むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 認知症薬開発中止のニュース

    エーザイがアルツハイマー治療薬の新薬開発をしていたのですが、3つある候補のうち2つを中止すると発表しました。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49820530T10C19A9TJC000/残るはあと一つになりました。これまで、バイエル、メルク、リリー、スミスクラインなど欧米大手製薬会社も全てアルツハイマー型認知症治療薬の開発を断念しています。いかに難しいかがわかります。現在アリセプトなどいくつかの薬剤が保険適応になっているから認知症は早期治療で治ると思っている人も多いかと思いますが、それは甘いです。そんな簡単なものではありません。私は開業前には桜十字病院で老人を主とした診療をしていました。外来の平均年齢が90歳くらいです。そういう中で、アルツハイマーの治療なんて全く無駄だと感じていました。どれだけ処方しても良くなる人なんてほとんどいません。

    多少いいのは気性が荒くなったのを抑えたり、パーキンソン様の症状を改善したりという周辺症状の治療です。これは少し改善しますが、中核症状と言われる物忘れ部分は殆ど改善しません。改善するとしたら、本当に進んでしまう前のごく初期です。脳が萎縮してしまったあとにもとに戻すのは現段階では不可能と思います。

    すすんだ認知症は自分が物忘れしたことを気にしないですが、初期段階では思い出せないことをすごく気にします。こういう人は病院ではまだ認知症ではないと言われるし、そういう人にだす処方はないのが現実です。しかし、私の最近の経験からレシチン(ホスファチジルセリン、コリン)は間違いなく脳を活性化します。ビタミンB,C,D,Eとナイアシンも必須です。欲を言えば、EPA/DHAという魚油も脳に良い働きがあります。また、肉や卵をたっぷり取ること、糖質を摂りすぎないことは基本です。これらを総合的に、できるだけ早期に取り組むことが大切だと思います。

    ただ、万一ボケてしまったら、それは神様からのプレゼントです。癌になることも自分の死が近いことも全然怖くなくなります。認知症の薬というのは神様のプレゼントを突き返すようなものです。だから新薬開発はうまく行かないのです。まずは感謝しましょう。