むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 更年期の漢方治療

    女性で、急にカーと熱くなったり汗が出たりすれば、更年期かなと思うことでしょう。50歳前後ならだいたいそうだろうと思いますが、ずっと若くて、あるいは閉経後10年以上たってもこのような症状が見られることがあります。婦人科に行っても更年期ではないと言われておしまい、ということがしばしばあります。そういう患者さんが当院に多く見られます。更年期様の症状を呈した自律神経失調ととらえます。

    そういう場合の治療は、やはり漢方です。更年期の定番といえば加味逍遥散です。それだけでうまく行けば何も問題ないのですが、当院の漢方専門外来までたどり着く方は、通常の漢方では治らないような難しい症例が多く見られます。そのような場合、加味逍遥散に当帰芍薬散や四物湯、温清飲などを加味したり、女神散という更に効果の強い処方に変えることでうまくいくことが多いです。もし、加味逍遥散を飲んでいるけど今ひとつスッキリしないという場合はご相談ください。

    更年期で漢方薬局に相談すると、「命の母」という商品を勧められることが多いと思います。この処方はよくできていて、とても良く効きます。私も、「命の母」の構成生薬を参考にオリジナルでブレンドすることがあります。保険の制約で漢方製剤は2つまでしか処方できないため、複雑な「命の母」をツムラなどの医療用漢方2剤で再現するのは難しいため、患者さんごとに病態把握をし、治療方針の大枠(だいたいの方向性)を決めて2剤の組み合わせを考えていきます。

  • 月経過多の食事療法

    女性で貧血の原因のナンバーワンは月経過多です。生理の際に出血がおおくて、普通の食事で摂る量の鉄分では補いきれずに貧血になるものです。鉄分の多い野菜の代表はほうれん草や小松菜ですが、昔の露地栽培ものと違って最近の野菜はアクも少なく栄養が殆ど入っていません。ほうれん草で貧血治療できる量の鉄分を取ろうと思えば毎日4キロのほうれん草を食べないといけません。まあ無理でしょう。赤身の肉(牛や豚)にも鉄分が含まれますが、これも、それほどたくさんは食べられません。

    発想を変えれば、鉄の補給以外には、月経過多の治療をすれば貧血は治ります。そこで、婦人科に相談するわけですが、子宮筋腫などが見つかることがしばしばあります。しかし、見つかったから即手術というわけではなく、多くの場合、経過観察となります。まだ小さいからとか、年齢からあと数年で閉経するから、とかいろんな理由で手術が見送られます。そこで登場するのが桂枝茯苓丸という漢方です。産婦人科で子宮筋腫の治療によく使われる処方です。

    当院は漢方を専門としているため、そういう処方をもらっているけど改善しないという難症例が集まってきます。その場合、「きゅうききょうがい湯」という漢方を加えるのですが、その構成成分で大切なのはアキョウというニカワです。肉や魚を煮たりするとゼラチン状に汁が固まります。そのゼラチン(コラーゲン)が大切なのです。そこで、そのような患者さんには漢方だけではなく、市販のフィッシュコラーゲンとビタミンCを飲むようにお勧めします。最近たて続けにこのような患者さんがあり、皆さん驚くほど生理の出血が減ったと喜ばれています。コラーゲンは肌の調子が良くなるだけでなく生理の出血も軽くなるという、まさに女性の味方です!

  • 痛風と尿酸

    当院は痛風の患者さんが毎日のように来られます。突然足の親指の付け根や足首などが腫れて痛み、歩くのも困難になるものです。痛風疑いの際には採血をして炎症反応や尿酸の値を調べます。院内で検査するので、10−15分ほどで結果が出ます。ただ、痛みの発作が出ているときは尿酸の値がなぜか低いことがあり、必ずしも病態と尿酸値の間に高い関連性は認めません。ちょっと高いだけでも長年続けば尿酸が組織間に沈着するため、血液中の尿酸の値が必ずしも組織の尿酸の状態をあらわしていないという事です。

    尿酸が高い場合、尿酸の合成の問題、排泄の問題の2つに分けられます。合成の方は主にプリン体やアルコールを取りすぎることで、尿酸合成が促進してしまいます。一方、血液中に高くなった尿酸は尿から排泄するのですが、排泄遅延の方は日本人の約半数といわれており、遺伝的に尿酸排泄が遅いため、血液中に溜まりやすいと言われています。そこで、治療薬としては尿酸の合成を抑えるタイプの薬(ザイロリック、フェブリクなど)と尿酸排泄促進剤(ユリノームやユリスなど)の2種類に分類できます。どちらも尿酸を下げる効果がありますが、尿酸排泄促進剤のほうが効果が良いような気がします。当院では、しばらくどちらかで治療して尿酸値が下がりにくいと判断した場合、両剤を併用することもあります。

    痛みに関しては、整形では湿布や鎮痛剤(ロキソニンやカロナールなど)をもらうと思いますが、なかなか改善しません。そこで当院では、通常の鎮痛剤に加えて、ステロイドやコルヒチンなど強力な抗炎症剤を1週間ほど併用します。その結果、2−3日目にはだいたい歩けるところまで改善します。尿酸が高くて痛風になるのはたいてい男性です。まずは飲み過ぎに注意しましょう。

  • プロセス(課程)を楽しむこと

    昨日のブログで掃除の話を書きました。掃除をすると部屋もきれいになるし、気分が良くなります。そんなことを今朝も思っていたら、ちょうど音声コンテンツアプリのVoicyで「結果を楽しむ」だけではなく「過程を楽しむ」ことが大切だと言う話を聞きました(鴨頭嘉人のチャンネル)。掃除で例えれば、片付いた部屋をみて喜ぶだけではなく、掃除そのものを楽しむということです。もしそれが実現できれば素晴らしいことです。掃除を嫌なことだと思いながらするより、楽しみながらするほうがいかに人生が豊かになることでしょう。

    同じことをダイエットに当てはめれば、日々の運動や食事制限は辛いばかりで何も楽しくないかもしれません。しかし、運動するのも気持ちいい江津湖畔をウォーキングするとか阿蘇まで車で行き、空気の良いところをジョギングするとか、楽しみ方はいくらでもあります。食事制限にしても、少量しか食べないなら少し高価な食材にしてプチ贅沢することもできます。質素にしすぎず、ダイエット食を楽しむと言うことです。

    似たようなことですが、私がガン患者さんにアドバイスすることがあります。ガンを治療する日々は辛く大変だと思います。多くの患者さんは「いつかきっとガンを克服して元通りの元気な体に戻りたい。そのために今つらい日々を我慢している」という人が多いです。しかし、私は今を楽しむようにといいます。今日、吐き気もなく、いい天気の日に散歩もできて、週末は孫の誕生日を祝うことができたのであれば、元通りの元気な姿でなくても十分今に感謝して楽しいと感じるべきです。時間は逆戻りしません。昔の元気な姿ではなくても今が一番と思って過ごすことが、結果的に豊かで実り多い人生と言えると思うのです。

     

  • 掃除と健康

    皆さん、掃除は好きですか?私は結構好きです。朝も早く出勤して、クリニックの玄関周りの掃除をします。夏はダンゴムシやムカデなんかも自動ドアの隙間から建物内に入ってくるので、朝イチで隅々までチェックします。ゴミ箱のゴミを捨てたり、床のモップがけも日課にしています。出したものは片付ける。捨てていいものはすぐに捨てる。目の前に積んである仕事はすぐにかたづける。何でも間髪おかずにすることです。最近はコロナワクチンの事務局からわけのわからない通達のFAXやメールがどんどんきます。読んでも意味がわからない役所の文書には困りますが、とりあえず、読んだらさっと捨てます。

    体も、つねに掃除しておかないと病気になります。食べたら歯を磨く。肺を汚すタバコの煙には近寄らない。血管をつまらせるコレステロールには注意する。消化管は便秘しないように野菜などの繊維質をたくさん食べる。体に蓄えてしまった内臓脂肪もゴミです。掃除して取り除かないと病気になります。

    昨日話題にした認知症の中でもアルツハイマー病は脳にベータアミロイドという蛋白が蓄積して脳の機能を低下させますが、βアミロイドは脳のゴミです。かんたんに掃除できないため、一旦認知症を発症したら改善しません。この、脳に蓄積されたβアミロイドを掃除する治療薬を世界中で開発していたのですが、いまのところどのメーカーも治験はうまく行っていません。したがって、脳がβアミロイドを蓄積しないよう予防第一です。