むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • AIにはできない仕事をやる!

    健診でコレステロールや血圧が高かった場合、精密検査(二次検診)になります。当院でも、二次検診はいつもやっています。便潜血陽性の場合は、胃カメラや大腸カメラの検査が必要ですから、消化器の専門を受診してください。また、肺に影が見つかった場合はCTをお勧めします。それなりに大きな病院での再検査をお勧めします。当院のような一般的なクリニックで行う二次検診は血圧、心電図、脂質(コレステロール、中性脂肪)、糖尿、腎機能、尿酸などです。

    私が一番気にしているのは、ガイドライン一辺倒にならず、患者さんの年齢、性別、家庭環境など総合的に判断して治療方針を決めるということです。誰にでも血圧は135/85以下にしないといけないというような機械的な判断はしません。もし、機械的な判断でいいのなら、人工知能(AI)があれば、そういう医者の代わりは全部やってくれます。検査データを入力すれば、過去の論文やガイドラインを照らし合わせて最も有効と思われる薬を勝手に処方してくれる、そんな世界です。私は、それではいけないと思っているのです。

    実際の治療というのは、家族構成、だれが夕食を作るか、買い物はどうするか、薬はちゃんと忘れずに飲めるか、認知症はないか、世話してくれる人がいるか、いろいろ考えないといけません。それによって、オーダーメイドの治療方針が決まるのです。ガイドラインは大衆向けのものであって、個々の症例にマッチしたものとは限らないのです。最近のガイドラインやエビデンスしか信用しない風潮には流されまいと抵抗しながら日々臨床をやっている次第です。

  • 肺炎騒ぎでハイタッチが禁止された

    熊本城マラソンはあいにくの雨でしたね。結構降りました。また昼過ぎには冷たい風が強くなったので、濡れたからだにはこたえたのではないでしょうか。出場した選手の皆さんだけでなく、ボランティアで会場整理や給水、救護など大変だったと思います。今年は、コロナ肺炎の騒ぎで沿道からの応援でハイタッチが禁止されたと聞きました。出場してみるとわかりますが、30キロ過ぎでバテバテのときに小中学生たちから「ガンバレ〜」と声をかけてもらって、ハイタッチなんてしてもらうと元気が出ます。これが禁止されたのは残念でした。

    ハイタッチはともかく、日本人は握手の習慣もほとんどないため人に触れる機会が極めて少ないと思います。アメリカにいた頃は、スタッフとあいさつ代わりによく握手していました。一日何十人と握手していました。ふしぎと、握手の感触というのは相手の健康状態や心の状態が伝わってきます。漢方では手首の脈をみることで相手の健康状態を診察するので、やはり手には体調を表す気が流れているのでしょう。

    手を握られると言葉はなくとも励まされる事があると思います。患者さんの中には診察の際に握手を求められることがあります。もちろん快くお受けしています。アメリカでは診察の際には必ず挨拶と同時に握手していたので、そのほうが自然な感じです。診察中にストレスで体調やメンタルを病んで涙される方がいます。本当は手を握って励ましてあげたいのですが、日本人はあまりそういう習慣がないので、ちょっとためらいます。セクハラとか言われても仕方ないので・・。

     

  • 保険診療の問題

    歯科の治療を見るとわかりますが、保険診療は必要最低限のものです。お金を払えばどれだけでもクオリティーをアップできます。医科ではまだそこまではありませんが、歯科の領域は完全に混合診療が黙認されています。どうせ治すならきれいにしてもらいたいし、痛くないようにしてもらいたいからです。今日、ネットをみていたら、歯科の治療を受けるために飛行機でバンコクに行く日本人の話がありました。あちらのほうが専門に特化したクオリティーの高い歯科医師が揃っており、保険と関係ないので最先端の医療を提供してくれる。しかも、日本の保険では全部の歯を一気に治すことが認められていないため、週1回通ったとして半年ほどかかるような治療がわずか数回で終わるそうです。飛行機代を出しても通院費の合計は日本で保険を使った場合と遜色ないという話でした。

    私がアメリカにいた時、テキサスやカリフォルニアなど、メキシコとの国境の町(メキシコ側)には歯医者さんがたくさんありました。アメリカ国内でべらぼうに高い医療費を払えない人は国境を超えて歯科治療を受けるのは常識です。日本は島国なのでそういう意識が少ないかもしれませんが、いよいよそういう時代に入ってきたようです。そう、美容整形の分野ではプチ整形やシミ取り、シワ取りなど韓国旅行のついでに受診するというのは何年も前からブームですね。

    日本の医療は安いだけが取り柄です。安いので一日に100人近い患者さんをみないとビジネスとして成り立たない。アメリカではせいぜい10人くらいで採算が合います。みんなゆっくり丁寧に仕事していました。日本の安い医療は患者さんの行動にも影響します。ちょっと心配だからとCTをとったりMRIをとったりします。外国ではありえない話です。おかげで、見つけなくていいような小さなガンまで見つけて手術します。膨大な医療費がかかります。しかも、実は何もしなくてもたいして予後は変わらないという事が多いのです。

  • 新卒が活躍するために

    先日の土日は 医師国家試験があったそうです。医学部の学生にとっては6年間の勉強の集大成です。緊張したことと思います。そうした中、私が関係する熊本大学の東洋医学研究会というサークルの追い出しコンパがあったので、参加しました。今日ははれて試験が終わり、みんな4月からの新しい職場のことで胸がいっぱいでした。最近は県外出身の人が多いため、卒後は関東や関西などに散っていくようです。熊本に残って研修を予定している人はわずか2名でした。あとの10名ほどは県外です。

    若い研修医の先生たちはこれからいろんな試練が待ち構えています。臨床の勉強は患者さんの命がかかっているので失敗は許されません。毎日が真剣勝負です。緊張しすぎてパニックになる人もいます。昔は新米医者の教育は(ドイツ語を日本語風にアレンジして)オーベン(先輩)・コベン(見習い)と言って新人は先輩に弟子入りして見様見まね、手取り足取りの指導がありました。しかし、最近は働き方改革と言って、研修医は5時過ぎたら帰さないといけない。たいてい病院の勉強会は夕方6時とか7時ごろにに始まりますが、働き方改革の結果研修医にカンファレンスに時間外に参加しろと命令できなくなりました。自主参加でお願いします、と下からお伺いする感じです。

    こんなことでちゃんとした医者が育つはずもありません。皆さんの職場も同じだと思います。働き方改革は日本人をさらにナマケモノにして国際競争力をどんどん落としてしまいます。ブラック企業は確かに困りますが、本当のブラックは働く時間の長さではなく上司の指導方法にあると思います。根性で働かせるいわゆる体育会系は困りものですが、愛情をもって育てれば、多少残業があっても下は文句を言わないでしょう。自分も早く一人前に仕事ができるようになりたいと思っているからです。

  • 知っていることとやってみることは違う

    皆さんはメモを活用していますか?私はこれまで手帳にメモするといえば未来の予定くらいしかありませんでした。いつの間にかiPhoneのカレンダーさえあればスケジュール管理はできるし、それ以外にメモすることはなくなりました。たいていのことは一度聞いたら覚えているので、メモなんかしなくていい、みたいな感じです。しかし、仕事が忙しくなるとだんだん覚えきれなくなります。常に頭を最大限使っている感じです。更に最近は本を読む量も相当多いし、中田敦彦のYouTube大学や分子栄養学実践講座などネットで勉強する量も多く、入ってくる情報がとてつもなく増えています。だんだん一度きいただけでは覚えられなくなりました。

    そこで、最近はスケジュール帳とは別にノートを持ち歩くようになりました。気がついたこと、勉強したこと、全てをメモしています。講演会でいい話を聞いたら、要旨をまとめて書き留めておきます。そうするようになり、以前にもまして勉強効率が上がりました。やっぱり、一度聞いたら大体覚えていると思っていたのは間違いだったということがわかります。きちんとメモしておくと、振り返ってみて、こんな事も言ってたんだと改めて感心することが多々あります。

    勉強とは、聞いて終わりではありません。それを自分のものとして実践しなければ、聞かなかったことと同じです。例えばトイレ掃除をすれば運が良くなる。知っているだけでは運は良くなりません。実践して初めていいことが起きます。携帯に入っているGoogleやAppleのAI(人工知能)に話しかけると仕事効率が上がる。知っていても使っていない人が大半でしょう。勉強したことは忘れないようにメモしておく。そして、知ったことは実践する。これが情報社会の生き方だと思います。