むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 地域医療センターの思い出

    真夏のような日差しの一日でした。連休でゆっくりされている方も多いと思います。私は朝から医師会病院の当番だったので、お仕事でしたが、コロナも落ち着いてきてのんびりした外来でした。それでも、胸痛で心筋梗塞を疑って精査したり、尿管結石で痛がっている人も来たりで、さすがに救急外来というのはいろんな患者さんが来ます。私は、医者になって2年目を医師会病院(地域医療センター)で研修したため、大学院生時代もずっと医師会病院の夜の救急当番に入っていました。思い返すと、ここでバラエティーにとんだあらゆる急患に遭遇して、外来の基礎を学んだような気がします。

    医師会病院は繁華街から歩いて5分という地の利もあり、夜の外来は忙しかったです。12時過ぎた頃、酔っぱらい(急性アル中)がよく運ばれてきていました。そして、2時も過ぎた頃、風邪みたい、といいながら飲み屋のお姉さんやバーテンさんたちが受診。外国人も多かったです。昔は小児科外来が大忙しで何時間も待つ状態でしたが、このところのコロナ禍で急激に小児科の受診は激減しています。今まで、夜中に熱が出たら心配だからとりあえず受診していたような患者さんが、一晩様子を見るようになったものと思われます。

    今、私はは循環器を専門にしていますが、医師会病院で研修した当時は胃カメラの手技が面白くて没頭していました。服部胃腸科の桜井院長はその時の同僚です。二人で胃カメラの技術を切磋琢磨していました。しかし、もう一つ私は当時から循環器を勉強したかったので、暇さえあれば心エコー室に入り浸ってエコーを習いました。当時指導してくれたのが循環器部長だった後藤先生(今は御幸笛田のごとう循環器内科院長)でした。私の恩人の一人です。

  • もみほぐし

    いよいよ連休ですね。シルバーウィークと言う休みですね。例年だと行楽シーズンですが、今年はまだ旅行できる状態ではありません。飲食店もしまっているので、何も楽しめません。せいぜい、日中ドライブしたり、コスモス畑を見に行ったりするくらいでしょうか。私は、医師会病院の救急外来の出動協力でせっかくの休みですが、仕事です。それ以外も、ひごろ時間がなくて後回しにしているいろんな仕事をこなす連休になりそうです。それだけでは、せっかくの休みがもったいないので、なにかしたいと思っていたところ、散歩中に新しくオープンしたもみほぐし店を発見しました。ホームページを探したらネット予約で初回お試しコースというのがあったので、早速行ってみました。

    先月から肩こりがひどすぎて腕までしびれていたのですが、マウスをトラックボール付きに替えて腕の負担をとったり、電子カルテで記録をかいたあと処方箋を発行する時の手順を見直しました。それだけで、カーソルの動きとクリックの回数を減らし、肩がこらない方法を模索しました。そして、自ら操体法を使うことで手のしびれはすっかり改善したのは前述のとおりです。それでも、肩こりは慢性的なので、もみほぐしに期待したわけです。

    行ってみたら、タイ古式マッサージという手法で、ストレッチと整体を合わせたような手技でした。私が鍼治療をする際にたまに患者さんに整体をしてあげるのですが、その技も織り込まれていました。そして、なんと最後に、肩こりを解消する操体法をレクチャーしてくれました。「それは知っている」とは言わず、素直に教えてもらったとおりセルフで操体法を何度かやったところ、肩こりも軽くなり、夢心地の60分があっという間でした。

    高森 月廻り温泉裏のグリーン

  • 頻尿あれこれ

    頻尿の訴えは結構多く、老若男女問いません。原因もいろいろです。とりあえず検尿して膀胱炎でないかを確かめます。膀胱炎だと、尿中に血液が混じったり、炎症細胞が入ったりします。顕微鏡で見ると、膀胱の上皮細胞が剥がれて出ているのが見えたり、よく見ると細菌が混じっているのがわかります。この場合、抗生剤で治療します。膀胱炎も、繰り返していると抗生剤を何度も飲むことになりますが、膀胱中の細菌はだんだん抗生剤に耐性を獲得し、効かなくなります。特に耐性になりやすいのは、クラビットなどのニューキノロンと呼ばれる抗生剤です。私は極力使わないようにしています。

    通常、膀胱炎は熱は出ませんが、細菌(炎症)が腎臓まで上がってくると腎盂炎といい、高熱が出ます。高齢者の風邪症状を伴わない高熱の場合、尿路感染(腎盂炎)と胆道系感染(胆石胆嚢炎、総胆管結石など)が隠れていることが多いため、見逃さないように注意します。尿路感染でなくて頻尿の場合、過活動膀胱を疑います。過活動膀胱は、早め早めに排尿することで膀胱に十分量の尿が貯まる前に尿意を催すようになったものです。典型的なものでは尿意切迫と言い、突然尿が漏れそうなくらい尿意が切迫します。

    高齢男性の夜間頻尿は前立腺肥大が原因のことが多いので、まずは前立腺肥大のチェックを行い、必要な治療を受ける必要があります。前立腺肥大などの原因がない夜間頻尿に、デスモプレシンという抗利尿作用(尿の量を減らす作用)のある新薬が出たのですが、最近使ってみて印象的だったのは、高校生で模試などの際にどうしてもトイレが我慢できないのが困るという症例で、デスモプレシンを処方したところ、試験の最中トイレにいきたくなるのはおさまったとのことで、大変喜ばれました。

  • 漢方にできること、できないこと

    漢方内科を標榜していると、いろんな患者さんが来られます。他でもいくつかの病院で見てもらったけど治らなかったという難しい症例がおおいので、とても鍛えられます。それでも、漢方のすごいところは、たいていの訴えはなんとかなるところです。しかし、そうは言ってもなかなか治せない場合もあります。

    難しい訴えその1:耳鳴り。これは耳鼻科では歳のせいだから諦めるように、と言われます。漢方では、高齢者の耳鳴りと、若い世代のストレスから来る耳鳴りを分けて考えます。確かに高齢者の耳鳴りは治りにくいと思います。セミの鳴くようなとか、エアコンの室外機やエンジンのような音と言われることが多いです。八味地黄丸が基本処方です。一方、若い世代のストレス性の耳鳴りはキーンという高い音です。加味逍遥散や抑肝散を使います。こちらは治ることがあるので諦めずに治療することを勧めます。

    難しい訴えその2:不眠。不眠に使う漢方はたくさんあるものの、西洋薬の睡眠薬にはかないません。たとえば妊婦さんで漢方で眠れるようにしてほしいと言われる。教科書的な漢方の使い方ではたいして眠れないことが多いので、いろいろ組み合わせます。いまだに試行錯誤です。

    逆に、通常の内科で難治だった症例で漢方なら案外簡単に治るもの。喉のつかえ;半夏厚朴湯や柴朴湯を使います。慢性腎臓病(eGFRの低下):防已黄耆湯が著効します。足の筋肉のつり;芍薬甘草湯。有名ですね。フラッシュバック(過去の嫌な思い出がよみがえってくる):四物湯+桂枝加芍薬湯。神田橋処方と言いますが、すごく効きます。目の周りのぴくつき:抑肝散がよい。ホットフラッシュ(更年期で熱くなったり汗が出たり)には加味逍遥散や女神散。これらは漢方で治すのは難しくありませんが、西洋薬だとあまり適切な治療法がなくて困ってしまうものばかりです。

  • たこつぼ心筋症

    たこつぼ心筋症という病気があります。変な名前ですが、国際的にもこのままTAKOTSUBOで通用します。ただ、外国人にわかりにくいので英語名でカテコラミン心筋症という別名もあります。非常に心筋梗塞と紛らわしく、鑑別診断に上がるのですが、最終的には心臓カテーテル検査ではっきりすることもしばしばです。症状は心筋梗塞とにていて、胸が苦しい、しめつけられる、呼吸困難感などです。心電図を取ると心筋梗塞とほとんど見分けが付きません。心筋梗塞は冠動脈という心臓を取り巻く血管が詰まってしまう病気です。糖尿病や高コレステロール血症が原因となることが多いです。一方、たこつぼの原因はストレスです。身内がなくなったり、何かとても強いストレスにさらされたときに急に心不全のような胸部症状が出るのですが、心筋が麻痺したように動きが低下します。昔「心臓麻痺」と言っていたものの中にタコツボが含まれていたと思われます。

    先日、このタコツボの患者さんを経験しました。私は、心電図などから心筋梗塞を強く疑い、救急病院に紹介し、行った先でカテーテル検査をした結果タコツボと確定診断されました。さいわい心筋梗塞ではなかったので、数日で退院されると思います。このような症例は当院の外来で年に一人くらい経験します。

    漢方を専門にしていると、病名をつけるのも難しいような難解な症例によく出くわします。便宜上、自律神経とか、身体表現性障害とか疼痛性障害とか言いますが、なにか重大な疾患を見逃していないかといつもヒヤヒヤします。先日は胸水の溜まった人がいて、胸膜炎と思って治療したものの全く改善しなかったので大きな病院に送ったら縦隔腫瘍(悪性リンパ腫疑い)と言われました。CTなどの検査ができないわれわれクリニックでは患者さんの診察においてひたすら感性を研ぎ澄まして嫌な予感がしないかに注意を向ける必要があると思いました。

    根子岳ビュー 月廻り温泉より