むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 先日出演の番組がネット配信されました

    TKUの医療大百科という5分番組に出演しましたが、今日TKUのホームページを確認したら放送がネットで見られるようになっていました。お恥ずかしいですが、アップしておきます。https://www.tku.co.jp/pgm_info/kenrepo/

    一連の糖尿病に関する番組に出ている人たちはみな同業の友人たちです。みんなうまいのでびっくりしました。

    さて、今日は診療のあとで同級生のグループで忘年会でした。日赤近く国体通りにあるよしむらクリニックの院長、西日本病院副院長の山神先生、菊陽のよしもと小児科院長などなど、それぞれの分野で頑張っている面々です。挨拶代わり、みんなで示唆に富む(印象に残った、あるいは勉強になる)症例報告を発表し合いました。呼吸器の専門家は結核の話、泌尿器科の専門家は前立腺がんの話、私は漢方の話、という感じです。忘年会でワイワイ飲むのではなく、極めて学術的です。みんな、へーそんな事があるんだ、とメモしながら話を効きます。同級生には遠慮なく聞けるので、勉強になります。

    ところで、認知症の勉強をしていてはっきりしたことがあります。認知症の治療薬(アリセプトなど)がどのくらい効くかという話です。薬効を評価するデータでNNTというのがあるのですが、1例の有効用例を得るのに何人に投与しないといけないかです。アリセプトを始め認知症治療薬の大まかなNNTは10だそうです。つまり10人に使ってひとり効くという計算です。しかも、効果の平均は70点満点の認知症検査で2点上がったという程度だそうです。一方、副作用が出る確率NNH(1例の副作用が出るのに何人の処方が必要か)も10くらいだそうです。つまり10人に使うと1例は副作用が出るということです。そんな薬、皆さん飲みますか?

     

    久木野 四季の森温泉近くにて

  • 風邪と抗生剤:ガイドラインは一般論

    風邪に抗生剤を出してはいけない、というのは最近の常識です。喉が痛いとか、熱が出たとかそんな風邪症状に昔は抗生剤を使っていましたが、今や使うことは殆どありません。抗生物質は細菌にたいしてのみ効果がありますが、風邪の初期はウイルス感染だから抗生剤は効かないのです。ウイルスにはインフルエンザやヘルペスなど特殊な感染を除いて効く薬はありません。

    もはや風邪に抗生剤を処方すると馬鹿(ヤブ医者)丸出しとなって恥ずかしいので極力出さないようにしています。「自分の風邪には抗生剤が一番効くから出してくれ」といわれる場合があります。そんな場合も、上のような理由で抗生剤はいまどき使わない、と断るのですが、そんな患者さんに限って3日もすると風邪をこじらせて気管支炎になったり副鼻腔炎になったりして、結局抗生剤が必要となります。患者さんにとっては、だから最初から抗生剤がほしいと言ったのに、となります。残念ながら、完全に私の負けです。患者さんの経験のほうが正しかったみたいな結果です。

    これは、患者さんの免疫がよわくて風邪のウイルスと戦っているうちに別の細菌感染(二次感染)を起こしてしまったわけですが、おそらくこういう弱い患者さんは最初から体内に病原菌を保菌しており、弱ったときにその菌が悪さをするのだと思います。抗生剤を使えば使うだけ菌は耐性化して強くなり、体に居座ります。したがって、風邪に最初から抗生剤を出さないというのは耐性菌を作らないという意味でも大切なことです。風邪をこじらせたのは私が抗生剤を出さなかったからではなく、そういう体質なのだと言う理解が必要です。ただ、すぐこじらせて重症化するとわかっている場合、かたくなに抗生剤処方を拒否せず臨機応変に使うことが大切だと思います。これは、ガイドラインはあくまで標準治療であり、我々臨床のプロはそれをふまえた上で個々の症例にベストな治療法を考えるべきだと思います。

    綺麗な菊の鉢を見ると祖父を思い出します。玉名の祖父のうちには毎年立派な菊が咲いていました。(写真は城南の老人ホームあすなろにて)

  • 落ち葉の季節

    落ち葉の季節です。連日写真に出している熊本県庁のイチョウのプロムナードはとてもきれいです。毎年写真を撮りに行きます。私が写真にハマったのも、このイチョウの紅葉の写真を撮りたいと思ったのがきっかけです。昔一眼レフならいい写真が撮れると思って一眼を抱えて撮りに行きましたが、全然いい写真が撮れません。よく年、いいレンズを買って一眼に装着して、これならと思って撮ったら、前年より少しはマシな写真が撮れましたが、まだ納得のレベルではありません。一眼レフは絞りとシャッタースピードなどの調節でいろんな仕上がりになるので面白いのですが、勉強しないといい写真は撮れません。

    そんな中、iPhoneでとってみると今までの苦労が何だったんだろうと思うほどきれいで納得の写真が撮れました。葉っぱの一枚一枚まで見えるくらい鮮明です。それ以降、私は一眼信仰をやめ、iPhoneのカメラばかり使っています。iPhoneのカメラは本当にすごいです。旅行でもなんでもこれだけでいいです。

    クリニック前の街路樹も落ち葉がすごいです。今年もご近所の方が毎日キレイに掃除してくれるのでとても助かっています。ありがとうございます。落ち葉は植物にとってはデトックスです。一年を通して根から吸い上げた不要物や大気汚染物質をすべて葉っぱに入れて落としてしまいます。私たち人間は、汗、尿、便で不要物を体外に排出します。健康を保つのにとても大切なことです。

  • おせっかいで役に立たない天気予報(渋谷の空)

    温かい一日でした。院内では半袖で過ごせます。昼に往診に出た際に長袖を着たら、あつくて車のエアコンを入れないといけないほどでした。それにしても、朝からNHKニュースなどを見ていると、天気予報がありますが、必ず東京渋谷の空模様とか、そんな話題で数分を費やします。私たちにとってはなんの役にも立たない情報です。それに加えておせっかいなのは、今日は傘を持っていけとか、コートにマフラーくらいの準備をしておけとか、洋服や持ち物にまで指図してくることです。NHKニュースを見ている人でその指図が役に立つのは人口比から考えてわずかに1割に満たないと思います。あとの9割の人にとっては、関係ない話です。

    100歩譲って、私が東京に住んでいたとしても、そういう指図は間違っています。例えば最高気温15度を暑いと感じるか寒いと感じるかは個人の問題です。北海道から来た人は温かいと感じるし、沖縄から来たら寒いと言うでしょう。また、太ったアメリカ人なら一年中半袖Tシャツでいい人もいます。国際化の時代に自分の価値観でコートを着ろとかマフラーをしろとか、傘を持っていけというのはテレビが万人に向けて言う言葉ではありません。

    私が患者さんにいろんな指導をする際は個人個人で違うことを言います。例えば、血圧が高い人に全員減塩しろとは言いません。ガイドラインは万人向けなので、減塩と書いてありますが、実際には塩分感受性が高い人(食塩で血圧が上がりやすいひと)と塩分感受性が低い人(塩分をとっても血圧があまり上がらないひと)がいます。それぞれに必要な食事指導をすべきです。ガイドラインはあくまで万人向けの一般論であり各論ではありません。その辺をわかっていないと、テレビで言っていたからとか、ガイドラインに書いてあるからといって、金科玉条のように信じるのは間違いなのです。

  • 入院中の栄養は絶対足りない

    友人が交通事故で大怪我をして手術、リハビリとなり長期に入院していましたが、やっと退院して当院に来院されました。最終的な手術はまだ先に予定されているとのことですが、自宅でのリハビリになったようです。入院中に何度かお見舞いにいったのですが、気になったことがありました。それは、食事が少なすぎて売店でカップラーメンを買って食べているとのことでした。まだ40代の彼にとって病院食はあまりに味気ないと思います。病院食は厚労省が定めた1泊あたりの食費(患者さんに請求できる額)が決まっているので、その僅かな額を工面して3食作ります。十分な栄養が提供できるはずはありません。

    また、怪我から体が回復するためにはたくさんの栄養を必要とします。それは、筋肉を作るタンパク質、骨を作るカルシウムとその代謝に必要なビタミンDとK、体の構造に必須のコラーゲン(タンパク質)とその代謝に必要なビタミンCなどです。また、アミノ酸代謝全般にビタミンB群が必要なのは言うまでもありません。こういう体を回復させるのに必要な栄養は、平常の状態以上に高濃度の栄養を要求します。しっかり栄養を取らないと、どれだけリハビリに精を出しても体が回復しません。

    そこで、今日来院した友人にはいくつかの薬を出しましたが、メモで具体的にビタミン剤とプロテインを買って飲むように勧めました。1ヶ月後には入院していた頃より元気な姿で顔を見せてもらいたいものです。

     

    熊本県庁 今が見頃です!