むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 薬のさじ加減

    血圧がうまく下がらない時に薬を変えることはよくあります。どうせ飲むならきちんと降圧目標をクリアしないと意味がありません。私は、家庭血圧を重要視していますので、クリニックに来て測った血圧が多少高くても家で測った血圧(血圧手帳)がちょうどいい値の場合、そのデータをもとに治療計画を立てます。たまに、強い薬は飲みたくないからと言って、家庭血圧を低めに申告されることがあります。私は患者さんを一人の大人として信用して話をしますから、相手が適当な嘘を言われても、それを信じて治療することにしています。もしその結果不都合が起こっても、嘘のデータを申告した本人の責任だと思っているからです。ここでネックとなるのは、強い薬を飲みたくないという、無駄な抵抗です。何のために病院に来て薬をもらっているのか、意味不明です。わたしたち専門医は、エビデンス(科学的根拠)やガイドラインに沿った治療をしています。何万人も治療した結果一番最適とされるのがガイドラインだからです。最適な血圧まで下げないと治療するメリットがないのです。

    たまに、ガイドラインの設定する血圧まで下げると気分が悪いと言われる場合があります。そう言う時は、仕方ないので個別に目標を設定し直します。私たちの体は統計データの示す平均の通りではないので、個別対応(オーダーメイド的治療)はあってもいいと思います。実は、このオーダーメイド的な匙加減にドクターの上手い下手が表れると思います。薬の選択においては、強いか弱いかというだけではありません。私がとても重要視するのは薬の作用の持続時間です。科学用語では半減期と言います。

    例えば不眠の人に眠剤を処方する時、薬の強さだけを考えてはうまくいきません。入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒と不眠にもいろいろあるので、ターゲットとするもの(何時間くらい薬が効いてほしいか)を意識しないと狙い通りの効果が出ません。血圧を下げるのにも、薬ごとに半減期が違うので、すぐ効かせたい、短時間効かせたい、ゆっくり長く効かせたいという目的別に薬を使い分けるのです。