むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 太極をとらえることが大事

    夕方仕事が終わり夜空を見上げたら、まさに皆既月食真っ最中でした。辺縁の月光がうっすらと輝いていました。夕食後もう一度見たらほぼ満月に戻っていました。快晴の夜空での天体ショーを楽しめました。中国では月は陰のシンボルです。漢字でも陰を「阴」と書きます。反対はもちろん陽です。陽のシンボルは太陽なので中国語では「阳」とかきます。簡体字は日本人にとって意味不明ですが、このような理屈があれば見てわかると思います。

    先日、東洋医学会がありましたが、九州各大学が一つの症例に対して漢方的な解釈を考え、競い合う討論会がありました。各大学、問題症例が陰なのか陽なのか、虚なのか実なのかという基本的な理解を、いろんな所見から読み取って発表していました。学生さんたちみんな本を読んで勉強しているわけで、実際の臨床経験が乏しいので机上の空論的なディスカッションも見られましたが、大事な陰陽の解釈などはどの大学も間違っておらず、たいしたものだと思いました。

    学生さんたちは症例検討で患者さんの所見や訴えの細かいところを微に入り細に入り検討していました。それは、勉強をする際にはとても大事なことだと思います。しかし、私たちが臨床をする際には逆にじゃま(ノイズ)になると考えます。大筋を大まかにとらえ、患者さんの困っている訴えにポイントを絞って弁証し治療方針を立てなければ、欲張り過ぎたら失敗します。おそらく漢方治療だけでなく何にでも通用することだと思います。

  • 高尿酸血症について

    聞いた話ですが、コロナが落ち着いた今がチャンスと、飲食店は大賑わいみたいです。特に、去年できなかった忘年会を前倒しで今やっている会社も多いとか。確かに12月になったら次の第6波がくるかも知れず、明日のことはわからないので今楽しもうという魂胆です。やはり、リモートではなく実際にみんなでワイワイやって飲んだり食べたりすることができれば幸わせですね。私は昨日は製薬会社の薬品勉強会でした。通常だと自宅でiPadで参加するのですが、今回はハイブリッド形式で、座長の先生からぜひ会場に来てくれと言われ、行ってみました。そろそろみんな街に出てきているかと思ったら、会場にいたのは発表の先生を除けばたった3−4名でした。やはりまだ出足は鈍いようです。

    その勉強会では、尿酸の治療の話題でした。尿酸が高いという指摘は検診でも多いと思います。ほったらかしにしていると痛風と言って足の指の付け根が歩けないほど痛く腫れ上がることがあります。不思議なことに、同じくらい尿酸が高くてもどうもない人と痛風になる人がいます。その理由はよくわかりませんが、炎症は足の使い過ぎ、タバコやストレスなどで活性酸素が発生する場合、そして、ビタミンCやEといった炎症を抑えるビタミンの不足した場合などが関与しているのではないかと思います。また、女性は滅多に痛風にならないので、女性ホルモンも関係していると思われます。

    尿酸の正常値は7以下なのですが、痛風などの症状がなければ8台までは経過観察、9を越えれば尿酸を下げる治療を開始するというのが最近の流れです。高尿酸血症の治療薬には尿酸の合成を抑制する薬と排泄を促進する薬があります。どちらで治療しても良いのですが、試した薬が効果薄の場合、もう一方の薬に変えるとよく効くことがあります。下がりが悪い時当院では両方の薬を少量ずつ組み合わせることもあります。漢方的な発想です。

  • 慢性腎臓病(CKD)の治療

    健診でよく指摘されるのが腎機能異常です。ほんのちょっと正常範囲を超えただけで将来透析になるかのように脅されます。ああ言ったリスクのある人もない人も広く注意するのはどうかと思います。本当に注意しないと悪化する可能性があるなら言ってあげないといけませんが、進行していないものやほんのわずかしか進行しない人にまで透析の脅しをかけるのはやりすぎだと思います。そして、その軽症腎機能低下(CKD)患者に対してあまり薬もないので脅すだけ脅して、あとは食事に気をつけて様子を見ましょうというだけで1年後の検診でまた脅す。治療法があるなら的確にスクリーニングして治療を開始すればいいのですが、今の標準的治療ではCKDを早期にコントロールする手立てはありません。せいぜい血圧管理やコレステロール管理をする程度です。

    ところが、漢方を使うとびっくりするくらいデータが改善します。食事療法で塩分を何グラムとか、タンパク質を何グラム以下にしろとか、面倒なことは一切なく、漢方を飲んでさえ貰えば、多くの人の腎機能は改善します。当院では相当数のCKDを漢方で治療しました。しかし、漢方を頑張って入れてもあまり改善しない例があります。それは、コントロールの悪い糖尿病です。糖尿病性腎症といいますが、高血糖で血管がボロボロになるため、漢方でも思ったほど改善しません。

    そんな中、最近SGLT2阻害剤という糖尿病治療薬が出てきて、当院でも多くの患者さんに使っています。この薬が、糖尿病だけではなく、心不全や腎不全などの合併症にも非常に有効であることがわかってきました。いままで負け戦でどうしようもなかった糖尿病性腎症の進行を止めることができれば、透析になる患者さんの多くを未然に防ぐことができます。したがって、これからはただ血糖を下げる治療ではなく、どの薬を使って血糖を下げるかがその患者さんの予後を大きく左右する時代となりました。

  • 検診で心電図がひっかかったときは

    昨日のブログで、不整脈はアップルウォッチを持っているとかなり診断できるという話題をかきました。それではもし検診などで心電図異常を指摘されたらどうしたらいいかを書いておきます。不整脈の多くは期外収縮というタイプの不整脈です。当院では心エコーをして不整脈を起こすような心疾患が隠れていないかを確かめます。例えば、弁膜症といって心臓内の弁がきちんと閉じずに逆流を起こしていると不整脈の原因となります。次に多いのが脚ブロックや軸偏位。これらは念の為心電図を再検査しますが、多くの場合心配ない変化です。一方、心配しないといけないのは心房細動です。これが検診で見つかった場合は早めに精査を受けてほしいと思います。脳梗塞を起こすリスクとなるため、血栓予防(いわゆる血液サラサラ)の治療を一刻も早く始めたほうがいい疾患です。

    他に検診で指摘されるのがR波増高不良とか異常Q波という指摘です。これらは、心筋梗塞の既往があれば、そのことを指しているのですが、全くそういう既往がない場合、心筋の動きに異常がないかをエコーで確かめます。たいてい、なんでもないことが多いのですが、念の為精査しておいたほうがいいと思います。もう一つ大切なのがST異常というもの。これは狭心症の可能性があり糖尿病などで心臓の冠動脈の動脈硬化が進んでいるかもしれません。採血のコレステロールの値や糖尿病の具合などと総合的に判断します、

    このように、心電図異常を指摘された際は心エコーをすることが多いのですが、不整脈の種類によってはホルター心電図(24時間記録するもの)を行います。また狭心症など虚血性心疾患が疑われた際には、当院には設備がありませんが、トレッドミルやエルゴメーターと言って、ベルトコンベアや自転車で運動負荷をしながら心電図を取る検査があります。

  • 夜間頻尿の季節

    不整脈が気になると来院された患者さんがアップルウォッチで記録した心電図をiPhoneの画面で見せてくれました。驚くほど鮮明な心電図が記録されています。私たちが医療用で使う心電計と遜色ないクオリティーでした。これがあれば、不整脈の診断はかなり簡単になります。患者さんが動悸などを感じたときに記録してもらうといいのですが、おそらく定期的に生体監視システムが作動して脈が乱れたところを記録してくれているのではないかと思います。ポータブル心電計の一番安いやつでも3万5千円くらいします。それを思えば、アップルウォッチは健康器具としても買いだと思いました。

    話は変わって、今日の夜は頻尿治療のWEB講演会に参加しました。寒くなってきたので、夜間頻尿に悩む方は多いと思います。男性なら前立腺肥大、女性なら過活動膀胱が多いのですが、夜間頻尿はそういった泌尿器科的な原因とは限りません。心不全や腎不全で足がむくんでいる場合、夜に利尿され頻尿になります。血圧の薬の影響で夜に頻尿になる場合もあるとのことです。また、講演で聞いて印象的だったのは、便秘がひどいと頻尿になるということ。なぜかというと、直腸に便がたまりすぎて膀胱を圧迫するため、膀胱容量が小さくなるからとのことです。便秘を治せば頻尿が治るなんて目からウロコでした。

    夜間頻尿で夜に何度もトイレに起きると睡眠不足になります。高齢者によくあるのが、ボーとしてトイレに行き、転んで骨折。これは最悪です。そこまでなくても、寝不足で昼間きついと言うのはよく聞きます。夜できるだけトイレに起きず熟睡したいものです。逆に、睡眠障害があって眠りが浅いために何度もトイレに行く人もいます。その場合、適切な睡眠薬を使うことでトイレに起きずに熟睡できるようになります。漢方の八味地黄丸は2000年も前に作られた処方ですが、頻尿の改善効果があると知られています。

    ベトナム料理 メコンフードにて