むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 雨の日の頭痛に漢方

    あと10日で新年というのに何という暖かさでしょう。雨になりました。この冬は暖かい日が多くて過ごしやすいですね。しかし、今日のような雨になると頭痛がして調子悪いという患者さんが何人も来院されます。雨の降る前の頭痛はたいてい片頭痛です。女性で生理前に頭痛がするというのもおなじです。

    漢方では、このような頭痛の病態に「湿の異常」を考えます。利水作用のある(体内の余分な水分を処理してくれる)漢方を用いることで頭痛が治療できます。五苓散、苓桂朮甘湯、当帰芍薬散といった薬です。イブなどの鎮痛剤はその時の頭痛は一旦軽くなっても、薬が切れるとまた痛くなります。根本的な解決になっていないからです。また、胃や腎臓に副作用があるため、あまり繰り返し使うことはお勧めできません。いっぽう漢方だと、殆どの場合は副作用の心配はありません。頭痛がしてから飲んでもいいし、天気が悪くなるとわかっていればあらかじめ飲んでもいいと思います。

    生理前に頭痛がする人は、当帰芍薬散などを毎日1回は飲むようにして体質改善を行います。そして、生理前の1−2週間は一日2−3回と飲む回数を増やすか、五苓散を追加するとうまくいきます。体に水分が溜まりやすい体質の人は胃腸が弱いことが多いので、冷たいものを食べたり飲んだりするのをひかえたほうがいいと思います。

  • 電子伝達系と鉄分の重要性

    昨日は元素を構成する陽子と電子の話を書きました。私が体の中で電子の流れを気にしているのは、電子伝達系という大切な仕組みです。細胞の中にあるミトコンドリアといういわば発電所みたいな部分で、ATPというエネルギーを作るのですが、ここで電子がやり取りされることがとても大事なのです。

    ちゃんとご飯を食べて、休息しているのに疲れが取れないという人がいます。こういう疲れが取れない人はATP産生が低下しています。ATP産生の材料となるのは糖質と脂質です。どちらも体がエネルギーを作るのに重要です。しかし材料だけではATPはできません。ATP産生の代謝過程でいろんな酵素が作用するのですが、その酵素をうまく働かせるために必要なものがあります。ミネラルとビタミンです。

    特に電子伝達系に関与しているのは鉄、ナイアシン(NAD,ビタミンB3)、リボフラビン(FAD, ビタミンB2)です。それ以外にもB1, B6,コエンザイムQ10, などが重要です。中でも鉄は重要です。電子伝達系の要です。鉄の不足は貧血になると思っている人が多いでしょうが、ミトコンドリアレベルの鉄欠乏は貧血になる以前の問題で、採血でフェリチンを測らないとわかりません。今日患者さんに教えられましたが、旧約聖書には「人体は大地の埃を固めてできている」と書いてあるそうです。大地の埃なら砂鉄のことではないかと思います。それほど体にとって鉄は重要です。

  • 希ガスのような人を目指す

    皆さん、偶数と奇数どちらが好きですか?唐突な話ですが、好みがあると思います。例えば車のナンバープレート、お金を払えば好きな番号を入手できます。なんでもいいと言われたときにどんな番号のナンバープレートを自分の車につけますか?私の車のナンバーは偶数だけです。通勤で歩いていて通りすがりの車のナンバーも時々気になってみることがあります。3とか5とか7が好きな人もいれば、2,4,6などを好む人もいます。1188というナンバーはよく見ますが、「いいパパ」と読めるので、単に語呂合わせで、数字の好みではないと判断します。

    私はよく、数字を見ると元素の構造を頭に浮かべます。陽子の周りに電子が回っています。電子には軌道があり、電子殻といいますが、陽子に最も近い内側からK,L,M,N殻と呼ばれています。それぞれに収納できる電子数が決まっていますが、それは偶数です。その軌道に目一杯電子が入っていると非常に安定した形となります。そういう性質を持った元素を希ガスといいます。ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンなどです。わたしは、電子数が偶数で安定した希ガスが好きだなーと思います。今気が付きましたが、私の車のナンバーはK殻2+L殻8+M殻8すなわちアルゴンです。

    ナトリウムやカリウムは奇数で最外殻に電子が一つしかないためその電子はどこかへ行ってしまって電子不足の状態(Na+, K+というイオン)のほうが希ガスに似た構造となり安定します。また塩素やヨウ素は最外殻に7個の電子があり、あと一つどこからか電子をもらって8個になったほうが希ガスと似た構造を取り安定します。それでは電子が1個余分ですから塩素イオン(Cl-)となります。人の性格もこれに似ています。やたら他人にちょっかいを出す人(陽イオン)、何もされていないのに影響を受ける人(陰イオン)、何事があっても動じない人(希ガス)、という感じです。私はそういう意味で希ガスのような人でありたいといつも思っています。今日の話は化学の基礎中の基礎で中高生には分かる話ですが、大人はきっと忘れてしまっていることでしょうね。

  • 添付ファイルはPDFにすべし

    学会で配布資料をもらっても大量のコピーはあっという間になくしてしまいます。おいておく場所もないので、なくすというよりしばらくして見切りをつけて捨ててしまう事が多いです。しかし、いつも思うのは、捨てた直後にあの資料に書いてあったなーと探しても結局出てこない。残念ながらすでに手元には残っていないのです。こういう事態を避けるため、私はいつもスキャナーで取り込んでPDFを作成しクラウドに保存するようにしています。PFUのScanSnapX100というバッテリー駆動の持ち運べるスキャナーが相棒です。また、iPhone用のアプリでEvernote Scannableというのもすぐれものです。いつでもすぐに書類をデジタル化できます。

    デジタル化したPDF資料はiPadで開いてApplePencilを使うとアンダーラインを引いたり余白にメモしたり紙と同じ感覚で取り扱えます。熊本大学医学部での授業もこのようにデジタル化しています。医学の知識は膨大ですから、資料を紙で扱うとあっという間に電話帳みたいになります。学生に講義するスライドは授業の数日前に大学のネットワークにアップし、学生はそれをダウンロードして授業に備えます。講義中、学生はそれぞれがiPadやラップトップパソコンでそういった配布資料を開いています。

    こんなデジタル時代ですが、困った時代遅れの人がいます。それは、資料をワードやパワーポイントのファイルで送ってくる人です。そういう形式で送ってきた場合、自由自在に編集や改ざんができるためオリジナルかどうかがわからなくなります。製作者としての自負や責任がないとしか言いようがありません。他人に資料提供する際はPDF変換してから送るのが常識であり、礼儀だと思います。(15年前にアメリカでそのように習いました)

  • 懇親会で打ち解ける理由(わけ)

    日曜は東洋医学会熊本県部会でした。私は会長で主催者でした。今回のプログラムは3演題。菊池の古荘医院の渡辺先生、私村上、そして特別講演として九州大学総合診療部の貝沼先生でした。こじんまりした学会ですが、大変勉強になりました。実は熊本大学には漢方を専門としている診療科がありません。実は私が10年以上前に熊本大学病院で漢方外来を始めたのですが、ほとんど知られていなくて患者さんは一日で2−3人でした。その後私の異動で漢方外来は消滅し、現在に至ります。

    一方九州大学は本日お越しいただいた総合診療部が積極的に漢方診療をされており、漢方研究で学位も取れるそうです。熊本大学には東洋医学研究会という漢方を勉強するサークルがありますが、もし大学を卒業してから漢方をさらに勉強したいという場合、熊本で勉強する所がありません。今日、九大の貝沼先生にお尋ねしたところ、九大の総合診療部に入局してもらえば、漢方の教育をした上で熊本にお返ししますとのことでした。漢方を勉強したいと思っている医学生その他のみなさん。私に言っていだければ、仲介します。

    実は、こういう学会でためになるのは学会での勉強だけでなくその後の懇親会です。お酒の勢いもあり、ざっくばらんな話が聞けます。これは医療の分野に限ったことではないと思います。勉強中は交感神経が緊張しますが、飲食中は副交感神経が優位になります。すると、警戒心が取れて打ち解けやすくなるのです。家族で一緒に食事をとるとか、恋人同士いっしょに食事をするというのはそういう意味で食事が副交感神経を活発にすることで親密になれるのです。したがって意識的にあるいは戦略として食事会を利用すべきだと思います。