもしれません。私が降圧薬にもとめる条件は1つ。降圧作用ができるだけ24時間は維持できるものということです。多くの降圧剤は半日程度しか効かないため、翌朝には効果が切れて血圧が上がってしまいます。私のお墨付きの半減期が長く安定した作用を持つ薬はアムロジピンとテルミサルタンの2つだけです。その2剤を合剤にしたミカムロという薬もあります。

    もう一つ、とっくに特許も切れており、1錠が10円くらいしかしない利尿剤系の降圧剤は誰も宣伝しませんが、非常に有用です。日本人は塩分摂取が多いので、塩分制限を厳しくすべきですが、それができないなら利尿剤を使って塩を尿中に捨てればいいのです。血圧はよく下がります。また、利尿剤系降圧剤は足のむくみや心不全も治療できるので、使わない手はありません。

  • コロナ禍の消化器症状

    来週、「コロナ禍の消化器症状に対する漢方治療」という講演を頼まれています。今日は本番一週間前ということで、WEB会議で講演の打ち合わせをしました。もうひとりの演者はこくぶ内科の田中先生です。私の古くからの漢方仲間です。田中先生の講演のスライドを見ましたが、不安、ストレスなどの漢方治療について話されます。本業は消化器内科の先生なのに、やはり漢方をやっていると心療内科的な治療に興味を持つんだということがわかりました。ただ、私が当院でよく見るような心療内科の患者さんと似たような症例でも、違う人がみると違う処方が出るものだと思いました。結果的にはどちらが正解ということはなく、漢方で気血水を整えてあげることで体調は改善するので、不安やうつなども軽くなるのだと思います。

    さて、そのコロナ禍での消化器症状ですが、どんな症例が多いと思いますか?食欲不振?腹痛下痢?それもありますが、実際には過食、肥満の方が多い印象です。在宅ワークで家にいると、ついお菓子を食べながら仕事するとか、中にはビールを昼間から飲みながら在宅ワークという人もいます。人から見られていないところで自制してきちんと仕事をこなすのがいかに難しいことか。やはり、職場に出勤してみんなと一緒に定時で仕事をして定時で帰宅するほうが効率が上がると思います。わたしたちが学生だった頃、夏休みなど一日をどう使ってもいいとなると、一日10時間勉強して宿題を3日で終わらせることもできるのに最後の最後まで遊び続けて、最終日に徹夜で宿題するという人がいかに多いことか。時間を自由に使えるときの時間配分は案外難しいものです。

    あと、コロナ禍で多いのは買い物に行くのを控えるために毎日似たような食材を使った料理ばかり食べている人。買い物に行ったり外食すれば、バライティーに富んだ食材を摂取できますが、あまり買い物に行かないと人参、じゃがいも、玉ねぎなど定番の食材しか食べず、日持ちのしない季節の野菜などは口に入らない。結果、栄養に偏りが出てきて体はもっと食べないと体を維持できないと指令を出すため、過食してしまいます。しかし、過食しても同じ食材ばかりでは結局必須アミノ酸やビタミンなどが満たされず、食欲はおさまらず、どんどん太ってしまうということになります。したがって、肥満防止の観点からも、多彩な食材をまんべんなく摂ることで体は満足し、過食しなくなるので太らないということです。