むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 遺伝子の理解は格段に進んだようです

    日曜は忙しい一日でした。朝からクリニックのワックスがけだったため、普通どおりに弁当持参で出勤しました。院内清掃が終わるまで部屋で待機です。学校心臓検診で判読を頼まれていた350枚の心電図に目を通し、異常がある人のリストを作りました。私が引っ掛けた心電図はもうひとりの専門医がダブルチェックをして、呼び出しをするかどうか決定されます。2次検診に呼ばれた場合、精密検査が予定されます。心電図の判読の次はレセプトです。月初めは毎月前月の診療報酬の事務作業があります。一枚一枚チェックして、使った薬、検査項目、保険病名などに間違いがないか確認します。1500枚を超えているため、目も頭も疲れ切ります。

    気晴らしにスクワットをしたり音楽を聞いたり、iPadで映画を見たりしながらなんとか1000枚まではチェックが終わりました。あとは明日にかけて仕上げます。これから1ヶ月は私が校医をしている中学校の内科検診があります。全学年の生徒の聴診をしたり背骨の曲がり(側弯)のチェックをします。

    夕方NHKで遺伝子の番組をやっていました。たまたまつけたのですが、わたしたちが学生の頃習った遺伝子の知識からは想像できないほど進歩しています。見入ってしまいました。なんと、遺伝子情報は努力で変えられるかもしれないとのことです。メタボのお父さんたちがこれから子供を作る前に週週間ダイエットに励んで、メタボの遺伝子を生まれてくる子供に遺伝しないようん頑張っているところを見ました。そんな事ができるなんて、これまでの遺伝子の常識を超えていますが、努力が遺伝子レベルでが報われるなんて、夢のようです。

     

  • 虫歯予防

    ためしてガッテンの再放送では虫歯予防の話でした。びっくりの内容だったので、紹介しておきます。厚労省の調査によると、日本人の9割以上に虫歯があるそうです。一方、虫歯予防先進国のスエーデンでは日本の3分の一以下でした。何がそんなに違うかといえば、日頃からの歯磨きと歯科衛生士によるプロケアに定期的に通っているところだそうです。

    日本でも、歯石除去などプロによるケアを受けている人は受けていますが、国民の常識というレベルではありません。歯科はたくさんありますが、土日や夕方から夜にかけて開いているところはさほどありません。わたしたちのように月曜から土曜の昼まで働いていると、受診するチャンスがありません。それから、多くの歯科が過当競争状態にあり、歯石をとってほしいのにその他のいろんな事をしようとされるので、それを断るのに困ってしまいます。ちょうど、携帯を買いにショップへ行くと、いらないオプションを山程つけられて気がつけば高額になってしまうような感じです。

    それでは、日本人も日に3度は歯磨きをしているのに虫歯が予防できていないのはどこが悪いのか?実は、スエーデンでは1:歯磨き粉は2センチほどたっぷり使うこと。2:歯磨き後は口をゆすがないこと。3:歯磨き後2時間は飲食をしないこと。この3つが日本とスエーデンの差だそうです。がってんに出演した歯科の教授は、やってみたけど日本人には無理と思った、という理由で20年前にこの方法を習ったのに普及活動を断念したと言っていました。それはあんまりな話です。まあ、虫歯が減らずに儲かってよかったですね、と皮肉を言うしかありません。私も今日から歯磨き後は口をゆすがないでみたいと思います。(理由は、歯磨き粉に含まれるフッ素を高濃度で長時間歯に作用させることが虫歯予防になるからだそうです)

     

  • 二次性高血圧

    若いのに相当血圧が高くなってしまう人がいます。通常高血圧は年をとるに連れ上がってくるものですが、若くて血圧が高い人はなにか普通とは違った理由があるに違いありません。その理由の一つが血圧を上げるホルモンの異常です。二次性高血圧と呼びます。血圧に関連するホルモンはいろいろあります。レニン、アルドステロン、カテコラミンというのが代表的なものです。当院では、45歳以下くらいの若い人の高血圧あるいは治療抵抗性の難治性高血圧の場合、こういったホルモンの異常を疑って検査します。検査は、採血によるレニンやアルドステロンの測定ですので、特に大変なことはありません。

    結果が帰ってくるまで1週間程かかります。最も多く見受けられるのがレニンが低くアルドステロンが高いパタンです。原発性アルドステロン症の疑いとなります。重症の場合、アルドステロンが分泌されている場所を探さないといけませんが、腎臓の上にある副腎がその場所であるため、MRIなどをつかって腫瘍性に腫れたところがないかどうかの検査となります。また、カテーテルを使った血液サンプリング(採取)検査で、どの血管からたくさんアルドステロンが出ているかを検査する場合もあります。

    もしアルドステロンが左右どちらかの副腎から過剰に分泌されているのがわかれば、そちらの副腎を手術で取ることがありますが、両側から分泌されている場合は手術不能で内服薬による治療を行います。こういった検査は、大学病院や日赤などで行います。当院では、手術できなかったアルドステロン症の患者さんが何人も通院されていますが、みなさん内服でうまく血圧管理できています。心配せずきちんと治療を受けていただきたいと思います。

  • フクロウ型の人を治療する

    フクロウのような人がいます。いわゆる宵っ張りです。夜遅くまで起きていて朝起きられない。会社では眠くなる。学生なら朝遅刻してしまったり、ひどいときは不登校になってしまう。こういう人を漢方の世界でフクロウ型と呼びます。山本漢方理論で有名な体質です。自律神経失調タイプや朝から低血圧でエンジンがかからない人はフクロウ型に分類されます。

    こういう人は精神科でカウンセリングを受けてもなかなか改善しません。睡眠薬をうまく使えば夜眠れるようになるので、朝からきちんと起きられれば社会生活は問題ないレベルにすることはできます。しかし、患者さんが小中学生で眠剤を使いにくかったり、睡眠薬をどうしても飲みたくないと言われれば、西洋医学的にはお手上げです。漢方の出番です。

    単に朝起きられない、夜はダラダラと携帯などで時間を潰して起きている、という人には苓桂朮甘湯がよく効きます。それに加えて、日中だるい、めまいふらつきがある、という場合、半夏白朮天麻湯が有効です。場合によってはこの2つの処方を合わせて使います。学生で学校に行けないとか遅刻を繰り返すというときはぜひ試す価値があります。その際、プロテイン(運動選手が飲むのと同じ)を併用すると、更に効果的です。

     

  • たこつぼ心筋症

    たこつぼ心筋症という変な名前の心臓病があります。国際的にも英語でTakotsuboと呼ばれますが、蛸壺がなにかしらない外国人向けにカテコラミン心筋症という学術的な別名もあります。心筋梗塞そっくりの心臓発作を起こします。心不全になって集中治療室に入院することもしばしばです。心電図も心筋梗塞そっくりなので、心臓で起こっている電気生理学的な変化は心筋梗塞と似たような感じなのだろうと思いますが、唯一違うのが冠動脈造影の結果です。冠動脈は心臓を取り巻く血管で、心筋に酸素を送っている大事な血管です。心筋梗塞ではこの冠動脈が血栓で詰まってしまい、心筋にダメージを与えます。しかし、たこつぼ心筋症は冠動脈の詰まったところがないのが特徴です。

    なぜたこつぼと呼ばれるのか。これは、心エコーの所見からネーミングされたものです。心臓の左心室は血液を送り出すポンプの働きをしているため、1分間に60回程度収縮します。心筋がまんべんなく縮むのが正常ですが、たこつぼ心筋症では心臓の心尖部(下の方)の収縮が悪く上の方だけが縮んでくびれたようになります。縮んでいない下のほうが逆に膨れて見えるため、ちょうど蛸壺のように見えるのです。

    たこつぼ心筋症が起こるのは、とても大きな興奮、ショックな出来事などがきっかけとなると言われています。宝くじにあたったとか、大切な人が急に亡くなったとか、そういうときにあれよあれよと言う間に心不全となり、時には命にかかわるほどのショック状態となることがあります。ただ、心筋はびっくりして動きが悪くなっただけなので、急性期を乗り切ればもとに戻ります。最近当院でもこの症例を経験したのでご紹介しました。