むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 二次性高血圧

    若いのに相当血圧が高くなってしまう人がいます。通常高血圧は年をとるに連れ上がってくるものですが、若くて血圧が高い人はなにか普通とは違った理由があるに違いありません。その理由の一つが血圧を上げるホルモンの異常です。二次性高血圧と呼びます。血圧に関連するホルモンはいろいろあります。レニン、アルドステロン、カテコラミンというのが代表的なものです。当院では、45歳以下くらいの若い人の高血圧あるいは治療抵抗性の難治性高血圧の場合、こういったホルモンの異常を疑って検査します。検査は、採血によるレニンやアルドステロンの測定ですので、特に大変なことはありません。

    結果が帰ってくるまで1週間程かかります。最も多く見受けられるのがレニンが低くアルドステロンが高いパタンです。原発性アルドステロン症の疑いとなります。重症の場合、アルドステロンが分泌されている場所を探さないといけませんが、腎臓の上にある副腎がその場所であるため、MRIなどをつかって腫瘍性に腫れたところがないかどうかの検査となります。また、カテーテルを使った血液サンプリング(採取)検査で、どの血管からたくさんアルドステロンが出ているかを検査する場合もあります。

    もしアルドステロンが左右どちらかの副腎から過剰に分泌されているのがわかれば、そちらの副腎を手術で取ることがありますが、両側から分泌されている場合は手術不能で内服薬による治療を行います。こういった検査は、大学病院や日赤などで行います。当院では、手術できなかったアルドステロン症の患者さんが何人も通院されていますが、みなさん内服でうまく血圧管理できています。心配せずきちんと治療を受けていただきたいと思います。

  • フクロウ型の人を治療する

    フクロウのような人がいます。いわゆる宵っ張りです。夜遅くまで起きていて朝起きられない。会社では眠くなる。学生なら朝遅刻してしまったり、ひどいときは不登校になってしまう。こういう人を漢方の世界でフクロウ型と呼びます。山本漢方理論で有名な体質です。自律神経失調タイプや朝から低血圧でエンジンがかからない人はフクロウ型に分類されます。

    こういう人は精神科でカウンセリングを受けてもなかなか改善しません。睡眠薬をうまく使えば夜眠れるようになるので、朝からきちんと起きられれば社会生活は問題ないレベルにすることはできます。しかし、患者さんが小中学生で眠剤を使いにくかったり、睡眠薬をどうしても飲みたくないと言われれば、西洋医学的にはお手上げです。漢方の出番です。

    単に朝起きられない、夜はダラダラと携帯などで時間を潰して起きている、という人には苓桂朮甘湯がよく効きます。それに加えて、日中だるい、めまいふらつきがある、という場合、半夏白朮天麻湯が有効です。場合によってはこの2つの処方を合わせて使います。学生で学校に行けないとか遅刻を繰り返すというときはぜひ試す価値があります。その際、プロテイン(運動選手が飲むのと同じ)を併用すると、更に効果的です。

     

  • たこつぼ心筋症

    たこつぼ心筋症という変な名前の心臓病があります。国際的にも英語でTakotsuboと呼ばれますが、蛸壺がなにかしらない外国人向けにカテコラミン心筋症という学術的な別名もあります。心筋梗塞そっくりの心臓発作を起こします。心不全になって集中治療室に入院することもしばしばです。心電図も心筋梗塞そっくりなので、心臓で起こっている電気生理学的な変化は心筋梗塞と似たような感じなのだろうと思いますが、唯一違うのが冠動脈造影の結果です。冠動脈は心臓を取り巻く血管で、心筋に酸素を送っている大事な血管です。心筋梗塞ではこの冠動脈が血栓で詰まってしまい、心筋にダメージを与えます。しかし、たこつぼ心筋症は冠動脈の詰まったところがないのが特徴です。

    なぜたこつぼと呼ばれるのか。これは、心エコーの所見からネーミングされたものです。心臓の左心室は血液を送り出すポンプの働きをしているため、1分間に60回程度収縮します。心筋がまんべんなく縮むのが正常ですが、たこつぼ心筋症では心臓の心尖部(下の方)の収縮が悪く上の方だけが縮んでくびれたようになります。縮んでいない下のほうが逆に膨れて見えるため、ちょうど蛸壺のように見えるのです。

    たこつぼ心筋症が起こるのは、とても大きな興奮、ショックな出来事などがきっかけとなると言われています。宝くじにあたったとか、大切な人が急に亡くなったとか、そういうときにあれよあれよと言う間に心不全となり、時には命にかかわるほどのショック状態となることがあります。ただ、心筋はびっくりして動きが悪くなっただけなので、急性期を乗り切ればもとに戻ります。最近当院でもこの症例を経験したのでご紹介しました。

     

  • 3段論法には気をつけよう

    たけしの健康番組ネタです。微小脳出血が結構見つかるという話です。微小脳出血は今日の番組では歯周病菌が脳に飛んで炎症を起こすことで血管が破綻して出血を起こすと言っていました。以前から歯周病菌は歯茎から血管内に入り、いろんな病気を引き起こすと言われていました。微小脳出血もその一つのようです。番組では口腔内の細菌数を減らす方法を紹介していました。口腔ストレッチという口の体操です。あいうべ体操とだいたい同じような感じでした。しかし、ここで番組が提示した三段論法は信じてはいけません。微小脳出血は歯周病菌と関連している。口腔ストレッチをすると歯周病菌の数が減少する。それでは<口腔ストレッチをすると微小脳出血が減る>という理論は正しいでしょうか?それは誰も証明していないので、頭の中で3段論法的に正しくても医学的にはまだなんとも言えません。私は、口腔ストレッチくらいでは脳出血は減らせないのではないかと思います。ただ、口腔ストレッチはお金がかるわけでもないので、やって見る価値はあります。

    医学界にはこのようなあやしい論法がたくさんあります。たとえば心筋梗塞はコレステロールが高い人のほうがかかりやすい(事実)。そして、スタチンという薬剤でコレステロールを下げると心筋梗塞が減る(事実)。この2つから、<コレステロールを下げれば心筋梗塞が減る>と言うのは正しいのかという話。実は、ゼチーアというコレステロールを下げる薬剤はコレステロールを下げても心筋梗塞を減らせなかった(最近やっと減らせるという論文も出ましたが・・)事実があります。結局、アメリカ心臓学会は高コレステロールの治療中はコレステロールの値は測る必要ない、とにかくスタチンを飲ませておけ、と言いました。結局、心筋梗塞を減らしたのはコレステロールを減らしたからではなく、スタチンの作用だった可能性があるのです。

    結局、スタチンには活性酸素を減らしたりプラーク(動脈硬化病変)を安定化させることで心筋梗塞を減らしているようです。血液中のコレステロールの値はスタチンが効いているかどうかの参考にはなります。ちょっと難しい話を書きましたが、TVで見る三段論法的なストーリーはまゆつばものが多いと思ったほうが良いと思います。

     

  • 脱水に注意しましょう

    恵みの雨ですね。昨日までの暑さも一段落して、からからに乾燥した空気に湿度が戻りました。植木も喜んでいるようです。ニュースでは先日の北海道の39度の高温で36歳の男性がゴルフ中に熱中症でなくなったということでした。こんなに若くても熱中症でなくなるんだと驚きました。なにか基礎疾患があったのかもしれませんが、それはわかりません。体がまだ暑さに慣れていないというのが問題です。汗をかけないと暑さに負けてしまいます。日頃エアコンの涼しいところで過ごしていると汗をかくことがなく熱中症になりやすいのですが、今の季節では誰でもまだ体が高温に順応できません。私はサウナが好きで、月に1回位ですが、温泉に行ったら何度もサウナで汗を流します。サウナ以外に汗をかく訓練といえばスポーツです。冬の屋外ではあまり汗をかきませんが、ジムのマシンを使えば冬でもどんどん汗をかきます。このようにサウナやジムで汗を流しておけば、大抵の暑さには耐えられると思います。

    血圧の治療薬に利尿剤があります。フルイトランとかナトリックスという名前です。また、利尿薬との合剤でコディオという薬もあります。また、足がむくむという理由で利尿剤を使ってある場合があります。ラシックス(フロセミド)、アルダクトン(スピロノラクトン)、ダイアートといった薬です。こういう利尿剤系の薬剤を飲んでいると年中脱水気味になりますので、夏の暑い時期は脱水に注意が必要です。ただ、勝手に飲むのをやめてはいけません。心不全や腎機能低下などの背景があって利尿剤を使っている場合、薬を勝手にやめると尿が出なくなり、浮腫(むくみ)がひどくなるばかりでなく、息が切れて喘息みたいになることがあります。主治医に相談してから夏場は調節してもらうといいと思います。

    週末の炎天下、ランニングしている中年の人を何度も見かけました。こんな暑い日に走ると汗もいっぱい出て痩せるぞ、と思っているのだったら大間違いです。それは単なる脱水です。後で水を飲めばもとに戻ります。走ったあとのビールが美味いから炎天下走る、というのも危険です。サウナも同じですが、大量の汗をかいて脱水になると血液がどろどろになり脳梗塞や心筋梗塞を起こす場合があります。水分補給は最初からしっかりしておきましょう。また、アルコールは利尿効果があるので脱水をすすめてしまう場合があります。ビールで水分補給はやめておきましょう。