むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 漢方にできること、できないこと

    漢方内科を標榜していると、いろんな患者さんが来られます。他でもいくつかの病院で見てもらったけど治らなかったという難しい症例がおおいので、とても鍛えられます。それでも、漢方のすごいところは、たいていの訴えはなんとかなるところです。しかし、そうは言ってもなかなか治せない場合もあります。

    難しい訴えその1:耳鳴り。これは耳鼻科では歳のせいだから諦めるように、と言われます。漢方では、高齢者の耳鳴りと、若い世代のストレスから来る耳鳴りを分けて考えます。確かに高齢者の耳鳴りは治りにくいと思います。セミの鳴くようなとか、エアコンの室外機やエンジンのような音と言われることが多いです。八味地黄丸が基本処方です。一方、若い世代のストレス性の耳鳴りはキーンという高い音です。加味逍遥散や抑肝散を使います。こちらは治ることがあるので諦めずに治療することを勧めます。

    難しい訴えその2:不眠。不眠に使う漢方はたくさんあるものの、西洋薬の睡眠薬にはかないません。たとえば妊婦さんで漢方で眠れるようにしてほしいと言われる。教科書的な漢方の使い方ではたいして眠れないことが多いので、いろいろ組み合わせます。いまだに試行錯誤です。

    逆に、通常の内科で難治だった症例で漢方なら案外簡単に治るもの。喉のつかえ;半夏厚朴湯や柴朴湯を使います。慢性腎臓病(eGFRの低下):防已黄耆湯が著効します。足の筋肉のつり;芍薬甘草湯。有名ですね。フラッシュバック(過去の嫌な思い出がよみがえってくる):四物湯+桂枝加芍薬湯。神田橋処方と言いますが、すごく効きます。目の周りのぴくつき:抑肝散がよい。ホットフラッシュ(更年期で熱くなったり汗が出たり)には加味逍遥散や女神散。これらは漢方で治すのは難しくありませんが、西洋薬だとあまり適切な治療法がなくて困ってしまうものばかりです。