むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • たこつぼ心筋症

    たこつぼ心筋症という病気があります。変な名前ですが、国際的にもこのままTAKOTSUBOで通用します。ただ、外国人にわかりにくいので英語名でカテコラミン心筋症という別名もあります。非常に心筋梗塞と紛らわしく、鑑別診断に上がるのですが、最終的には心臓カテーテル検査ではっきりすることもしばしばです。症状は心筋梗塞とにていて、胸が苦しい、しめつけられる、呼吸困難感などです。心電図を取ると心筋梗塞とほとんど見分けが付きません。心筋梗塞は冠動脈という心臓を取り巻く血管が詰まってしまう病気です。糖尿病や高コレステロール血症が原因となることが多いです。一方、たこつぼの原因はストレスです。身内がなくなったり、何かとても強いストレスにさらされたときに急に心不全のような胸部症状が出るのですが、心筋が麻痺したように動きが低下します。昔「心臓麻痺」と言っていたものの中にタコツボが含まれていたと思われます。

    先日、このタコツボの患者さんを経験しました。私は、心電図などから心筋梗塞を強く疑い、救急病院に紹介し、行った先でカテーテル検査をした結果タコツボと確定診断されました。さいわい心筋梗塞ではなかったので、数日で退院されると思います。このような症例は当院の外来で年に一人くらい経験します。

    漢方を専門にしていると、病名をつけるのも難しいような難解な症例によく出くわします。便宜上、自律神経とか、身体表現性障害とか疼痛性障害とか言いますが、なにか重大な疾患を見逃していないかといつもヒヤヒヤします。先日は胸水の溜まった人がいて、胸膜炎と思って治療したものの全く改善しなかったので大きな病院に送ったら縦隔腫瘍(悪性リンパ腫疑い)と言われました。CTなどの検査ができないわれわれクリニックでは患者さんの診察においてひたすら感性を研ぎ澄まして嫌な予感がしないかに注意を向ける必要があると思いました。

    根子岳ビュー 月廻り温泉より