むらかみ内科クリニック

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  • 魔法の胃薬PPIの注意点

    最近は胃の調子が悪いというと、ランソプラゾールやタケキャブのようなプロトンポンプ阻害剤(PPI)という胃薬が処方されることが多いと思います。PPIは強力に胃酸の分泌を抑えるので、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に素晴らしい効果を発揮します。昭和の後半までこのPPIがなかったので、胃潰瘍でも出血すれば手術で胃を切った時代がありました。今、胃を切ったといえば胃がんしか思いつきませんが、ついこのまえまで胃潰瘍は切って治していたのです。夏目漱石も随筆の中で胃潰瘍に苦しんでいたことを書いています。

    このように、胃潰瘍が薬で治る時代になったことは喜ばしいことです。ところが、最近は、ちょっと胸焼けがするとか、胃の調子が悪いというだけでPPIが処方されて延々と使われているのが現状です。実際には健康保険の制約があり、ダラダラと使ってはいけないのですが、やめようとすると患者さんが、あの薬を切ると胸焼けがひどくなるから続けてほしいと強く要求されることが多いのが現状です。まるで麻薬のようです。一度使ったらやめられない。

    胃酸を強力に抑えると、胸焼けはおさまるかもしれませんが、当然消化が悪くなるし、口から入った雑菌が胃酸で殺菌されなくなるので、感染症にかかりやすくなります。腸内細菌にも大きな影響を及ぼし、悪玉菌が増殖します。ビタミンやミネラルの吸収も悪くなり、骨粗鬆症も増加します。血小板減少や認知症も報告されています。魔法のような素晴らしい薬も、本来の目的を外れてダラダラと漫然と飲むのは注意が必要です。