むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 慢性腎臓病(CKD)の治療

    健診でよく指摘されるのが腎機能異常です。ほんのちょっと正常範囲を超えただけで将来透析になるかのように脅されます。ああ言ったリスクのある人もない人も広く注意するのはどうかと思います。本当に注意しないと悪化する可能性があるなら言ってあげないといけませんが、進行していないものやほんのわずかしか進行しない人にまで透析の脅しをかけるのはやりすぎだと思います。そして、その軽症腎機能低下(CKD)患者に対してあまり薬もないので脅すだけ脅して、あとは食事に気をつけて様子を見ましょうというだけで1年後の検診でまた脅す。治療法があるなら的確にスクリーニングして治療を開始すればいいのですが、今の標準的治療ではCKDを早期にコントロールする手立てはありません。せいぜい血圧管理やコレステロール管理をする程度です。

    ところが、漢方を使うとびっくりするくらいデータが改善します。食事療法で塩分を何グラムとか、タンパク質を何グラム以下にしろとか、面倒なことは一切なく、漢方を飲んでさえ貰えば、多くの人の腎機能は改善します。当院では相当数のCKDを漢方で治療しました。しかし、漢方を頑張って入れてもあまり改善しない例があります。それは、コントロールの悪い糖尿病です。糖尿病性腎症といいますが、高血糖で血管がボロボロになるため、漢方でも思ったほど改善しません。

    そんな中、最近SGLT2阻害剤という糖尿病治療薬が出てきて、当院でも多くの患者さんに使っています。この薬が、糖尿病だけではなく、心不全や腎不全などの合併症にも非常に有効であることがわかってきました。いままで負け戦でどうしようもなかった糖尿病性腎症の進行を止めることができれば、透析になる患者さんの多くを未然に防ぐことができます。したがって、これからはただ血糖を下げる治療ではなく、どの薬を使って血糖を下げるかがその患者さんの予後を大きく左右する時代となりました。