むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 医学部教育

    医学部は6年間ありますが、6年間のスケジュールもみっちりです。私たちが学生の頃は、最初の2年が教養で、英語や数学など高校の延長のような勉強でしたから、実質医学の勉強は3年生から6年生の4年間でした。しかし最近は1年から基礎医学の勉強が始まります。

    最初に解剖学、組織学、生理学、生化学などの基礎的な勉強をします。正常な体がどのような仕組みになっているかを学びます。次に、病理学。病気のメカニズムを学びます。そして薬理学。薬の分類、作用機序などを学び、病理学で学んだ病気を治療する薬物について理解します。そこまでが基礎医学。

    次に内科学、外科学など臨床医学を勉強します。膨大な量の知識を詰め込みます。それが一通り終わったら大学病院で臨床実習です。

    あまりに長い道のりで、勉強量も多く大変なのですが、最近は、勉強のモチベーションを高めるために基礎医学を勉強し終わった段階で臨床現場を体験する実習があります。当院にも若い医学生さんが来て、外来を見学したり訪問診療に同行したりして1週間現場を体験しました。こういう体験をもとに、自分の将来像を具体的に夢見ながら勉強に励むということです。みんな頑張れ!

  • 春は鬱の季節

    春は鬱の季節です。ヨーロッパに留学した先輩によると、ヨーロッパでは日照時間が短く寒い冬が鬱の季節で本当に辛いと聞きましたが、日本のは場合は春だと思います。

    春はいい季節なのですが、卒業、入試、転勤、引越し、就職と人生の重要な節目だからです。会社にとっては3月期決算を乗り切れるかが勝負というところもあります。誰しも、ストレスが非常に大きくなる時期です。鬱だけでなく、心筋梗塞も非常に多くなります。やはり原因はストレスだと思います。

    体調や心の状態がイマイチだと、この時期を乗り越えるのは本当にきついかもしれません。当の本人は頑張らないといけないとわかっているのに体が動きません。気合が足りないわけでもなんでもなく、体が思うように動かないので励ますことは逆効果です。私が患者さんにお話ししているのは「こういう時期は自力で頑張ろうとせず、しばらくの間薬の力を借りてもいいと思いますよ」ということです。ストレスがかかるしばらくの間だけでも抗うつ剤や漢方の力で乗り切るのはドーピングではありません。今の世を生き抜く知恵です。

    この写真は福岡のホテルオークラのロビーで撮ったものです。あれ、お内裏様が左右逆じゃないのかな?と思ってググってみた結果、お内裏様は京都風の場合左(向かって右)に、関東風では右(向かって左)に並べるそうです。だからこの写真は京都風の配置みたいです。

  • 花粉症の季節

    そろそろ花粉症の季節です。当クリニックにも抗アレルギー剤をもらいに来る患者さんが増えてきました。今から5月の連休くらいまでは花粉症の人にとっては辛い季節です。最近は、効果がいいわりにあまり眠くならない薬もありますから、自分に適した薬を探すといいと思います。

    とはいえ、抗ヒスタミン剤は眠くなるので、車の運転には注意が必要です。これから受験という人も、大事な時に眠くならないように、薬の飲み方には十分注意しましょう。高齢者には認知症を悪化させる可能性があるので、急に物忘れがひどくなったり、いつもと違う行動をとっている時はアレルギーの薬が悪さをしている可能性もあります。

    もちろん漢方でもアレルギー性鼻炎や蓄膿症、アレルギー性結膜炎などに使う処方があります。漢方は不思議なもので鼻や目に効くというよりは全身の体質に作用します。そこで、鼻の症状だけでなく、胃腸が丈夫かとか、冷え症があるかとか、そういうところから使う薬を考えます。最近の人は、以前に比べて薬が効きにくい場合が多く、2種類の漢方を組み合わせないと十分効果が出ないことが多いような気がします。

    小青竜湯という有名な処方があり、飲んだら10分ほどで鼻が通るので、漢方とは思えない即効性に驚きますが、誰にでも効くわけではありません。私自身、高校生から大学生ごろは小青竜湯がとてもよく効いていたのですが、いまではあまり効かないので、他の処方を飲みます。皆さんも漢方でそういう経験はありませんか?それは、漢方が効かなくなったのではなく、私たちの体質が変わったのだと思います。もしかしたらPM2.5のような環境因子も影響しているのかもしれません。

  • 週1回飲めばいい糖尿病の新薬

    糖尿病の勉強会に参加してきました。テーマは、週1回製剤の話です。

    数日前にも糖尿病の話を書いたのですが、この内容を書いていなかったので、追加して書いておこうかと思います。最近新しく出た糖尿病治療薬で、週に1回だけ飲めばいい薬があるのです。骨粗鬆症の薬では、随分前から週1回製剤がありましたが、糖尿病が週1回飲めばいいなんて夢のような話です。もちろん重症患者さんはそれだけでは足りませんから、まだ軽めの患者さん向けの薬です。

    私はこの薬が世に出た時に、服薬管理ができない高齢者にとてもいいなと思いました。ヘルパーさんたちが週に1回飲むのを確認すればいいのですから、治療が確実です。

    そう思っていたけど、これまで一度も使う機会がありませんでした。高齢者だけでなくてもっと若い世代で、例えば日曜なら確実に飲めるとか、そういう世代にもいい薬かもしれません。値段も毎日飲む薬を1週間分合わせた価格より安くなっていますから、経済的です。

    こんな薬があること自体まだ知られていないと思いますが、もし興味がある方は遠慮なく言ってください。これからはこういう薬を使う時代だろうと思います。

  • ウォーリーをさがせ

    ウォーリーをさがせというのがありますが、ご存知ですか?

    こんな絵本のような絵の中からウォーリーという主人公を探すゲームです。結構難しいです。

    私たち内科医の仕事はこのウォーリー探しに似たものです。例えば、腹痛、下痢で患者さんがきます。今の時期、大抵は感染性胃腸炎であろうと思われますが、必ずしもそうではありません。食中毒にもいろいろあり、ノロウイルス、ビブリオ、病原性大腸菌 (O-157)その他たくさんの原因があります。また、ストレスからくるものや慢性の胃腸疾患から来るものもあります。とにかく、鑑別しないといけない疾患は山ほどあります。似たような訴えの中から、通常のものとは違った怪しい疾患を確実に見逃さないようにしないといけません。これは、臨床診断学という学問で、疾患を見極めるコツなどをテキストに書いてある場合もありますが、大抵は長年の臨床の勘なのです。なんか変だな、と気づくことが大事なのです。

    まずは、季節的に頻度の多い疾患からすぐに思い浮かべるのですが、単純に決めつけず、それ以外の疾患をいかに幅広く想像しながら診断するかというのが大事なのです。